大反響!『離婚してもいいですか? 翔子の場合』作者・野原広子さんインタビュー。悩める女性へのメッセージも

マンガ

更新日:2020/4/14

■「とにかく笑って丸くおさめる」翔子みたいな人はけっこう多い

──主人公の翔子のキャラクターについてはどうですか? 正直ちょっとイライラさせられた部分もあったのですが……!

野原:「はっきりすればいいじゃん!」って思いますよね(笑)。私も、みなさんよくついてきてくださってるなって思ってました。

 でもすべてを丸くおさめるために自分の気持ちを殺してニコニコしてる人、けっこう多いんじゃないかなと。「女は何が何でも家庭を守らなきゃいけない」っていう刷り込みもあると思うので。

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──とはいえ、夫が翔子のことを高校の同級生の室井さんと比較して「おまえはくだらないな」と怒鳴ったときは「さすがに怒るべきでは……?」と。

野原:「よその女と比べる」っていうのがよくあるんですよ。ほら男の人って、女友だちの写真を見せると「この子が一番かわいい」とかって言うでしょ(笑)。

──たしかに……!

野原:しかも翔子は、幼いころ怒りっぽい父親の機嫌を損ねないためにいい子を演じていた習慣を大人になっても引きずっていて。

 だから夫にひどい言動をされても、ニコニコ笑って耐えている。でも、絶対どこかで無理が出てくるんですよね。

──お父さんとのエピソードはすごく納得感がありました。はじめはイライラさせられていた翔子の性格も、その理由を知って許せるようになったというか。

野原:この話を描くにあたって、離婚を考えている方や実際に離婚した方のブログをいろいろ読ませていただいたんですね。

 そうしたら「お父さんがお母さんに厳しく当たっていた」とか「お兄ちゃんの家庭内暴力がひどかった」とか、自分が生まれ育った家庭に不安定な雰囲気があった方がけっこういらして。

 もしかしたら、そこで培われた性格が「夫に言いたいことを言えない」「何をされても我慢してしまう」ことに影響しているのかもしれないなと思ったんです。

──翔子は心療内科の扉を叩いたことで「幼いころから、自分を抑えてニコニコするように訓練されてきた」と気付きます。ここから一気に物語が動き出しましたよね。

野原:そうですね。翔子は自分の限界を自覚したことで離婚に向けて一歩踏み出します。それが専業主婦をやめて介護の仕事を始めることでした。やっぱり「離婚したくてもできない」1番の原因は経済的な問題なんですよね。

松田:はじめは保険セールスレディのような歩合制の仕事を想定してたんです。それで翔子が意外な才能を発揮して夫の収入を抜いちゃうっていう。でも物語が進むにつれて、翔子はそういうキャラクターじゃないなと。そのとき野原さんから「介護」というキーワードが出てきて。ものすごくしっくりきたので、そのまま採用させていただきました。

●プロフィール
野原広子:
神奈川生まれ。コミックエッセイプチ大賞受賞。出産を機に、フリーのイラストレーターとして活躍。山登りが好き。
著作に『娘が学校に行きません』『ママ、今日からパートに出ます!』『離婚してもいいですか?』(KADOKAWA)など。

ブログ:いまさら娘に伝えたい100のこと