【正しい判断を】新型コロナウイルスから自分と家族を守るには? 岩田健太郎教授による「感染不安への処方箋」

暮らし

公開日:2020/4/15

『新型コロナウイルスの真実』(岩田健太郎/KKベストセラーズ)

 新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗り込み、その内部の詳細をレポートした動画で話題となった、神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授の岩田健太郎教授が、『新型コロナウイルスの真実』(KKベストセラーズ)を緊急出版した。

 2020年1月に日本国内で初の感染者が確認されてから3ヶ月あまり。世界中で感染が拡大し、4月12日時点での日本国内の感染者は7000人(クルーズ船を除く)を超え、いまだ終息する気配が一向に見えない。

 4月7日には政府から東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県に緊急事態宣言が発出されるなど、これまで経験したことのない非常事態になっている。各メディアやインターネット上には真偽不明の情報やデマが数多く含まれた大量の情報が飛び交い、その内容が日々凄まじい勢いでアップデートされていく中、何を信じたらいいのか、どう行動したら良いのか、本当の情報はどこにあるのか、この先いったいどうなってしまうのか……家にじっとこもることでストレスを抱え、考えることに疲れ切ってしまっている方も多いことと思う。

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 本書には、そんな「情報に振り回されてしまっているすべての方」にお読みいただきたい内容がぎっしりと詰まっている。

 岩田教授は本書の冒頭で「新型コロナウイルスから自分を守るために一番大事なものは、情報」であり、新型コロナウイルスについて自分で判断するために必要な情報や知識を得るには「感染症の原則」を押さえることが重要だと書いている。その言葉通り、第一章ではコロナウイルスとは何なのか、PCR検査について、若者がウイルスを広げているのは本当なのかなどを取り上げて解説している。続く第二章では感染対策には何が有効なのか、なぜ手指の消毒が必要なのか、マスクが役に立つのはどんなときかなど、正しく判断するための情報が整理されている。第一章、第二章は、危惧される医療崩壊を防ぐため必読のパートだ。

 第三章は岩田教授がダイヤモンド・プリンセスに乗り込んだ顛末がまとめられているのだが、第一章、第二章の内容を押さえた上で読むと、船内で起こっていたあまりにお粗末な対策に唖然としてしまう。岩田教授は「ダイヤモンド・プリンセスの中のオペレーションでは、誰が指示を出しているのか、誰が意思決定をするのかが、結局最後まで不透明なまま」「みんな裏で決めていて、意思決定のプロセスが分からない。どこまでが政治的な議論で、どこからが科学的な議論なのかも分からない。何を目的にした意思決定なのかすら公表されない」と書いている。現在日本のあちこちで起きている様々な対策や対応を巡る混乱と、根は同じなのだろう。

 第四章では日本政府の対策、日本社会のコロナウイルスとの向き合い方の良い点、悪い点を挙げ、改善方法が提示される(岩田教授は「ダイヤモンド・プリンセスでの対応を除けば、日本政府のコロナウイルス対策は概ね適切」と考えているそうだ)。また岩田教授が信頼している情報源も掲載されているので、ぜひ本書で確認してもらいたい。

 そして第四章、第五章では、ウイルスの蔓延が図らずも現代日本が抱えている構造的欠陥や危機に脆弱な体質をあぶり出していることも指摘。本書は全体を通じて、よりよい社会にするための様々な提言も盛り込まれているのも特徴だ。未曾有の事態だからこそ、慌てず騒がず、事実をきちんと見極める冷静な目を持つことの大切さを知り、今改めるべきことは何か、そして終息後にどんな社会を目指したらいいのか、現時点での情報がまとまっている本書を読み、じっくり考えてみてほしい。

 またこのレビューでは本の内容の一部を取り上げて紹介することは避けた。情報をつまみ食いするだけでは、本書で岩田教授が言わんとすること、新型コロナウイルスの真実が伝わらないからである。頭から最後のページまで読み通して初めて意図が伝わる本なので、ぜひご一読いただきたい。

文=成田全(ナリタタモツ)

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