親子の役割が逆転!? 子どもに甘える親としがみつく毒親に苦しむ子どもたち

出産・子育て

2017/9/28

『子供にしがみつく心理 大人になれない親たち』(加藤諦三/毎日新聞出版)

 周りからは“子煩悩な親”だとか“愛情深い親”だとかいわれているにもかかわらず、子供にとって重たい存在となってしまっている親たちがいます。愛情という名のもとに子供にしがみつく毒親たちです。

 今やドラマのテーマにもなるほど多くの人に知られる存在となった「毒親」。『子供にしがみつく心理 大人になれない親たち』(加藤諦三/毎日新聞出版)はそんな「毒親」に悩む人が増える現代においての1つの親子関係の現状や原因、対策について紹介した本です。世界の混乱の根源の理解へもつながるべく“親なき社会”の問題を提起し、社会から見逃されやすい、子供にしがみつく真の親の心理を指摘した1冊となっています。

 毒親にはさまざまなタイプの人がいますが、共通するのが“自分の心の葛藤を解決する手段として子供を利用する親”です。本書ではそんな毒親と子の関係の原因として「親子の役割逆転」を挙げています。「親子の役割逆転」とは通常の親子関係とは真逆の役割が成立している状態です。親は子供の甘えの欲求を満たしてあげることが自然なことですが、「親子の役割逆転」では親が子供に甘え、子供が親の欲求を満たす役割を担わされています。

 たとえば著者のもとに相談に訪れた母親がその一例です。母親の相談内容は「21歳の娘とどうしたら仲良くできるか」というものでした。しかし相談を聞くと仲良くなれない原因は自分にあると卑下しながらも、実際には長女のやることなすことが気に入らないという話をするのです。

 この母親の行動は自分が幼少期にできなかったことを子供に求める甘えからきていると著者はいいます。ただし、このような親は子供なら誰にでも甘えるわけではなく、甘える子を必ず選ぶというのです。しかし一方で他の人、特に自分に対して酷い態度をとる人に対しては服従の態度を見せて自分がすべて悪いと子羊のように徹底的に自罰的になるのです。

「役割逆転の親」の特徴として孤立無援の状態にいるということが挙げられます。幼少期に十分に自分の親から愛情を受けたという意識がない親は周囲との心のふれあいを求めます。しかし甘えたいのに大人であるがゆえに甘える相手がいません。人生の避けてはならない課題を回避して生きてきたことで友達など親しい人もいないのです。夫婦関係が悪い人も多いといいます。そのため配偶者にも甘えられずに拗ねてすべてを否定し、僻(ひが)んでますます孤立していくのです。そこで最後に子供に心のふれあいを求めて愛情飢餓感を満たそうとするといいます。

 ただし親が子供に求めるものは、あくまでも「母なるもの」です。子供に母親となってほしがります。料理を作ったら美味しいといってほしい、部屋に入ったら「お母さん、どうしたの」と声をかけてもらいたいなど、まるで子供のように自分がすることに常に反応を欲しがるのです。そして子守りならぬ親守りを求めて子供に固着しようとします。そんな親の姿を子供は扱いにくいと感じてしまうのです。

 相手に愛情を求めるときに正義や恩を持ち出す傾向も見られるといいます。子供の成長は自分の存在のおかげであることを強調したり、育てるためにどれだけ苦労したかを訴えたりして、子供から特別の感謝を要求するのです。また、生きることを楽しめない原因を子供の態度に責任転嫁する言動も見られます。

 子供を巻き込む親は自我が弱く自立していない傾向にあるといいます。いろいろな人を巻き込もうとしたりしたけれども失敗してしまったため、最後に子供にしがみついているのです。最後の手段である子供を巻き込めなければ死ぬしかないだけに、そのしがみつき方はすさまじくなるといいます。

 著者はいいます。親子の役割逆転の悩みを解決するただ1つの方法は「離れることである」と。離れるためには、子供の方が本当に好きな人を探し当てることが必要となります。このような親子の別れはとても難しいことですが、本当に好きな人ができたとき、子は親から離れられるのです。

 今起こっている家族や子供の問題、ひいては社会問題について親の問題を抜きに論じられないと著者は指摘します。今一度、本書を読み、親との関係、自分の在り方について考えてみてはいかがでしょうか。

文=Chika Samon