太宰治『女生徒』あらすじ紹介。14歳少女の、若い感性が溢れる普通の一日

文芸・カルチャー

更新日:2023/3/31

太宰治『女生徒』
『女生徒』(太宰治/角川文庫)

 朝、目が覚めるときの気持ちはいじらしく、起きたばかりの私は醜いから嫌だ。夏の訪れを感じ、他界したお父さんのことを思ってみる。お母さんは人のために尽くす人で、私の両親は美しく安らかな夫婦だった。なんて考える私は生意気だ。

 お母さんへの勤労奉仕の草むしりを終え、電車の停車場に向かう。サラリーマンに席を奪われた私は吊革を掴んで雑誌を読む。子どもを背負ったおばさんは、年齢不相応な厚化粧があさましく、ぶってやりたい。

 御茶ノ水の学校に着くと、先生に絵画のモデルとして立たされてうんざりする。この先生は、私の下着に薔薇の刺繍があることすら知らない。

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 放課後、お寺の娘のキン子とハリウッドに行って髪を結ってもらう。キン子は私のことを一番の親友だと言いふらしているが、私はそんなに仲良くしてあげているつもりはない。帰りのバスでは雌鶏のような汚らしい女がいて、でも私もそんなものなのかも。お父さん、お父さん、私はみんなを愛したいです。

 家に帰ると今井田さんの夫婦がいて、その厚かましさについぶん殴りたくなってしまう。机の上の百合の花を眺めていると、お母さんが映画を観に行っていいよと言ってくれた。

 眠りに落ちるときの気持ちはへんなものだ。なんだか重く、糸をゆるめたり引いたり。おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。

文=K(稲)