SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第5回「この気持ちフロム塩化ビニール」

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公開日:2021/11/27

 本能的なところで人と違っているということを恐れてしまったのだろう。どうして、「どうしよう」なのかはわからないが私は、人形で遊びたいという気持ちを滅する方法を日々考え始めた。しかし、一度頭を回し出すとどうにもやはり、一番お気に入りの透明の人形に登場シーンの極めて少ない配役を当てるという考えもしなかった奇策などが思いついてしまい、鼻息を荒くするような日々を長らく繰り返した。まア、終わりが来ることなど想像出来ない程に没入し、葛藤に葛藤を重ねたこの事案だが、きちんと終わりがきた。それは具体的にいつと明記できないほど華麗に、心配事項からフェードアウトしていった。

 あの日から、というきっかけもなく自然に。いつが最後なのかもわからないが、なんの変哲もないとある日を最後に、二度と遊ばなくなったということになる。

 心配事は一つ減ったし、無理矢理に断たねばならなかったという苦しい時間もなかった。ただ、やはり気持ちと心は変わっていってしまうものなのだなア、という一抹の寂しさを覚えてしまった。

 心配になるくらい好きだったのに、不安になるくらい夢中だったのに。何もしなければ薄れて掠れて自分からいなくなってしまうのだ。

 そもそも消えてしまうような気持ちなら、とも思うがこの先、一度でも伝えて、一度でも向き合って、一度でも愛でたのであれば、そんな尊い時間は長く守りたいと思うに至った。

 かつて宝物だった塩化ビニールの人形たちは多様にわたる配役を毎日きちんとこなし、いつの間にか私の前からいなくなった。でもきっとそれは数十年後、長く続く気持ちの尊さを私に説くために必要な別れを、彼ら自身が選んでくれたとしか思えない。それか母ちゃんがサラッと捨てたか。

 永続する気持ちがあるのか否か。きっとノーだし、多分イエスだ。

 ただどうやら曖昧な回答しか出てこないであろうこの類の問いには、永続性があることは間違いなさそうだ。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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