幻のB案が映画のラストに採用? 大ヒットホラー作家・背筋が語る『口に関するアンケート』の裏話と新作『目が』の恐怖【背筋インタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2026/7/13

背筋さん

 小説投稿サイト「カクヨム」への投稿から、2023年に書籍化された『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)で作家デビューをした背筋さんは、ここ数年のホラー小説ブームをけん引する立ち位置にいる。デビュー作は「このホラーがすごい!2024年版」で国内編1位に選出されるほか、2025年には実写映画も公開され、大きな反響を集めた。その人気は決して一時的なものではなく、続けて発表した作品はいずれも大ヒットを記録してきた。

 そうしてこの夏、日本中でさらなる背筋ブームが巻き起こることが予感される。待望の新刊である『目が』(ポプラ社)が発売され、また第3作である『口に関するアンケート』(同)の実写映画が公開(2026年7月3日)されたのだ。

 ホラー作家として忙しい日々を送る中、背筋さんはいま、なにを思うのか。新作『目が』と映画版『口に関するアンケート』について、お話をうかがった。

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人間は常に「見ること」「見られること」を意識しながら生きている

背筋さん

――新作『目が』は「目」や「視線」をモチーフにしたホラーです。前作『口に関するアンケート』を踏まえると、身体パーツをモチーフにしたシリーズ作品を意識されているのかと感じました。

背筋さん(以下、敬称略):『口に関するアンケート』と同じポプラ社さんから新作を出すことが決まった当初、特にシリーズ作品にするつもりはなかったんです。ただ、同じ作者が同じ版元から、前作と同じコンパクトなサイズの本を出すのであれば、なにか通底しているものがあるのだと読者に感じてもらいたくて。そんな中、一体どんなフックが考えられるかなと模索したところ、「目」「視線」というモチーフに辿り着きました。

――作中ではさまざまなシチュエーションから「見ること」「見られること」について語られていきます。

背筋:たとえば、作中で引用した「霊感テスト」にも関連するんですが、人って何故か「幽霊のような存在を、いるかどうか確かめたくなる心理」を持っているじゃないですか。それはつまり、「見たい」ということ。一方で、生活の中で神様から「見られている」という意識もありますよね。神様が私たちの善行なり悪行なりを常に見ていて、死後に裁定されてしまうとよくいわれます。そして、見る、見られるという行為はもしかしたら希望や絶望ともつながっているのかもしれない。それを「視線」と絡めて語ってみたいと思ったんです。

 そもそも、私たちは見ること、見られることを常に意識しながら生きていますよね。それはホラーに限った話ではなく、日常生活の中でも当たり前の感覚です。たとえば、道端で転んでしまったとき、「痛い」よりも先に「恥ずかしい」がくる。膝から血が出ているのに周囲の視線を気にするあまり、なんでもないフリをして立ち去ってしまう。それって実はすごい感覚じゃないですか。そんなに他人の視線が気になるならば一生閉じこもって生活しているほうが楽なのに、だけど一方ではBeReal.のようなSNSを使って、自分のことを世界に発信したくもなる。見る、見られるという感覚に着目してみると、人ってとても矛盾を孕んでいることがわかりますよね。

――背筋さんもそれは同様ですか?

背筋:もちろんです。そもそも「小説を書く」という行為自体が見る、見られるに近いと思っていて。書くことって自分を客観視する作業でもあるわけです。登場人物を三人称で描いていくならば尚更、自分を客観視することにつながっていく。同時に、そこに書かれていることが、作者とイコールで見なされてしまう。小説で書いていることと作者の主張を結びつけることはできない、だけど、すべてが主張と異なることかと問われてしまうと、それも違う。だから、小説を書きながら、読者からの視線をすごく感じます。

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