この怖さ、まさにトラウマ級! 京極マジックが炸裂した怪談えほん『いるの いないの』

文芸・カルチャー

更新日:2021/9/7

『いるの いないの』(京極夏彦:作・町田尚子:絵・東雅夫:編/岩崎書店)

「『怪談』を通じて、想像力を養い、強い心を育んでほしい」とのコンセプトのもと、当代一流の作家たちが怪談を書き下ろした、岩崎書店の人気シリーズ「怪談えほん」。

 今日まで3期10冊(第3期は現在刊行中)が刊行された同シリーズの中でも、トップクラスに恐ろしいと評判なのが京極夏彦『いるの いないの』(京極夏彦:作・町田尚子:絵・東雅夫:編/岩崎書店)である。

 たとえば書評系サイトや、オンライン書店のユーザーレビューを読んでみてほしい。そこには「大人が読んでも怖い」「トラウマ級」といった、悲鳴にも似た感想が多数寄せられているはずだ。しかしこの絵本、どこがそんなに怖いのだろうか?

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 ストーリーはいたってシンプルである。主人公の「ぼく」はおばあさんの家で暮らすことになった(詳しい事情は語られていないが、おそらく両親と離れ、都会からひとりでやってきたのだろう)。田舎にあるおばあさんの家はとても古く、床は木か畳でできている。高い天井には梁がわたっていて、その上には窓からの明かりも届かない暗がりが広がっていた。

「うえのほうは くらいねえ」
 ぼくがそう言うと、おばあさんはこう答える。
「でも ほら したのほうは あかるいよ」

 しかしぼくはその暗がりが気になってしかたがない。ある日天井の上を眺めていたぼくは、そこに思いがけないものを見てしまう…。