絵本のプロが選んだ「クリスマスに贈りたい絵本」おすすめ19選! 出版社編Part①

文芸・カルチャー

更新日:2021/12/11

 子どもの頃に繰り返し読んだ絵本、読み聞かせしてもらったお気に入りの絵本はありますか? 大人になって改めて読んでみると、意外な発見や自分の感情に出会えるのが絵本の魅力でもあります。ダ・ヴィンチニュースでは、上白石萌音さん、ryuchellさん、絵本専門書店・出版社の絵本のプロのみなさんに「クリスマスに贈りたい絵本」を選書して頂きました! 大切な人への贈り物に、まだお子さんのクリスマスプレゼントが決まっていないという親御さんの参考になれば幸いです。第1弾は、数多の絵本を手掛ける出版社の担当者が選ぶ、絵本9冊を紹介します!

 絵本のプロのみなさんには、A~Cの3つのポイントから絵本を選書して頂きました。

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊
B.読んで衝撃的だった1冊
C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

1 岩崎書店

【選者】岩崎書店 セールスプロモーション部 営業G 村井由喜さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

「会いたい」と思う友人がいる方へ

【選んだ理由】

 温かみのある絵と優しい物語に、心がほっとする1冊です。
バスの中で揺られているページが特にお気に入り。眺めていると、私の心にもぽっと明りが灯るような気がします。

 今年1年間も、まだ存分に外出できなかったり会いたい人に会えなかったり…という方も多かったのではないでしょうか。私もそのうちの一人です。でもこの絵本の主人公のもぐらくんのように、一緒に過ごした楽しい時間を思い出しながら、次会える日を心待ちにしようと思います。そんな想いから、この絵本を選びました。

2 NHK出版

【選者】NHK出版 児童・学校図書開発事務局編集長 祝 尚子さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

生き急いでいるあなたへ

【選んだ理由】

 装丁画に注目してください。あらら、うさぎさんたち、文字盤の数字を入れ替えたり、はずしたり……。これでは、正しい時間がわかりません。この絵を眺めながら、『うさぎじかん』というタイトルが、何を意味するのかを考えます。答えが見つからないまま表紙をめくると、息をのむような風景をバックに、マイペース、かつ自然体で過ごしているうさぎ家族に出会います。うさぎたちはこう言っているようです。「無理しなくていいんだよ」「自分の歩幅で生きていこうよ」って。ああ、たしかに今年も急ぎすぎました――。来年こそ、あせらず、ゆっくり、自分にやさしくなってみようと思わせてくれる、すてきな1冊です。

【お知らせ】
 国内外に多くのファンをもつイタリア在住の絵本作家・刀根里衣さんによる待望の新作絵本が11月20日に発売になりました。6匹のうさぎファミリーを主人公とした本書では、時間や空間をテーマにした小さな物語が、見開きごとに展開されていきます。愛らしくユーモアたっぷりのうさぎが、寄り道や遠まわりもそう悪くないと教えてくれます。作家の最大の特長である繊細な筆致と豊かな色づかいで描き上げられた幻想的な風景を同時にお楽しみください。寒い冬、心も身体も温めてくれる癒し絵本は、もちろん、クリスマスプレゼントにもぴったりです!

3 絵本館

【選者】絵本館 編集部・黒田昌子さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

家族や友だちとワイワイ楽しい時間を過ごしたい人へ

【選んだ理由】

 世の中になぞなぞ本は数あれど–、みんなでワイワイガヤガヤと笑いながら楽しめるなぞなぞ本といえば、この絵本です。なぞなぞの問いを読みながら絵をよくみると、そこにはちょっとしたヒントがちりばめられていて、それを見つけるのも楽しく、答えがわかったときの盛り上がりは格別です。そしてまた、答えのページの絵もユーモアあふれていて面白い! ひとりでじっくり取り組みのもよし! 大勢でワイワイと楽しむもよし! 絵本ならではの楽しさやなぞなぞの醍醐味をぜひ味わってください。

【お知らせ】
『なぞなぞはじまるよ3』(おおなり修司:なぞなぞ・文、高畠純:絵)シリーズ3作目になる新刊が、12月下旬に発売されます。新たななぞなぞ32問に、ぜひ挑戦してみてください!

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4 偕成社

【選者】偕成社 販売部プロモーション担当 宮沢香織さん

【贈る対象のひと】

アンティーク・骨董好きの方へ

【選んだ理由】

 骨董屋さんが舞台の物語集。小学1年生のレンちゃんは、ずっと憧れていたそのお店に勇気をだして入り、店主のおばあさん・高田さんと仲良くなります。店に並ぶのは、高田さんが世界中を旅して集めた幻の品ばかり! 「にしきごいのうろこ」「稲妻のかけら」「サバンナの逃げ水」「南極サボテンの溶岩コーヒー」……名前を聞くだけでワクワクするそれらの品を高田さんが手に入れるまでの、14篇の冒険物語が収録されています。作者によるカラーイラストも華やかで、贅沢な1冊。表紙をめくったあとの見返し、扉、巻頭イラストのデザインや紙の素材も凝っていて、どこかなつかしく、胸をつかまれる銀杏堂の世界へ誘われます。

