『高校デビュー』河原和音、初の絵本に込めた思い「“自分では気づかない長所”を、キャラクターを通して伝えられたら」『おにぎりを おかあさんに』【河原和音インタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2026/6/15

『高校デビュー』などで知られる人気漫画家・河原和音さんが絵を、「くまのがっこう」シリーズなどを手掛けたあいはらひろゆきさんがおはなしを担当した、絵本『おにぎりを おかあさんに』(KADOKAWA)が6月10日に発売された。本書は母ひとり子ひとりで暮らすそうたくんが、忙しく働くお母さんのためにおにぎりを作って届けようとするストーリー。お母さんを思うそうたくんの気持ちに心が温まる物語だ。河原さんにとっては初めて、そしてあいはらさんにとっては遺作となった本作(あいはらさんは2022年に永眠)。自身も小さい頃から絵本が好きだったという河原さんに、漫画とは違う絵本の絵をつけることの難しさと楽しさ、自身の漫画への想いなどを伺った。

『高校デビュー』『青空エール』人気漫画家・河原和音さんの初の絵本

――絵本の絵を描くのは、河原先生にとって初めてのお仕事ですよね。

河原和音(以下、河原) そうですね。私はもともと、あまり自分の絵に自信がないんです。今回はあいはら(ひろゆき)先生が「ぜひ河原さんの絵で」と声をかけてくださったので、「それだったらやってみよう」と思いました。「『青空エール』あたりの絵がいい」と具体的に言ってくださったのも印象深くて。自分ではわからない私の絵の良さを見つけてくださったのだと思うと、すごくありがたかったです。

advertisement

――あいはら先生とは、どのようなやり取りをされたのでしょうか?

河原 テキストで物語をいただきました。絵の指定は一切なくて、構図から私が自由に考えられる形になっていました。

 ただ、私が本格的に取り組み始めた頃には、すでにあいはら先生はお亡くなりになっていて。本当だったら、キャラクターも何パターンか描いたので先生にお見せして「どの子が良いですか?」とご相談したかったですし、主人公・そうたくんについてどんなイメージを持っていらっしゃったのかも伺いたかったな……と思います。

河原作品に出てくる「こういう人になりたい」キャラはどうつくられるのか

――お話を読んで、どんなところからイメージを膨らませていきましたか?

河原 まずはそうたくんのことからですね。どんな子で、どんなふうに暮らしていて、お部屋には何があって……というところから広がっていきました。「そうたくんが歩く道はどんな道なのかな」とか、ひとつひとつ想像していくのが楽しかったです。

――主人公の周りから想像するというのは、漫画制作の時とは違いますか?

河原 漫画もいろいろな作り方がありますが、私はやっぱり人物から考えることが多いですね。キャラクターがしっかり決まると、その子の目的や周囲の人たちなどもどんどん固まってくる。それが一番求心力の高い作品になると思っています。

――河原先生の作品は、「こういう人になりたい」と思える素敵なキャラクターが多いところも魅力だと思います。キャラクターを描く上で大切にしていることはありますか?

河原 周囲への愛情や感謝を持つことですね。私自身、たくさんの人に支えられて生きているので。それと、自分のいいところに気づいていない人って結構多いと思うんです。こちらがしてもらって嬉しかったことを伝えても、「そんなの当たり前だと思ってた」と返されることってありますよね。そういう“自分では気づかない長所”を、キャラクターを通して伝えられたらと思っています。

 私は、自分の周りで一生懸命頑張っている人たちが好きなんです。そんな人たちに寄り添って歩いていけたら、「楽しい」と思ってもらえたら、というのが作品を描く原動力のひとつです。

――先生の作品は、どれも心が浄化されるというか、「私も頑張ろう」と思える作品が多いと私は感じています。それは今おっしゃったような人の素敵なところが描かれているし、先生の愛情深さがキャラクターに表れているからなのかなと、お話を聞いて改めて感じました。

河原 私が描いているものに「いいな」と思うということは、その人の中にも同じように優しい部分があるからだと思います。生きていると疲れて優しい部分を忘れてしまうこともあるけど、そんな時に漫画を読んで「こんな気持ち、自分の中にもあったな」と思い出してもらえたら嬉しいですね。とは言っても、描いている最中はそんな高尚なこと考えているわけではないのですが(笑)。

あわせて読みたい

おにぎりを おかあさんに (角川書店単行本)

試し読み *電子書籍ストアBOOK☆WALKERへ移動します