ドリュー・バリモアは“愛されるデブ”、コン・リーは“情念フルスロットル”!? 『イオナ』の澤井健が女優をメッタ切り!

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公開日:2013/10/23

 あの澤井先生が帰ってきた! え? あの伝説的マンガ『イオナ』(小学館)を描いた澤井健先生だよ!!

 念のため、解説しよう。『イオナ』は、小学生男子が超セクシーな女教師との恋に翻弄されるギャグマンガ。ほかにも、『サーフサイドハイスクール』(小学館)、『華族な人々』(小学館)でも知られる澤井先生は、マンガ界を静かに退いたのち、映画評論家・イラストレーターとして活動している。

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 9月に発売された『スターすっぱだか列伝 《女優編》 2006-2012』(洋泉社)は、『映画秘宝』(洋泉社)での連載をまとめたもの。ハリウッド女優を中心に、56人の映画スターをイラストとともに紹介しながら、文字通り「すっぱだか」にしている。女優論であっても、澤井節は健在。美しい女優たちのイラストもいいが、ほめているのかディスっているのかわからない、愛情たっぷりな書きっぷりがたまらない。

 まず、女優たちに冠されたキャッチフレーズがひどい。1人目のアンジェリーナ・ジョリーからして「Gの強い女」である。Gとは顔圧(顔の持つ圧力)のことで、「木の実ナナや萩原流行に例えればわかりやすい」「ステルス級に顔圧の強い顔」だというのだ。ちなみに、本書での彼女の愛称は「ジョリ姐」で、この後2回登場する。

 私生活や撮影裏話、ゴシップも、女優の魅力を語るエッセンスになる。澤井先生は、グウィネス・パルトロウの迷言(人気ミュージシャンと付き合う自分をオノ・ヨーコに例えるなど)を列挙してツッコミを入れまくったり、シャーリーズ・セロンが上沼恵美子に似ている、森三中の村上知子が痩せたらスカーレット・ヨハンソンと同じ体型になりそうなどと指摘したり、ジュリアン・ムーアが演じる役どころを「上品ぶったヤリマン」カテゴリーに括ったりとやりたい放題だ。

 しかし、これらのエピソードは、元マンガ家らしい優れたビジュアル分析に深みを与え、不思議と女優たちの輪郭をくっきり浮かび上がらせる。人間の内面は外面に反映し、演技にも影響するのだと納得させられるのだ。当然、映画の観え方も変わってくる。…というわけで、「秋の夜長に本書とともに観直したい映画」を勝手にセレクトしてみた。

●『スペシャリスト』(1994年)
「“全身で力むこと”を熱演だと勘違いしているフシがあるシャロン・ストーンが、四六時中見得を切り続けるのが本作。共演者のシルヴェスター・スタローンの斜に構えた演技とのコントラストで、最後まで爆笑必至。

●『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)
“おきゃんなカリフォルニアガール”キャメロン・ディアス、“愛されるデブ”ドリュー・バリモア、“アメリカ人が思うまんまの東洋人”ルーシー・リューが一気に楽しめる。リューの「私はいい女」演技がMAX状態。

●『SAYURI』(2005年)
“情念フルスロットル”ことコン・リーのハリウッド進出作品。彼女の魅力は「感情が高ぶる場面の鬼気迫る形相」で、深い情念を表現する「泣き笑いと乱れ髪は、今や『待ってました!』の掛け声がふさわしい名人芸」だそう。

●『ブラック・スワン』(2010年)
底意地の悪いダーレン・アロノフスキー監督が撮った、「レオン」のイメージから脱却しようともがくナタリー・ポートマンのカリカチュア。「コーチやライバルに性的な話題を振られたときの、うますぎるぶりっ子演技に注目」。

●『ラム・ダイアリー』(2011年)
新進女優アンバー・ハードが、“主役をかすませる個性”を存分なく発揮した出世作。ちなみに、共演したジョニー・デップをスクリーン上だけでなくプライベートでも食ってしまい、すぐにポイ捨てしたことでも話題に。

 映画評論の堅苦しいイメージは一切ない本作は、きっと映画の新しい楽しみ方を教えてくれるはず。古くからのファンは、描き下ろしマンガ「奥様はモニカ・ベルッチ」も必見だ!

文=有馬ゆえ