井上咲楽の旅ごはんエッセイ「おいしい思い出」#2 テラス席で口にした、バインミー
公開日:2026/2/20

旅先で食べた一皿を思い出すと、その土地の風や音までよみがえることがあります。見た景色、聞いた言葉、漂う音楽ーーそれらが食べ物と溶け合い、心の中でひとつの風景を描き出す。食べることとと旅することのあいだにある、やわらかな時間。そんな「味の記憶」から始まる小さな旅をつづったエッセイです。前回にひきつづきベルリンでの様子をお送りします。
9時半起床。今日もホテルの朝食バイキングを食べに行く。朝食がとっても美味しかった。特にピクルスが美味しい。
部屋に戻って荷造り。機内着をリュックに入れたり、空港でばたつかないようにスーツケースと機内に持ち込む荷物の整理を軽くしておく。チェックアウトして、大きな荷物だけフロントに預けて出かける。
この日もテディさんのブログで見つけた、洋服屋さんをめぐる。まず最初に向かったのは「A Kind of Guise Store」というドイツのブランド。店は静かな通りにある。店内へ入ると、メガネをかけて髭を生やした素敵なおじさんがいた。この人服好きそうだなと思ったけど、そりゃそうだ。だって店員だもの。
素敵な服で溢れていた。ニットもアウターも可愛い。可愛いし欲しいけど、値段はまあまあするので、すごく迷った。私は旅先で服を買うのが好きだ。今までも行く国々で気に入ったものがあれば購入した。日本に帰ってからも、それを着るたびに旅の思い出がよみがえり、店員さんとの会話や情景が新鮮に思い出せて、まるで思い出を纏っているようだ。大切に持って帰ってきて、大切に着ている。
優柔不断なのでなかなか決断ができず、一度店をあとにした。そこから歩いて行けるところにある「CHI&CO」という日本人の方が経営されているセレクトショップへ行く。個性的な服やアクセサリーが並ぶ。店員さんがとっても優しい方で、シルバーとゴールドのアクセサリーで迷っていると、一生懸命に相談に乗ってくれた。
「あ!ここもいいですよ!ここもきっとお似合いになりますよ!ここも行ってみて欲しいなあ!」とたくさん店を教えてくれたので、ついでにサクッとランチできるところも聞いた。

この店からすぐのところにある、店員さんに教えてもらったニット屋さんへ。店内で編まれているニットは特別でとっても素敵だった。アクセも個性的で可愛いものがたくさん並ぶ。ずっと欲しかったパールのアクセと、ミツバチのチャームがついたネックレスを購入。ドイツではミツバチを殺してはいけない、という話を聞いてとても印象的だったので、ミツバチのネックレスにした。
お腹がすいたので店員さんに教えてもらった人気のバインミーのお店へ。普段は行列で地元の人にも人気らしい。この日も並んでいた。並んでいて気づいたのだが、この地域はおしゃれな人がすごく多い。ベルリンの中心地で見かけた人たちは、オシャレというよりスタイルが良くて、ラフな服装でもカッコよく決まって羨ましいなという感じ。この辺は日本でいう代官山?的なことなのだろうか?オシャレな人がやたら多い。
10分弱くらい並んで、豚のバインミーとカルダモンのジュース?を注文する。ご飯は後で窓口に取りに行くスタイル。気候も気持ちがいいので、テラス席で食べた。豚肉のバインミー、これがすごくすごく美味しかった!カリカリに焼かれたバインミーの油と香ばしさと、パンの風味がたまらない。そして少し辛めのソース!これはたまらない。甘辛で旨みがたっぷり詰まった悪魔的美味しさのこのソースが日本に売っているなら欲しい。このお店のフランチャイズ権があるなら、誰か買い取って日本にオープンして欲しい。それぐらい美味しかった。
この店がベルリンで食べる最後の食事となったが、大満足だった。飲食店のおすすめは日本人の方に聞くのが好き。味覚に信用がある、と言ったら海外の方に失礼だが、食で失敗したくない自分はなるべく美味しいものを食べたい。冒険してみるのもいいかもしれないが、いつも滞在が短くなってしまう自分にとって一食一食がとても大事で、安全な選択肢をとってしまう。

