お酒はぬるめの燗がいい、キャンプは二泊三日がいい/小林私「私事ですが、」

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公開日:2021/10/16

そんなこんなでとっぷりと日が暮れる。ここで二つのミスにようやく気付く。

寒い、そしてライトがない。

5月上旬と言えど湖畔はまだまだ気温が上がりにくく頼りの日光もなくなると途端に寒くなる。

最後にキャンプに行ったのが3月下旬だったのがマズかった。
あれを乗り切った自分なら問題ないだろうと高を括っていたのだ。

寒すぎる。

風を凌ごうと毛布を羽織ったり車のドアを開けその裏に入ってみたりと半ば奇行に走るも、どうしても寒い。

そうしてるうちに焚いた火も弱くなってくる。寒すぎる。そして暗すぎる。

 

テントに入ってしまえば、と思ったがどうにも寒い。銀マットでは底冷えの全ては防げない。

この眠気は一日の疲れなのか死ぬ方なのか、果たしてどちらなのだろうか。

 

毛布にくるまりながら私は目の端であるものを捉えた。

 

ギターケースだ。

 

ミュージシャンという趣味がある私は粋がってクラシックギターをセミハードケースに入れて持ってきていた。

ご存知の方もいるかもしれないがセミハードケースというのはソフトケースよりも丈夫でハードケースよりも柔らかい、少し骨組みのある布で出来たケースで、内側はギターを傷つけないためのクッションが敷かれてある。

 

これだ…!

 

……

………

 

翌朝、太陽光に照らされて目を覚ますと私の下半身はギターケースの中にすっぽり埋まっていた。

さながら音楽家のマーマン、ギターケースのヤドカリのような状態になっていた。

読者諸君には明かりと防寒対策はきちんとしておくことを強くお勧めする。

 

さて、ここでタイトルを回収したい。

 

何故キャンプをするにあたって二泊三日をお勧めするのか。

経験者には言うまでもないが、二日目の余裕である。

 

もちろん単なる二泊三日の旅行でも二日目はいいものである。

前日のバタバタから一転、宿でゆったり寝ぼけていられるのが二日目だ。

しかし初日の準備、最終日の片付けはキャンプでは普通の旅行と比べてかなりのスタミナを使う作業であり、やはりその二日目の余裕はキャンプではひとしおに大きい。

 

明朝の澄んだ空気、湖畔を漂う薄い霧とテントを濡らす朝露

カセットガスとコンパクトバーナーでお湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れると良い

前夜の冷えた気温を幾ばくか残した体には温かいものが染み渡る

これはキャンプでしか味わえない喜びである。

 

 

私が山梨のキャンプ場が好きな理由は無数にあるが(それこそ『ゆるキャン△』の聖地であることも大きい)、車で訪れると周囲に幾つかのスポットがある。

風穴、氷穴、コウモリ穴といった気軽に散策出来る洞窟がかなり近い距離にある。

それに流石は山梨、石を投げれば温泉施設に当たる。物産店も少し足を伸ばせば容易に見つかる。

釣りが好きな人間はそういったものに勤しんでも良いし、湖には大抵カヌーなどのレジャーもある。夏の晴れた日にそういったものを嗜むのもまた良い。

忍野八海や富士急もそう遠くない距離にあるから、キャンプの醍醐味を敢えて小脇に添えるのも粋である。

キャンプ場では些細なことも一層粋に感じられるのだ。

何よりそれら全て諦めて朝から酒を飲んだっていいだろう。これも粋…としておきたい。
(これはくれぐれも後からコンビニに行かなければならない事態に陥らないように、慎重に事を進めなければならないのだが)

 

 

一日目の大変な準備を経て、その全てに余すことなく体重をかけて二日目を楽しむ。

料理も時間をたっぷり使って凝ったものを作っても良いし、敢えてカップラーメンのような手軽なもので済ませても良いだろう。

余談だが私は網で焼いたトーストが好きだ。

直火は強いのですぐに表面が焦げてしまうのが気を付けなければならないが、外は少し焦げ、中はまだ焼けていない柔らかい状態で出来上がる。トースターでよく焼かれた食パンよりも大層食べやすく好みだ。

 

そうして二日目を堪能してまた日が暮れる。ここに2つのミスがまたじわじわと効いてくる。

 

寒い。そしてライトがない。うわ雨も降ってきた最悪や

 

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