「どうして他人の子を愛せるの?」注目の作家・菰野江名が夜間保育園の物語から見つめた、プロの愛と覚悟【インタビュー】
更新日:2026/3/24
キャラクターは書きながら育っていく

――物語は完全に夜型の主人公・保育士の文乃の保育園での話と、亡くなった父の恋人である杏子さんとの交流という縦軸と横軸があります。そういった構想はどこから生まれたのでしょうか?
菰野:「夜眠れなくなって、夜に働く保育士の仕事を選んだ」という主人公の設定を考えたときですね。彼女は不幸にも小学生時代に親を亡くしてしまいますが、家族ではない人にずっと見守られていて、だけど実はそんな付き合いを続けることに苦しみを感じている。それでバランスがとれなくなって体調を崩してしまうことにしました。血縁関係がある親以上に濃く自分に関わってくれる他人との関係はずっと同じように続けられるのか、常にどういった感じなのか考えながら書きました。これまでの作品でも「家族」をテーマに書いてきたので、次は違う関係性を書きたい気持ちもあったんですが、やっぱり家族の話になったのは、もうちょっと書きたいことがあったんだと書いてから思いましたね。
――文乃と杏子さん、二人の関係はこの先どうなっていってほしいと作者としては思いますか?
菰野:今のままの距離感を続けてほしいとは思うんですけど、そのままだから文乃が苦しくなったところがあるので、多分、杏子さんの方からちょっと離れるんじゃないかと思います。二人とも精神的に大人だし賢い人たちだなって書いていて思ったので、他人との距離の測り方も本当は上手だろうし、柔軟にうまくやってくれよって思います。
――今のお話を聞いて思いましたが、キャラクターたちは菰野さんの中で書きながら育っていくのですか?
菰野:完全に書きながらですね。特に文乃なんかは最初はかなりぼんやりしていました。書いてみて、なんかちょっとブレてきた感じがしたら戻って読み直して、「私が思っている文乃はこんなこと言わない」と思うと書き直して。そんなふうに行ったり来たりしながらどんどん形ができていった感じです。
――ちなみに物語自体は結構決めて書くのですか?
菰野:ラストは決めて、最初に章立てでプロットを考えて書いていきます。今回、子どもを亡くしてしまったお母さんの話を書こうと決めていたんですけど、実際に書くとなるとすごく苦しくて、その章はずっと泣きながら書いていました。実は前作に障害のある人と結婚するくだりがあるのですが、私の本をすごく楽しみにしてくれている友人が発達に特性がある子を育てていて、彼女がそのくだりで将来を想像してしまって苦しくて読めなくなったと言っていたんですね。やっぱり「書く」ということは誰かを傷つける可能性を常にはらんでいるわけで、今回も常に迷いながらの作業でした。「強く生きていく」っていう前向きなラストまで書き通しましたが、やっぱり表現するって難しいとあらためて思いました。
