小説の魅力を30秒で発信! 中高生に大人気のパイオニアが選ぶ「けんご大賞」の受賞作品とは

文芸・カルチャー

公開日:2021/12/15

けんごさん
撮影/森 清

 若者のトレンドSNSとして圧倒的な人気を誇る「TikTok」で現在、本を紹介する“BookToker”のけんご氏が大きな注目を集めているのをご存知だろうか。

 けんご氏は「TikTok」のショートムービーで本のあらすじやおススメポイントを紹介し、若者たちの読書推進に大きく貢献した立役者。「TikTok」での紹介動画の4本目『冬に咲く花のように生きたあなた』(メディアワークス文庫)では、けんご氏の紹介ムービーがきっかけとなり重版も実現。『残像に口紅を』(中央公論新社)の紹介ムービーでは「もし、この世から“あ”という言葉が消えてしまったらどんなことが起きると思いますか?」とユーザーに問いかけ、900万回近い再生数を記録した。

 他にも学生向け青春小説として『ぼくらの七日間戦争』(角川文庫)や『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫)、『時をかける少女』(角川文庫)といった作品を紹介。読書好きの間で有名な名作や、けんご氏が面白いと思った作品を独自の視点で紹介している。

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そんな影響力とプレゼン力を兼ね備えたけんご氏が新たに挑戦したのが、「2021年けんご大賞」。今年出版された本の中から珠玉の作品を選定し、大々的に発表していった。

けんご大賞

■ベストオブけんご大賞
『死にたがりの君に贈る物語』(綾崎隼/ポプラ社)

■けんご大賞
『N』(道尾秀介/集英社)
『オーラの発表会』(綿矢りさ/集英社)
『君の顔では泣けない』(君嶋彼方/KADOKAWA)
『月曜日の抹茶カフェ』(青山美智子/宝島社)
『白鳥とコウモリ』(東野圭吾/幻冬舎)
『ばにらさま』(山本文緒/文藝春秋)
『星を掬う』(町田そのこ/中央公論新社)
『檸檬先生』(珠川こおり/講談社)
『夜行秘密』(カツセマサヒコ/双葉社)

■特別賞
『白い薔薇の淵まで』(中山可穂/河出書房新社)

 12月15日(水)に発表された「ベストオブけんご大賞」は、綾崎隼氏による青春ミステリ小説『死にたがりの君に贈る物語』(ポプラ社)に決定。著者の綾崎氏は「沢山の物語が溢れ、容易く埋もれてしまうこの時代に。私を知らなかった方へ、この本を届けてくれたこと。それが、決して【普通の出来事】ではないと、知っています」と喜びのコメントを寄せている。

 また『白鳥とコウモリ』(幻冬舎)で「けんご大賞」を受賞した東野圭吾氏は、「やった! けいご大賞とW受賞だ!」といったユーモア溢れるコメントを、『夜行秘密』(双葉社)で受賞したカツセマサヒコ氏は「『若い人が本を読まなくなった』と言われて久しいですが、けんごさんの情報発信への反応を見ていると、小説の世界はもっと多くの人に愛されていけると勇気をもらえます。この受賞をきっかけに、自分の本からまた別の本へと、物語に興味を持つ方が増えたら幸いです」といったコメントを、『星を掬う』(中央公論新社)で受賞した町田そのこ氏は「TikTokという新しい世界で物語を広めて頂き、ありがとうございます。私が学生のころにこんなコンテンツがあれば、もっと読書が豊かになったのだろうな」といったコメントを寄せていた。

 今回発足した「けんご大賞」は、出版社各社がボランティアで協力・サポートしており、受賞作品一覧は12月22日(水)に発売される『小説現代』(講談社)にも掲載される予定。さらに12月16日(木)からは全国の書店店頭にて「けんご大賞」作品をピックアップしていくそう。

けんご大賞
小説現代 2022 年 1 月・2 月合併号

 総務省が実施している調査によると、年間で発行される文学書は約12000~13000冊ほどになるという。その中には普通に生活していたら読まない小説や、読書が好きな人でも読み切れない作品が出てきてしまう。けんご氏の活動や「けんご大賞」の発足によって、世の中に広まる作品の数が今後増えていくのではないだろうか。

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