猫マスターが幻想的スイーツでおもてなし! 小説『満月珈琲店の星詠み』シリーズの魅力

文芸・カルチャー

公開日:2022/4/12

満月珈琲店の星詠み
『満月珈琲店の星詠み』(著:望月麻衣、イラスト:桜田千尋/文藝春秋)

 仕事や人間関係がうまくいかず、自分を見失いそうな人々が集まる不思議な珈琲店を舞台とした小説『満月珈琲店の星詠み』(望月麻衣:著、桜田千尋:イラスト/文藝春秋)は、3巻まで刊行されている人気シリーズ。日々の生活に気付きを与えてくれる物語として、老若男女問わず支持を集めている。

 満月の夜に現れる「満月珈琲店」は、優しい明かりが灯るトレーラー型のカフェ。街のどこかに神出鬼没で現れるファンタジーな空間には、心に何か悩みを抱えた人間だけが辿り着くことができる。

 店内には人間はおらず、スタッフは全員が猫。その中でも、もふもふの三毛猫マスターは現実離れした料理の腕の持ち主だ。マスターが作るのは、星や月などをモチーフにした絶品のスイーツやドリンク。そこに添えられた神秘的なイラストは、物語のイメージをぐっと引き立てている。

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 そして、物語のもう一つの魅力となっているのは、マスターによる「星詠み」。西洋占星術に基づく占いで、満月の下、登場人物たちは星によって導かれていく。知識がない人にも分かりやすく書かれており、本書がきっかけで占星術に興味を持った読者も少なくないという。

満月珈琲店の星詠み
『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』(著:望月麻衣、イラスト:桜田千尋/文藝春秋)

 2020年7月に『満月珈琲店の星詠み』、2021年2月に『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』、そして2021年12月7日(火)には、『満月珈琲店の星詠み~ライオンズゲートの奇跡~』が発売された。

満月珈琲店の星詠み
『満月珈琲店の星詠み~ライオンズゲートの奇跡~』(著:望月麻衣、イラスト:桜田千尋/文藝春秋)

 全編を通して、「満月珈琲店」の従業員たちはもちろん、登場人物たちの人間関係にもゆるやかな繋がりがある本作だが、それぞれの物語は短編で構成されているので、途中から読んでもまとまりあるストーリーになっている。

 シリーズ全てを読んだという人からは、「このシリーズと出会えて本当に良かったと思いました。心が癒されたなあ。涙がこぼれました」「どの本もハートを温めてくれ、イラストに心弾みます」「美しいイラストや文章を読むのがこんなにも気持ちが良いとは。暫く余韻に浸っていたいです」といった感想が寄せられ、心洗われた様子が垣間見えた。

 本書は、イラストレーターの桜田千尋さんがSNSで公開していたイラストをきっかけに生まれた作品。著者の望月麻衣さんは、2013年に「電子書籍大賞」を、2016年にはライトミステリー『京都寺町三条のホームズ』で「第4回京都本大賞」を受賞した気鋭の作家だ。

 ストレスとは切っても切れない日々が続く世の中、コーヒーを飲んで一服するように、本書を開いて「満月珈琲店」を訪れてみてはいかがだろうか。

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