「宇宙船のような塊にみえてくる」一通の手紙から出版レーベルが立ち上がるまでのプロセスがまとめられた一冊【デザイナーの装丁惚れ】
公開日:2026/7/3
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年7月号からの転載です。
軽やかさと遊び心が丁寧に組み合わさった気持ちのいい一冊

一通の手紙から出版レーベルが立ち上がるまでのプロセスがまとめられた本書。

手に取るとまずは人工衛星に使われるサーマルブランケットを模したというゴールドの帯に目を奪われ、さらに小口を見ると、一回り大きな表紙に挟まれたにぶい生成り色や真っ黒な紙、鮮やかな黄色の紙などが層をなしていて、まさに宇宙船のような塊にみえてきます。


本書で一番気持ちがいいのが、あくまで一般的な書籍としての作りを崩さず本という形式のルールの中で、洒落た編集とデザインによって美しい奥行きが実現されている、というところです。『本の可能性を模索しながら本を作る』という本書のテーマに寄り添うように、ページの重なりによる物質性や時間軸、印刷の光の反射などの細やかな変化により、本の内容が立体的に伝わってきます。

本文用紙は中質紙中心でやわらかく、すべて一色印刷(黒い紙のページだけシルバー、他はすべてスミ1C)の四六判の並製という軽やかな造本ながら、丁寧な編集と造本計画、美しい文字組み、そして小気味のいい遊び心が詰まっていてとても誠実な仕事ぶりを感じ、本棚の大切な一冊になっています。
選・文:畑ユリエ 写真:首藤幹夫
はた・ゆりえ●グラフィックデザイナー・ブックデザイナー。近年の担当作に『デザインにできないこと』(BNN)、『線場のひと』(トーチコミックス)など。第58回造本装幀コンクールにて東京都知事賞を受賞。

装丁:尾中俊介(Calamari Inc.)
<第13回に続く>