宮田愛萌「おしゃべりだけどコミュニケーションが下手」正直すぎる本音とは? 愛萌ワールド全開なエッセイ集【書評】
PR 公開日:2026/6/20

このほど、タレントの宮田愛萌さんが初のエッセイ集を出した。アイドル卒業後、作家としても活躍し、溢れる書籍&書店愛も相まって、文芸シーンでも注目の存在である彼女。『ないなら書けばいいじゃない!』(大和書房)と名付けられたその本は、表紙はくすみピンクでかわいい印象だが、中央に配された著者の似顔絵(愛萌さんのお気に入り・ソライモネさんによるもの)の目力にはなにやら独特の気配…単純なかわいさで終わらないのは、そのまま本の中身を表しているようでもある。
たとえば冒頭は自身のファンへの想いを入り口にした「私は一生を信じていない」。自らの推しに対する熱のあり方を「私は推し活というものが好きではあるし、相当の金額をかけられるとは思うけれど、自分の人生の次である」と冷静に分析し、そのあり方から自らのファンとの接し方へと着地していく。もちろんファンへの感謝を表明しているのだが、どこか客観的というか諦観に似たものがあって、ちょっと複雑。続く「別れ話について」は男女の話かと思えば女ともだちとの適切な距離感のことだし、「ぽっと出が!」は女ともだちの「彼氏」についての微妙な心理のことだし、「なんか面白いぞ、この人」とついついひきこまれる。
ほかにも家族、友情、ぬいぐるみ、胃痛、犬、お菓子作り、書店愛、結婚…などテーマは実に多岐。エッセイによくある「旅先で出会った風景」とか「日常の一コマ」とかの印象を感覚的に綴るというよりは、帯にある「置き場のなかった34の本音」の通り、対象テーマに対するこだわり全開で、「私とはこういう人間なのだ」が問わず語りに語られている感じだ。
実際、愛萌さんは大のおしゃべり好きとのことで「家でも人間ではなくぬいぐるみやシャワーヘッドや虚無に話しかけている。壁に話しかけていたこともあったが、『画』が怖いかなと思ってやめた」(はじめに、より)らしい。そして、おしゃべりは好きだけれど、他人に興味を持たない、コミュニケーションが下手というのも面白い。読者はきっと、そんな彼女のひとりごとを受け止める「何か」になった気分で楽しめるはずだ。
そんな沼るようなひとり語り感覚は、もしかすると幼い頃からの読書好きが影響しているのかもしれない。なぜなら読書とは「究極のひとり時間」。感じたことを言葉にする相手は自分が一番手っ取り早いし、誤解されないから面倒くさくないし(なぜなら自分だから)、そんなひとり時間を長年大切にしてきた愛萌さんだからこその妙味なのかも。ちなみに彼女の文章はちょっと硬質。自分の感覚にぴったりの言葉を探し、ためつすがめつする感じもあって、クールでちょっぴり甘みもきいた独特のキュートさがある。
実は筆者は彼女に一度インタビューをしたことがあるのだが、そのときに「高校時代、読みたい本は自分で書いていた」と聞いて「その発想はなかった!」と驚いたことがある。
表題作である「ないなら書けばいいじゃない!」は、そんな彼女らしい思考に触れられる。原稿データをなくすことが多いという彼女。そんな時は、消えてしまったデータを探すより書いてしまった方が早いと考えるのだとか。普通は、せっかく書いた原稿に未練が残り、保存していなかった自分を責めたり、悔しがったりするもの。困っている間に書いてしまった方が早いと、合理的な考え方も彼女らしい。
ほかにも彼女ならではの理屈というかこだわりがいろいろあるのも面白く、そんな愛萌ワールド全開の本書を読めば、あなたも自分のこと、何か書きたくなってくるかも!?
文=荒井理恵
