老人たちに忍び寄る詐欺。怪しい“健康食品”のお店で何が行われているのか?

社会

更新日:2020/5/8

■長期間にわたり行われる勧誘。会員へのアフターフォローも

 この手の詐欺が行われている会場では、比較的長期間にわたり勧誘が行われているのが一般的だという。本書によると、おおむね「1カ月から3カ月で開催する会社」が多く、客との人間関係を深くじっくりと築き上げながら、時間をかけて高額商品を売りつけていくそうだ。

 例えば、2カ月間にわたり健康食品を売りつける詐欺の場合は、最初の1カ月間が重要になる。最初に売る商品はとりわけ長い時間をかけて宣伝し、まずは客からの信用を勝ち取る。その後、購入者のみに「会員証」を発行するのだが、その理由は購入しない客を振り分けるため。2カ月目からは、会員になった客のみを相手にして「最も自信のある商品」を販売していくわけだ。

 さらに、詐欺業者たちはアフターフォローも欠かさない。この手の店舗はあるときふといなくなっているイメージもあるが、じつは、その後も会員向けの特典などにより客の心を引きつけている。

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(C)にゃんとまた旅/ねこまき

 本書によると、その代表的な例が「会員の集い」と称されるもの。月に一度、定期的に店舗のあった地域で開催されるほか、時には大きなホールで有名な演歌歌手を呼んだりと、大規模なイベントも年に数回行われる。楽しかった思い出を胸にした老人たちにとっては、さながら“同窓会”のような場所であり、また、詐欺業者にとっては「有効期限が近付いている会員に高額商品を勧めることができる」という格好の場所でもあるのだという。

■近寄らない、通わない、クーリングオフを遠慮なく使うのが対策

 詐欺被害に遭わないためには、周りからの注意に耳を傾けるのはもちろん、やはり本人が日頃から持っておくべき心がまえも必要だ。そこで、本書にある「被害にあわないための3か条」を紹介したい。

1.近寄らない
 誰もが心のどこかで「自分は絶対にだまされない」と思っているはず。しかし、ひとたび会場に足を運んでしまうと、雰囲気に飲まれて購入してしまう場合もある。催眠商法で危険なのは「売りつけられる前に心を奪われる」ことなので、この手の業者にありがちな「無料引換券」などが付いているチラシであったり、近所の人から誘われるなどのちょっとしたきっかけにも、反応しないよう心がけておこう。

2.「もったいない」と思わずに通うのをやめる
 一度だけ何らかのきっかけで足を運んでしまったなら、次の日には行かないという選択肢を取るようにするのがいい。タイミングは早ければ早い方がいいが、ポイントは「心を奪われる前に逃げる」ということ。万が一の場合、会場内ではスタッフが声をかけてきても「無視を決め込む」というのもひとつの方法で、それができないようであれば「冷たく薄い反応」で返してみるだけでもいい。

3.クーリングオフに遠慮をするな
 近寄らない、通わないといったことができず、挙句の果てに商品を購入してしまった場合には、法律で認められた「クーリングオフ」を活用してほしい。口頭や書面により契約の解除を知らせるための制度であるが、業者側に商品の引き取り義務が生じるため、店舗へ足を運ぶ必要もない。万が一、自宅にやってきた業者がごねるようであれば断固としてつっぱね、顔を合わせたくないならば「着払い」で商品を送ることもできる。

 往々にして、詐欺師は巧妙に人の心の隙間につけ込んでくる。本稿で取り上げた催眠商法は、孤独を感じやすい老人たちをターゲットにした手段のひとつだ。親と離れて暮らす人たちも多いだろうが、本書の内容をぜひどこかの機会で伝えてあげてほしい。

文=カネコシュウヘイ