「ポロリもあるよ!」ならぬ「ポロリしかないよ!」。オス猫限定のポロリ写真集、芳澤ルミ子の『にゃんたま』

文芸・カルチャー

2016/6/19


『にゃんたま』(芳澤ルミ子/自由国民社)

なぜ「たま」なのか。そもそも「たま」のルーツを探ってみると、「魂(たま)」と同じ語源であるとされるものの、「たま」そのものの語源ははっきりとはしません。球形の美しい石が「たま」と呼ばれたのは、そこに霊魂、すなわち「たま」の入るべきところだから、という折口信夫の説を採れば、ああ、アソコには大事なものがあるんだなぁとしみじみと思われるのも、筋が通った話かもしれません。

ちなみに「たまたま」となると、またルーツが違ってきます。辞書をひもときますと、「乏し(ともし)」と同じ語幹の「とも」、すなわち「(頻度が)少ない(乏しい)」ことをいう言葉を重ねた「ともとも」から「たまたま」へと変化したとされています。「すげー稀にしかない」から偶然におこることを「たまたま」といったわけですね。「たまたま」と「たま」を2つ重ねるところに、そこはかとない趣を感じられます。ふんわりとしてかわらしいですよね。

そういえば「ふぐり」というのも、語源をたどるとどうやら「脹る(ふくる)」に行き着くようです。水から揚がるとぷっくり膨らむ「ふぐ」もきっと、その名称のルーツは同じなんではないかと思います。「脹る」は単純に膨れるだけではなく、辞書によれば毛がそそけだって膨らんだようになる意の「ふくだむ」と同根の語なんだそうです。ふくるもの、ふくだむものだから「ふぐり」。ピッタリですね。

「たま」「たまたま」「ふぐり」と、その言葉のルーツを解説して参りましたが、このほど『現代用語の基礎知識』でおなじみの自由国民社から出版された、猫の「たま」だけを集めに集めてしまった写真集『にゃんたま』を読むときにはきっと役立つかと思います。かわいらしく、ふっくらとしたポロリ写真だけで構成され、文字数は「おわりに」に記されたわずか100文字あまりという力技を可能にしたのは、写真の「たまたま」の吸引力。「ふぐり」から目をそらせない人類の脆弱性をついた1冊であります。

文=猫ジャーナル