【お知らせ】
5年ぶりの続編となる『銀杏堂 スフィンクスのつめ』が12月上旬に発売されます! こちらもどうぞお楽しみに。

5 学研プラス

【選者】学研プラス 編集長木村真さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

今の環境に飽き足りない方へ

【選んだ理由】

 この本は、カバーを見たとたん、ガラスびんの中から、じっとこっちを見ているバーナバスの瞳に心をつかまれてしまいました。物語はガラスびんにとじこめられているバーナバスたちがまだ見たことのない場所を目指していく、スリリングな脱走劇です。とじこめられていないにしても、誰しも普段の行動範囲は割と限られているもの。同じ場所に留まることは安定していて安心感はありますが、時には退屈さもおそってきます。バーナバスたちの懸命な姿に、今のままでいいの? と問いかけられているような気がしてきて、きっと何か新しい冒険をしてみたくなることでしょう。

【お知らせ】
学研の絵本を紹介中! Instagram:@gakken_ehon

6 KADOKAWA

【選者】KADOKAWA 出版事業グループ 児童統括部 児童第一編集部 一般児童書編集部 鈴木敦子さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

わけもなく焦って、つかれている自分へ

【選んだ理由】

 わけもなく気持ちが急いてしまったり、いいようのない不安に襲われたり……。自分なりにがんばっているつもりなのに、気づいたら日々のいろんなことが少しずつずれて、かみあわなくなってしまったような。そんな人におすすめしたいのが『メンドリと赤いてぶくろ』。

 年齢を重ねて社会的にさまざまな役割を担ううち、いつの間にか「~しなければならない」「こうあるべき」と言い聞かせて、自分のこころをがんじがらめにしてしまっていたのかもしれません。絵本を読んで、思いっきり深呼吸して、「たいしたことじゃない」と言ってみる。視界が広がり、こころも少し軽くなっているはずです。

\自分のままでオッケーなのよ/

【お知らせ】
【『メンドリと赤いてぶくろ』絵本原画展】
①東京
期間:2021年11月26日~12月28日
場所:ムッチーズカフェ(西荻窪)
https://mucchis-cafe.jimdofree.com/

②岡山
期間:2022年2月4日~2月22日
場所:つづきの絵本屋
https://tsuzukinoehonya.com/

③東京
期間:2022年3月2日~3月15日
場所:ブックハウスカフェ(神保町)
https://bookhousecafe.jp/

※①②③ともにサイン本販売あります(なくなり次第終了)。
※新型コロナウィルス感染拡大により、変更・中止になる場合があります。

7 金の星社

【選者】金の星社 編集部 大河平将朗さん

B.読んで衝撃的だった1冊

【贈る対象のひと】

電車が大好きな子どもたちへ、旅に出かけたい大人たちへ

【選んだ理由】

 新幹線、電車、機関車、貨物列車など、日本全国の鉄道が一冊の絵本の中で500以上も紹介されていてびっくり! 列車が大好きな子どもたちの笑顔が見えてくるような気がします。人気絵本作家・鈴木まもるさんが描く列車は、絵本から飛び出してくる躍動感と疾走感にあふれています。日本には多種多様な鉄道が走っているという驚き、32ページの中に凝縮された鉄道の魅力に圧倒されながら、有名な鉄橋、都道府県の鳥、各地の駅弁も楽しく紹介され、日本一周の旅気分を満喫できます。日本で一番長い駅名は? などと親子で遊ぶこともできて、繰り返し見るたびに新たな発見がある絵本。今すぐこの絵本を持って旅に出たくなる、本当に素敵な一冊です。

8 くもん出版

【選者】くもん出版 マーケティング部マーケティングチーム内田 昇さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

2~3歳の子どもたちへ

【選んだ理由】

 クリスマスをテーマに、2~3歳の読者がお話に参加しながら楽しめるように工夫された絵本です。幼い子どもたちには、ツリーの飾りつけやパーティーの準備を大人といっしょにお手伝いするのもなかなか難しいものです。この絵本の中で子どもたちは「クリスマスおたすけたい」になって、もみの木をかざりつけたり、ケーキをデコレーションしたり、おうちにイルミネーションをつけたりして、クリスマスの「楽しさ」や「ワクワク」をめいっぱい体験することができます。最後のページには蓄光インクで、お部屋を暗くするとサンタが光るというサプライズの仕掛けも!

9 講談社

【選者】講談社 幼児図書編集長新井公之さん

B 読んで衝撃的だった1冊

【贈る対象のひと】

戦争を知らない子供たちと親御さん

【選んだ理由】

 クリスマスの楽しい時期に戦争の本なんて! と思う方もいるかもしれません。しかし、私がこの本の原画を見た時の衝撃と、「この本は長く読み継いでほしい」という気持ちを持って、この本を編集したことを考えると、本を贈る機会にお勧めしたい本を挙げるとしたら、この本以外に考えられませんでした。『からすのパンやさん』『だるまちゃんシリーズ』などで、多くの子供たちを楽しませ続けたかこさんは、こういうことも子供たちに伝えたかったのでした。私たちみんなが平和に暮らしていくために、知っておかなければならない大事なお話をご家族で話し合う機会になってほしいと願っています。

イラスト:野瀬奈緒美