子どもも親も「戦争を知らない」時代に――ウクライナ侵攻を例に、戦争を自分事として考える一冊【書評】
PR 公開日:2026/3/19

ロシアのウクライナ侵攻が始まってから約4年。この戦争はまだ終息する兆しがなく、これからますます戦火が広がるとも言われています。今は平和な日本だって、戦争にならないとは言いきれません。
そんな中、今世界で起きていること、これまでに起きた戦争のことを、10代に向けてわかりやすく伝える本『僕らは戦争を知らない 世界中の不条理をなくすためにキミができること ハンディ版(新時代の教養)』(Gakken)が話題になっているようです。監修は、テレビなどのメディアでウクライナ戦争のわかりやすい解説に定評のある小泉悠さん(東京大学先端科学技術研究センター准教授)です。
親世代も知らない戦争を、自分事として捉えるには


親世代である私たちでさえ、伝え聞くばかりで実体験したことがない戦争のこと。今の子どもたちが自分事として捉えるのは容易くなく、ウクライナ侵攻の話も、日本が唯一の被爆国であることも、あまり自分とは関係のない非日常のように思えるかもしれません。しかし戦争は紛れもなく、私たちの日常の地続きにあるものです。
本書には、ウクライナ避難民であるアンナと日本の中学生・涼太との交流を描いた漫画や、2025年3月時点での世界情勢を盛り込んだ解説など、今まさに世界で起きていることが紹介されています。教科書に載っている遠い昔の歴史の勉強…ではなく、自分が生きる世界に今起きていることを、自分事として捉えることができるのではないでしょうか。


「なぜロシアはウクライナに攻め込んだの?」など、戦争を知らない世代が考えるような疑問に答える形で解説されているのも本書の特徴です。ウクライナ侵攻についてきちんと知るには、ロシアとウクライナがどんな歴史を持つ国なのか、過去にどのような関係だったのか、国民や他の国々はどう考えているのか…といった周辺の知識を得る必要があり、それらが順序立てて平易な言葉で紹介されています。
一方的ではなく、さまざまな国の視点から世界を俯瞰で見ることで理解が深まり、さらに、視点が広がることで、自分はどう思うのかという意見を持ちやすくなるかもしれません。
アジアへの侵略と被爆の歴史


漫画では、涼太が、アンナが暮らす街にもロシア軍の激しい攻撃があり、国民の命が奪われていることをニュースで知ります。同じ頃、修学旅行で訪れた広島で、被爆者のヨシさんから当時の話を聞く機会を得ます。ある日突然町に攻め込まれ、一瞬にして日常が奪われた…ヨシさんとアンナの姿が重なった涼太は、争いのない世界のために自分ができることを探そうとします。
日本は核兵器により多くの命が奪われましたが、その一方で、アジアへの侵略により多くの命を奪った立場でもあることを本書は記しています。その上で、被爆国として核兵器の恐ろしさを世界に訴えていくのと同時に、過去の罪をしっかりと受け止めることも日本の使命であることを主張しています。将来、子どもたちが世界に羽ばたくことがあったとき、このような自国の歴史を知っておくことが、日本人としての責任にもつながるのではないかと感じました。
争いのない世界のためにできることは「知ること」


小学3年の息子は本書の漫画を読み、ウクライナや日本で起きたことを知って「悲しい…」と悲痛な面持ちでつぶやいていました。ただ、その一方で「僕が不死身だったらみんなを助けられるのに」とも話しており、まだまだこれから戦争のことを伝えていく必要があると感じています。同時に、アニメのヒーローの存在をまだうっすらと信じているような無邪気な年頃の子どもたちが、世界では理不尽に命を奪われていることを思うと、居ても立ってもいられない気持ちになりました。
本書では、行動を起こすにはまず「知ること」が不可欠であり、争いのない世界のためにできることを考えるのは、私たち一人ひとりの問題だと語られています。子どもたちに伝える立場である私たちもまた、現状を知ることから始める必要がありそうです。大人でも多くの発見がある本書を親子で読み、誰かに任せるばかりではなく、自分ができることを探し続けることを諦めないでいたいと、読後に感じています。「知ること」は、もしも第三次世界大戦が起きたとき、自分や家族を守るための盾にもなり得るのではないでしょうか。
文=吉田あき
