小川糸『ツバキ文具店』の続編『キラキラ共和国』 人と人との繋がりを丁寧に描いた作品に心揺さぶられる

文芸・カルチャー

2017/11/29

『キラキラ共和国』(小川糸/幻冬舎)

 ツバキ文具店は、今日も大繁盛です。夫からの詫び状、憧れの文豪からの葉書、大切な人への最後の手紙……。伝えたい思い、聞きたかった言葉、承ります。

 大きな反響を呼び、NHKでドラマ化もされた小説『ツバキ文具店』の続編、『キラキラ共和国』(小川糸/幻冬舎)が刊行された。前作に引き続き、ツバキ文具店は大繁盛。様々な物語をそれぞれ抱えた鎌倉の人々が、鳩子さんの「代書」を目当てにやってくる。鎌倉という街で交差する、色とりどりの人間模様。本作でも、ごく普通の家族のありふれた“日常”を細部まで切り取ることで、人と人の“繋がり”が奥深い部分まで鮮明に描かれている。

 先代の跡を継ぎ、ツバキ文具店の店主となった主人公の鳩子。彼女のもとには、様々な「伝えたい想い」を持ったお客さんが日々訪れる。母の日の手紙、亡き夫からの詫び状、夫婦喧嘩の代理…鎌倉で生きる人々のそれぞれの人生の一幕に添える文章を、鳩子は日々紡いでいく。そして鳩子自身の「伝えたい想い」とは?想いを「伝えたい相手」とは?前作でも大きな成長を遂げた鳩子さん。そんな彼女自身の更なるストーリーにも注目だ。

『食堂かたつむり』(ポプラ社)、『つるかめ助産院』(集英社)などで知られる作者。彼女の紡ぎだす世界は多くのファンを魅了する。小説を遊園地にたとえるならば、本書にはジェットコースターのような激しいアトラクションはないのかもしれない。それでも読む人を飽きさせないどころか、心を掴んで離さない。きらびやかな装飾が施されたメリーゴーラウンド、ほっこりと街を一望できる観覧車、好きな人と一緒に食べるソフトクリーム。ごく平凡で、それでいて本質的な幸せを確かに感じることができるワンダーランド。それはまさにキラキラ共和国だ。

 人と人とが繋がることで生まれる鼓動のようなものを再認識させてくれる小川糸の世界は、本作でも健在だ。

文=K(稲)