知念実希人の“厳禁”シリーズ最新作『エゴサ厳禁』はホラーミステリーの新境地。スマホサイズの没入感で、「アイコレクター」と呼ばれる殺人鬼の謎に迫る【書評】

文芸・カルチャー

PR 更新日:2026/5/25

エゴサ厳禁
エゴサ厳禁(知念実希人 / 双葉社)

エゴサ厳禁』(知念実希人/双葉社)は、スマホ画面に映し出された情報と小説を交互に読み進める、独創的なモキュメンタリー・ホラーである。2025年に本書と同様のスマホ本形式で発売された『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』と、インタビュー形式の『閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書』は、いずれも大きな話題を呼んだ。本作は“厳禁”シリーズ第3弾ということになる。

「アイコレクター」と名乗る殺人鬼による、連続猟奇殺人事件。被害者は全員、眼球をくり抜かれていた。その被害者の娘である遥香は、私立探偵の久我原と共に犯人探しを始めるが……。

■没入感の高い読書体験は“厳禁”シリーズ最大の魅力

 本作ではスマホの画面が随所に差し込まれている。写真フォルダや動画プラットフォームのコメント欄、オンライン会議の画面など、得られる情報は多彩だ。そして本作は、ホラーだけでなくミステリの要素も取り入れられている。読者は物語を追いかけつつ、画面内に犯人につながるヒントが何かないか、隅々まで目を走らせることになる。この読書体験は、“厳禁”シリーズだからこそ味わえるものだ。

 また、スマホで録画している映像が物語への没入感を高めてくれるところも魅力である。思わぬものが映りこんでしまった瞬間などは、つい息を呑んでしまう。文章から想像するだけではなかなか得られない、自分自身がその世界にいるような感覚に陥る。主人公の一人称視点で物語を展開するPOVホラーは映像作品における人気ジャンルだが、“厳禁”シリーズはその流れを継いで書籍という形に落とし込んでいるのが面白い。

■「エゴサ」の本質を暴く驚きの展開

 タイトルにも挙げられている「エゴサ」とは、エゴサーチの略称で、SNS上で自分自身の名前を入れて検索し、評価を確認する行為のことを指す。作中の殺人鬼は「アイコレクター」と名乗り、残忍かつ強烈な死体を残している。当然、ニュースやSNSは「アイコレクター」の話題でもちきりだ。これらが見事に「エゴサ」というテーマと交差し、どんでん返しへとつながっていく展開は圧巻だ。

 画像のページの比率が多く、スマホサイズ(※)に合わせてある本作は、一般的なミステリと比べて文字数は決して多くない。それでも展開がしっかり作り込まれているので、読後の満足度が高い。いくつも伏線がはられており、読み終えたあとにもう一度最初から読むと、「なるほど、これはそういう意味だったのか」と納得できる。
※判型はスマホに合わせた165mm×85mmという特殊判型

iPhone Proとの比較
iPhone Proとの比較

 ちなみに、本作と前作までの“厳禁”シリーズの物語は、直接リンクしていない。あくまでスマホ画面や資料など、文章以外の要素が物語の重要な鍵を握るという構成だけが引き継がれている。そのため、“厳禁”シリーズが好きだという人はもちろん、本作から初めてシリーズに入るという人も安心して読んでほしい。ホラーとミステリを両方味わいたいという欲張りな願いを叶えてくれるだけでなく、その両方を主人公と同じ視点で、当事者感覚に浸りながら楽しめる一冊だ。

文=宿木雪樹

エゴサ厳禁