「どうして他人の子を愛せるの?」注目の作家・菰野江名が夜間保育園の物語から見つめた、プロの愛と覚悟【インタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2026/3/24

どんな状況でも並走して書き続けたい

 「どうして他人の子を愛せるの?」注目の作家・菰野江名が「夜間保育園」の取材で触れた、プロの愛と覚悟【インタビュー】

――2023年にデビューして本作が3作目。何かご自身の変化はありましたか?

菰野:1作目は子どもがいなくて、2作目は育休中で、今回は仕事をしながら子どもを保育園に預ける日々の中で書く状態でした。それでも書き続けられたし、やっぱり書きたい。これからもどんな状況でもうまく子育てと両立し続けたいと思います。

――どうやって時間を作っていますか?

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菰野:朝、子どもを保育園に預けてから働いて17時頃にお迎えに行って、家で子どもの世話や家事が終わるのが21時で、その後にできるだけ1時間か2時間書くようにしています。途切れちゃうと前に書いていたことの記憶が薄くなっていく感覚が怖くて。休日は家族で過ごすのでお休みして、なるべく平日に書くようにしていますね。

――ご家族も応援してくださっているんですよね?

菰野:そうですね。特に読書家の義母が喜んでくれています。会いに行くと読んだ文庫本をどっさりと渡してくれて、本の交換とかもできて。あまり身内でそんなことできる人がいなかったので結構ウィンウィンなんです。

――身内に応援団がいっぱいいるのは素晴らしいですね! いずれ娘さんも読むでしょうしね。

菰野:読むかなー? でも本好きにはなってほしいです。今は仕事の説明をするのがすごく難しくて、今のところ彼女の中では私はなぜか、ららぽーとで働いていることになっています(笑)。

――3年作家を続けて、何かご自身の変化を感じることはありますか?

菰野:書いているからなのか、子育てをしてきたからなのか、今は東京に住んでいるからなのか、いろんな要因が複雑に絡まっているとは思いますが、ようやく「実年齢」に精神が追いついてきた感じはあります。20代の頃は働いている大人なのに娘さん扱いされるのがすごく嫌で、「早く大人になりたい」って思っていたんですね。でも仕事も10年以上同じところで続けてきて、子どもが生まれてライフスタイルも変わって、ようやく自分の好きなものがわかるようになったというか、NOと言える人間になったというか、自分を「大人」と思えるようになってきた気がします。

――「作家」というアウトプットする仕事も成長させてくれるのかもしれませんね。

菰野:それもあるかもしれません。アウトプットは小説を書く以外では全くしないし、続かない。日記もSNSもダメなんですけど、なぜか小説だけは書き続けられる。好きだからかもしれないですけど、どこか思いを吐き出せている部分はあるのかもしれません。

――菰野さんの優しい世界のファンもどんどん増えています。これからどうなりたいですか?

菰野:私が読者の側なら、優しい物語も好きだけど、毒がある物語や書き口も好きで。私はどうしてもちょっと言葉の角が丸くなる癖があるのでそこは直したいし、毒のある言い回しにも憧れます。あと、本というのは「自分が書きたいもの」と「出版社が読ませたいもの」のマッチングでできていくということが作家になってわかって、マッチングは大事だけど、そこに自分が寄せすぎてしまうことに恐怖も覚えるようになりました。どういう作品を書きたいかではないんですが、書きながら自分が本当に書きたいシーンみたいなものをまだ探している途中でもあります。

――本作を拝読して、より物語にリアリティが出たと感じました。今後ますます作品の魅力が増していく予感がします。

菰野:読んだ方が繁華街を歩いているときに「ここに(物語に登場した)保育園があるかもしれない」って思ってもらえたり、子どもを夜に保育園に預けて働いている人がいることをちょっとでもイメージしてもらえたりしたら嬉しいですね。

――優しい社会になりそうですよね。

菰野:なってほしいです。

取材・文=荒井理恵 撮影=島本絵梨佳

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