整形したらハッピーエンド、じゃなかった。結婚したい“モンスター”化した漫画家の話

恋愛・結婚

2020/2/28

『結婚したいモンスターになった私の話』(愛内あいる/講談社)

 鏡を見るたびに、ついつい呟いてしまう。「私も可愛かったら、人生もっと楽しかったはずなのに」。

 そんな嘆きを一度でもした人に、ぜひ読んでほしい1冊の漫画がある。愛内あいる著『結婚したいモンスターになった私の話』(講談社)である。

 彼女は以前、自身の整形レポでもある漫画『自分の顔が嫌すぎて、整形に行った話』(KADOKAWA)でも話題を呼んだ。幼い頃から強い容姿コンプレックスを抱いていた彼女は、整形をすることを決心する。彼女は埋没法により、一重から二重へと整形をした。

 そんな彼女の最新作である本書は、整形をしたあとの日々について描かれたエッセイ漫画である。自分の納得のいく容姿を手に入れたのだから、さぞ幸せで楽しい日常が描かれるのだろう、と思いきや、タイトルからして雲行きがあやしい。読み始めてみると、整形をしたあとの彼女の生々しい実感が描かれている。

 というのも、それまでは容姿のことで頭がいっぱいだった彼女は、その後の人生のことがまるで見えていなかったのだ。二重になったあとに見えた世界では、当然のように結婚をして所帯をもつ人たちや、婚活に勤しむ人たちが存在している。自分はずいぶんと遅れていたのだと感じた著者は、慌てるように婚活のスタートラインに立つのだった。

 そして、とある合コンで運命的な出会いをする。彼の名前は、秋ちゃん。第一印象は、ちょっと変わった人。6歳年上の自営業の彼は、今までの彼氏と違って一緒にいても気が楽で心地がいい。発想が柔軟な彼は、固定観念に縛られがちな彼女にとって、精神的にも大きな救いとなる存在だった。

 そんな素敵な人と出会い、付き合い、全てが順風満帆のように思われたが、そう簡単にはいかないものである。30歳までに結婚したいという目標があった彼女が、秋ちゃんに結婚の話を振ると、「結婚する気がないんだ」とはっきりと言われてしまうのだ。

 そして、そこから彼女の“モンスター”化が始まる。

 結婚する気がないと言われても、秋ちゃんと別れる気もない彼女は、あの手この手を使って彼に結婚願望を抱かせようと試みる。友達夫婦に代わりに聞いてもらったり、結婚情報誌をさりげなく置いてみたり、わざとらしくウェディングドレスを見たり、甲斐甲斐しくお弁当を作ったり…さまざまな努力の末に、彼女はどんどん自分を追い込み、そして、越えてはいけない一線を越えてしまう。

 彼女がついた、とある“嘘”により、とうとう秋ちゃんから別れを言い渡される。

 整形をして可愛くなっても、彼女の性格の根本的な「自信のなさ」は直っていなかった。容姿のコンプレックスがなくなったことで、こんどは彼氏へと執着の矛先が向かってしまった。そして自らの手で大切な関係を壊してしまった。

 …といっても、この作品で最も大切な部分は、そこから彼女がどう回復したのか、という部分である。秋ちゃんと別れたあと、自暴自棄になる彼女に投げかけられた友人の言葉、そして彼女の大きな気づき。

 何かに依存せず、自分自身の足で立って生きていくために必要なもの。それがこの作品を読むとわかる。容姿のコンプレックスを直すこともひとつの方法だが、決してそれがゴールではない。その後も続く人生について、赤裸々に描かれたエッセイだ。

文=園田もなか