「将棋ブーム」の今だからこそ読みたい! 少年の一手が国の運命を変える! 王城夕紀著『天盆』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/11

『天盆』(中央公論新社)

 盤上の一手がうねりを生み出し、人々の人生も、世界をも飲み込んでいく。空前の将棋ブームが起きた今年、将棋に似た盤戯を中心に回る世界を描いた時代ファンタジー小説が再び注目を集めそうだ。

 その小説とは、王城夕紀著『天盆』(中央公論新社)。2014年に「C★NOVELS大賞」特別賞を受賞したこの作品は、『マレ・サカチのたったひとつの贈物』や『青の数学』などで知られる王城氏のデビュー作でもある。

 舞台となるのは、盤戯「天盆」の勝敗による人材登用制度が定着している「蓋」の国。人々は立身出世を目指し、その盤技の研鑽に励むが、長い間平民から征陣者は出ていない。ろくに仕事もせず、「天盆」にのめり込んでいる貧しい平民・少勇は、ある日、橋の下に捨てられていた赤子を拾う。「凡天」と名付けられたその子は、全員が捨て子である少勇の家の13人きょうだいの末っ子としてすくすく育ち、幼い頃から「天盆」の非凡な才能を発揮し始めた。ある日、ふとしたことから凡天は、夏街祭の天盆大会へ出場することになるのだが…。激戦を勝ち進む幼き凡天。少年が歴史に挑むとき、国の運命もまた動き始める。

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 手に汗握る「天盆」での戦い。その展開と、登場人物たちの心の揺れ動きに、多くの読書家たちから賞賛の声が寄せられている。

驚愕。盤上の遊戯をこれ程までの切迫感で表現するとは。その場に居て激戦を観ている様な手に汗握りぱっなしの一冊。真っ直ぐな天盆打ちの末っ子凡天と、凡天を取り巻く個性溢れる家族や翁達がまた温かく、時たま放つ登場人物の哲学みたいな名言がまた良い。
すか

盤戯「天盆」で捨て子だった少年が成り上がり、世界を動かす放熱ファンタジー。激戦を通じて描かれる心理描写がおもしろい。展開が王道ですごくアツい話だった。
ttm

「天盆」と呼ばれる、国をも動かす盤上遊戯をめぐる物語。と同時に、家族の物語でもあった。
うさぎや

将棋のような天盆が軸に据えられた世界観の中で、貧しい13人兄弟の末っ子・凡天は10歳ながらも天盆にのめり込んでいき、異様な強さで難敵を倒していく。凡天が行く先々で引き起こす事件と、権力者に睨まれて少しずつ追い詰められてゆくその家族。困難に際しての様々な葛藤はあっても血の繋がらない父母や兄弟たちとの揺るぎない絆は確かにあって、頂点を目指す天盆を巡る戦いはどんどん熱くなっていく。劣勢を覆し上り詰めてゆく戦いぶりは痛快でした。
よっち

スピード感溢れる熱い物語でぐいぐいと引き込まれた。頂点を目指す天盆士達の真剣勝負やそれを取り巻く人々の想い、家族の愛といったものが緻密に表現され、作家のパワーを感じる作品だった。
sachi

「希望を手放さぬ者にのみ、天は微笑む」
「天盆を打っているのではない。天盆に試されているのじゃ」

 凡天は盤技によって、どんな未来を切り開くのか。国の行方、家族の絆、すべては盆の中…。圧倒的疾走感で描き出されたこのファンタジー小説の熱気をぜひとも感じ取ってほしい。

文=アサトーミナミ

(※読者コメントは「読書メーター」より引用しています)