「涙なしには読めない!」6つの惑星が一列に並ぶ奇跡的な現象を人間関係になぞらえた、ほろ苦い恋愛小説『六惑星のパレード』【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/7/8

六惑星のパレード
六惑星のパレード(夏木エル/双葉社)

六惑星のパレード』(夏木エル/双葉社)は、少年・少女が成長していく過程で結ぶ、家族や恋人、友人との関係、そして嫉妬や羨望、孤独といったさまざまな感情を丁寧に描いた長編小説である。

 長年やってきた野球を辞め、高校からサッカー部に入部した瀬尾斗也。天文部に所属し、星空の写真を撮る吉川藍。二人の間には恋心が芽生えるが、ある事件が起こる。その事件をきっかけに、これまで絶妙なバランスで成り立っていた二人の家庭環境はそれぞれ崩れていく……。

■天体をモチーフに描かれる、壮大な恋愛の軌跡

 表題の「六惑星のパレード」とは、六つの惑星が一列に並ぶ天文現象を指す。大変珍しい現象のようだが、人との巡り合わせもまた、惑星のパレードのように奇跡的なものかもしれない。

 主人公の斗也と藍は、高校時代、大学時代、そして成人後と流れる月日のなかで、偶然の出会いと、思いもよらない再会を経験する。二人は異なる道を歩んでおり、決して重なることはないが、ときどき互いの人生に触れ、そのたびに惹かれ合うのだ。この関係が非常にロマンチックで、惑星というモチーフとかけ合わせたことも素晴らしいと思った。

 会えない時間こそ、相手を想う気持ちを育んでいく。二人の内面を交互に読み進めていく構成によって、読者はそれぞれの変わらない想いと、変わっていく環境を追体験することができる。その読書体験は、まさに黄道上を巡る惑星の動きを見ているかのようだ。「もっとこうなっていれば」と想像しても、二人の軌道が変わることはない。

■幸せになることを認めていく物語

 もうひとつ本作の特徴として挙げられるのが、家族の不和に対する解像度の高さである。斗也と藍は、それぞれ両親や兄弟(姉妹)間の問題を抱えており、それが本人たちのアイデンティティやコンプレックスに大きな影響を与えている。自分勝手な家族を責めるどころか、自身を責めて自己犠牲に走る二人には、胸が詰まるものがある。

 本作は、そんな二人が過去を消化し、自分自身の幸せを認めて前に進んでいく話として読むこともできる。単なる恋愛物語ではなく、自分自身を赦す成長物語とも言えるかもしれない。そのプロセスには実に多くの困難があるのだが、だからこそラストシーンの美しさは、涙なくして読めない。惑星が時折並ぶように巡り合ってしまう二人が、最終的にどんな選択をするのか、見届けてほしい。

 長い月日を追う恋愛長編小説が好きな方はもちろん、苦境に立たされながらもひたむきに生きる人を描くヒューマンドラマが好きな方にも推せる。身勝手な親のもとに生まれた子どもたちの不遇や葛藤といったテーマにぴんとくる人ならば、波のように押し寄せる困難の数々も読みきることができるだろう。

文=宿木雪樹

六惑星のパレード (双葉文庫)