発達障害の保護者必見! 参加者1万人を超えた驚きのコミュニケーション上達ワークショップ

暮らし

2020/1/23

『アイスブレイク&ワークショップ』(冠地情:著、かなしろにゃんこ。:漫画/講談社)

 発達障害を抱える人、もしくは生きづらさを抱えている人は、上手にコミュニケーションが取れなくて人間関係に苦しむ傾向がある。特に会話が苦手だと社会経験が不足しがちになり、さらに生きづらさを抱えて悪循環になりやすい。そのうち自分の心の殻に閉じこもって、引きこもりになってしまうこともある。

 だからこそ必要なのは、コミュニケーションを磨く場所だ。失言したり、感情が抑えられなかったり、他人を制して自分だけ話し続けてしまったり、あらゆる失敗を受け止めて、コミュニケーションの向上を図る場所があれば、辛い悪循環を断ち切れるかもしれない。

『アイスブレイク&ワークショップ』(冠地情:著、かなしろにゃんこ。:漫画/講談社)は、発達障害の支援者や保護者にオススメの1冊だ。

 まずは本書の説明をしたい。著者は、発達障害当事者で当事者会「イイトコサガシ」代表の冠地情(かんち じょう)さん。イイトコサガシとは、コミュニケーションの力を伸ばすためのワークショップだ。43都道府県で1000回以上も開催しており、参加者はのべ1万人を超える。さらにテレビや新聞などのメディアに50回以上取り上げられるなど、いま注目の会なのだ。

 本書では、特別支援学校などの支援機関の職員、発達障害の親の会、当事者会の主催者など、発達障害の支援者や保護者に向けて、冠地情さんがワークショップ開催のノウハウを伝授している。ここからは本書のノウハウを一部ご紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

■自己紹介を上達させる「自分三択クイズ」

 本書を読んで感じるのは、イイトコサガシがものすごく楽しそうな場所ということだ。この会では、主催者であるファシリテーター(話しやすい雰囲気を作る進行役)と参加者が、ルールに沿ってコミュニケーションを試していく。

 たとえば自己紹介だ。私たちは人生で何回も初対面の人と会う。自己紹介はその都度行われるコミュニケーションであり、第一印象を決める重要な場面だ。

 けれども発達障害を抱えている人ほど、「私はこういう人だ」と自分で自分を決めつけている。冠地さんはこれを「無意識のブロック」と表現する。出会う人や場所に応じて、自分が持っている様々な一面を上手に出すには、やはり普段からのコミュニケーションが欠かせない。

 そこでイイトコサガシでは、自己紹介を上達させる方法として「自分三択クイズ」を行う。印象的な経験や大切なものなど、自分と深く関わるエピソードで三択クイズを出題するのだ。具体的にはこのような感じ。

「僕はサッカーが大好きなんです。サッカー界には素晴らしい選手がたくさんいますが、そのなかでも僕がサッカーを好きになるきっかけになった選手は誰でしょう? ひとりめは中田英寿です。彼がワールドカップを出たときに…(以降、クイズが続く)」

 このクイズ式自己紹介を行うことで、自分を分かってもらうために、熱意をもって自分のことを話せるようになる。さらに参加者が他の人の自己紹介を聞くことで、自分以外の人にも興味がわいてくる。そこから誰かとの会話につながり、コミュニケーションを試すきっかけになるのだ。

 この会では、基本的にお互いの「いいところ」を探しながらコミュニケーションを交わす。「サッカーの話をしているときが熱かったです」。「とてもいきいきしていました」。このように全員が全員をほめながら、コミュニケーションを試していくので、とても前向きになれる雰囲気が漂う。「イイトコサガシ」という名前のゆえんはここにあるのだ。

 本書では「自分三択クイズ」のような発達障害者のコミュニケーションを上達させるアイスブレイク&ワークショップを40種類紹介している。参加者が楽しく自然に会話を行えるものばかりなので、発達障害の支援者は本書を参考にするとよいだろう。自宅でできるものもあるので、保護者が読んでも参考になるかもしれない。

 人と人の会話は実に不安定だ。会話をする場面や相手の感情に合わせて上手に言葉を選びながら話す必要があるので、誰でも時々は失敗するもの。しかし発達障害を抱える人は、その回数が多いがために苦手意識を持つのだと思う。イイトコサガシの会のように、お互い平和に交わせる会話もあるのだと知ることができれば、心を閉ざしていた人も少しずつ表情が明るくなっていくのではないか。

文=いのうえゆきひろ