一気読み必死の医療サスペンス! 増刷が止まらない大ヒット小説『仮面病棟』とは?

文芸・カルチャー

2016/1/18


『仮面病棟(実業之日本社文庫)』(知念実希人/実業之日本社)

いま、現役医師による密室ミステリーが、セールスシーンを席巻しているのをご存じだろうか。

文庫書き下ろしのこの作品の発売日は、一昨年、2014年の12月とやや遡る。しかし、ブレイクしたのは昨年の終わりころ。実売数で競われる「啓文堂書店文庫大賞」で2位にトリプルスコアの大差で1位に輝くと、その勢いは急加速。2015年10月以降だけで、なんと15万部以上を大増刷するヒット作となっている。新年の増刷で累計部数は20万部を突破し、いま最も勢いのある作品のひとつだ。

そのタイトルは『仮面病棟(実業之日本社文庫)』(知念実希人/実業之日本社)。深夜の病院を舞台にした密室ミステリーだ。

謎が謎を呼ぶストーリー、息をつかせぬ怒涛の展開、最後に待ち受けるどんでん返し。そして、現役医師の著者だからこそ描ける精緻な描写が、読者の想像と緊張をかき立てる。読後感もよく、圧倒的なエンターテインメント作品となっている。

人気シリーズ「天久鷹央の推理カルテ」(新潮文庫nex)でライトノベルも手がける著者だからこそ、1冊を通しての読みやすさは折り紙つき。ミステリーファンはもちろん、10~30代の女性などにも、口コミやSNSから急速に人気が広がっている。

三省堂書店有楽町店での展開の様子

物語は、主人公の医師・速水秀悟が、身元不明の患者を収容する田所病院にアルバイトの宿直位として夜勤になったことから動き出す。

不気味なピエロの仮面をかぶったコンビニ強盗犯の男が押し入ってきた。人質として連れてこられた女子大生・愛美は、脇腹を銃で撃たれている。ピエロは病院に朝まで立てこもることを要求するだけでなく、なぜか秀悟に愛美を治療するよう指示する。

その場に居合わせたのは、当直の女性看護師・東野と佐々木、そして「たまたま残業をしていた」という院長の田所。愛美の応急処置を終えた秀悟は、ピエロの隙を見て通報することを試みる。しかしスマホは圏外、院内の外線もすべてコードごと切られており、断念せざるを得ないことに。あまりに周到な手回しに疑問を感じ、戸惑う秀悟だが、となりで怖がる愛美の純真で人懐っこい人柄に、特別な感情を抱きはじめていることを感じていた。彼女を安心させたい一心から、脱出を試み始める。しかし、その途中で立ちはだかるさまざまな障害、そしてとうとう第一の犠牲者が生まれてしまう……。

一向に見えてこないピエロの目的、何者かによってこじ開けられた失語症の男性患者の手術痕、見つかった怪しげなカルテ、何かを隠している風な院長たちと、不意に見つかった3,000万円の大金。謎が謎を呼ぶ疑心暗鬼の密室空間で明らかになり始める、この病院に隠された驚くべき秘密とは──。

一部のミステリーファンから「ジェットコースター・ミステリー」とも称されるほど、ページをめくる手が止まらない、まさに一気読み必至の傑作だ。物語中に散りばめられた謎がひとつの事実に集結するラストは、鳥肌なしでは読めないだろう。読後感も抜群の本作。

新年の忙しない折だからこそ、気軽な読書に没頭したい人におすすめの一冊だ。