入社3年目テレビ局員によるエッセイ連載「テレビぺろぺろ」/第10回「有田哲平に憧れ続けたテレビ局員の万感」
公開日:2026/3/31

テレビ東京入社3年目(間もなく4年目)局員・牧島による、連載エッセイ。「新しくて面白いコンテンツ」を生み出すため、大好きなお笑いライブに日参し、企画書作成に奮闘する。これはそんな日常の記録――。
こんにちは。
テレビ東京の牧島俊介です。さて…。
一目でいいから、見てみたい。
名前を呼ばれてみたい。好きな気持ちを伝えたい。
そんな控えめな願いは、いつしか恋のような生々しい欲望へと変化する。
それが、憧れというものだ。
憧れの存在と、仕事がしたい。
テレビ局に勤める人は誰しもが願うこと。
昨夜放送スタート、私が監督・プロデューサーを務めた『アリフォルニア』(TVerで全4話先行配信中)。
アリの巣を舞台としたシチュエーションコメディ。
主演、有田哲平。
『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』
今、永眠すれば、走馬灯のBGMはこの番組だろう。
全165回を繰り返し、繰り返し聴いてきた。
といっても、リアルタイムで聴いたことはない。
番組が終了したのは2008年。私が8歳の頃だ。
小学校に入ったばかりのあはれな児童が、深夜ラジオの快楽を知るはずがない。
高校生の頃、とうの昔に終わったこの番組と出会った。
通学中でも、授業中でも、夜ふかしの布団の中でも、イヤホンを耳へ押し込めば、
凄まじく完成されたくりぃむしちゅーの世界に浸れる。
私はすぐに憧れた。
飄々と有田さんはボケ、上田さんをいじる。
たちまち上田さんは怒声を張りあげ、応戦する。
元々、ラジオを聴く趣味はあったが、芸人の素の姿を窺い知るツールだと思っていた。
張り切ってボケたりツッコんだりする姿より、プライベートのような雑談を楽しむもの。
そんな深い裏側コンテンツにまで手を伸ばしている自分は、お笑い好きの中でも限られた通な存在である。私は、そんな芸人のラジオを聴きながら、密かに優越感に浸っていた。
だからこそ、新鮮だった。
素の姿らしいものはどこにもない。
むしろ、テレビで見るお馴染みのキャラクターを極限まで煮詰めたような二人が、がむしゃらに笑いを追求するラジオ。
身も蓋もないことをいえば、上田さんは有田さんに罵声を浴びせながらも、本当に心から怒っているわけではないだろう。くりぃむしちゅーのオールナイトニッポンはいわば即興コントだ。
そして、私たちリスナーはそれに全力で乗っかって楽しむ。
それは、一種のテーマパークだった。
お化け屋敷は、所詮人が演じていると思えば怖くないのと同様、この世界を楽しむには客観視を殺す必要がある。ラジオが流れている間は、野暮な疑いを捨て、上田さんは本気で怒っていると信じて楽しむ。その滑稽な様を笑う。私たちリスナーは、有田さんの作るコント的世界に己の精神を同調させ、没入していくのだ。
『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』と出会ったことは、私がエンタメ業界に興味を持つ大きな転機となった。
もう9周目だもんな…。
7、8年が経ち、テレビ局員になってもまだ聴いていた。
全ての展開を覚えている。次の発言はたいてい予測通り。
それでも、やっぱり『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』は面白い。
飽きているどころか、もはや私の脳は、この世界に巻き込まれるための最短ルートを学習してしまっている。待っていたフレーズが来る前から気分は昂り、その瞬間が来れば歓喜する。
そんな私が、ご本人にお会いする日が来た。
とんでもなく緊張するだろう。言葉が出なくなるか、逆に支離滅裂なまでに喋り倒してしまうのか。
有田さんとの初めての打ち合わせは全く緊張しなかった。
聴き馴染みのある声すぎたから。
テレビ朝日の楽屋はお座敷だった。
そこは、もう実家だ。セミが鳴いたっておかしくない。
『くりぃむクイズ ミラクル9』の収録前の楽屋に帰省しにきてしまった。
「『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』が好きで、くりぃむさんのことが好きで…」
「えっマジで、嬉しい!」
有田さんは、満面の笑みで真っすぐ喜んでくれた。
それが、この上なく嬉しかった。
これまで何千、何万という人から「面白い」「好きだ」と言われてきたはずなのに、私の一言に向き合ってくれている。
もっと好きになっちゃう。その顔を見れば見るほど好きになっちゃう。
好意を伝えられたり、褒められたりしたときの最適解は、否定することでも謙遜することでもなく純粋に喜ぶことなのかもしれない。承認されている実感が、想いを伝えた側に溢れてくるから。
打ち合わせが始まって30分。
私は無意識にあぐらをかいていた。
そして最後に、有田さんはおっしゃった。
「こんどは『アリフォルニア』を観て、テレビ局で働きたいと思う人が出てきてくれるようにしたいですね」
あぐらのまま背筋が伸びる。
有田さんは続ける。
「本当にそうしなきゃダメですよ」
ああ、有田さんに憧れてよかった。
有田さんのおかげで、私は今の私になることができた。そしてこの先も、私が向かうべき次の私になることができる。有田さんを好きになったことは、私の人生がいつの間にか勝ち取っていた、決して失われることのない誇らしき過去である。
『アリフォルニア』を観てほしい。
『アリフォルニア』放送情報
放送日時:
第1話:3月30日(月) 深夜0:30-1:00
第2話:4月9日(木) 深夜3:05-3:35
第3話:4月16日(木) 深夜3:05-3:35
第4話:4月23日(木) 深夜3:05-3:35
※第1話放送後、TVerにて全4話先行配信
放送局:テレビ東京 ほか
『アリフォルニア』関連サイト・SNS
◎TVer:https://tver.jp/series/sr3ya93ryo
◎公式X(Twitter):@Alifornia_tx https://x.com/Alifornia_tx
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