Googleも研修で実践! 「瞑想」「マインドフルネス」の具体的な効果とメリットとは?【保存版】

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更新日:2022/5/11

 Google、Facebook、Apple、インテル、ゴールドマン・サックス、マッキンゼー…。今、多くの一流企業が瞑想を社員研修に採用している。特にGoogleでは、瞑想のうちマインドフルネスを「Serch inside Yourself(SIY)」と名付けた研修の中で実践。最新の脳科学に基づいて開発されたリーダーシップ・パフォーマンス向上のプログラムとして多くの企業から注目を集めている。一体、瞑想やマインドフルネスとはどのようなものなのか。興味はありつつも、よくそのやり方がわからないという人も多いことだろう。そこで本記事では、初心者の方にもわかりやすく瞑想やマインドフルネスについて解説する。日常生活に簡単に取り入れられるおすすめのやり方や音楽、アプリも紹介するので、少しでも興味がある人はぜひこの記事を参考にしてみてほしい。

●瞑想とは?【意味】

『始めよう。瞑想:15分でできるココロとアタマのストレッチ』(宝彩有菜/光文社)
『始めよう。瞑想:15分でできるココロとアタマのストレッチ』(宝彩有菜/光文社)

 そもそも瞑想とはどういうものなのか。瞑想の仕方が詳しく解説されている、瞑想家・宝彩有菜氏著『始めよう。瞑想:15分でできるココロとアタマのストレッチ』(光文社)によれば、瞑想は元々は仏教の「心の修行」の系譜に連なるものだという。広辞苑には「目を閉じて静かに考えること。現前の境界を忘れて想像をめぐらすこと」との記載があるが、むしろ瞑想で実践するのはその逆。何も考えないようにすること、無心になること、無我になることを目指すものだそうだ。瞑想を上手に実践すれば、脳はレム睡眠中と同じ働きをするという。瞑想は働きすぎの心身に休息を与えるための手段なのだ。

●マインドフルネスとは?

『「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強く、やわらかくする「マインドフルネス」入門』(ジャン・チョーズン・ベイズ:著、高橋由紀子:訳、石川善樹:監修/日本実業出版社)
『「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強く、やわらかくする「マインドフルネス」入門』(ジャン・チョーズン・ベイズ:著、高橋由紀子:訳、石川善樹:監修/日本実業出版社)

 近年マインドフルネスが注目されているが、これは瞑想の種類のひとつだ。小児科医で瞑想講師のジャン・チョーズン・ベイズ氏著『「今、ここ」に意識を集中する練習』(日本実業出版社)によれば、マインドフルネスは、マサチューセッツ大学医学大学院教授のジョン・カバット・ジンが開発した「マインドフルネス低減法」という科学的な研究がベースになっているものだという。禅の思想などの宗教色を分離したそれは一言でいえば、「気づき」を得ること。自分の体や頭、心のなか、さらには身の回りに起きていることに意識を向け、物事の本当の姿をみてみること。批判や判断の加わらない「気づき」を得るのがマインドフルネスであり、「気づきのトレーニング」とも呼ばれている。

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●脳のしくみと、瞑想・マインドフルネス

『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』(ルビー・ワックス:著、上原裕美子:訳/双葉社)
『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』(ルビー・ワックス:著、上原裕美子:訳/双葉社)

 では、瞑想・マインドフルネスは、私たちの心身にどのような効果を与えるのだろうか。オックスフォード大学でマインドフルネス認知療法を学んだ人気コメディエンヌ・ルビー・ワックス氏による『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』(上原裕美子:訳/双葉社)には、その期待できる効果が脳科学をもとに解説されている。

 そもそも人間の脳には扁桃体というアーモンド形の神経細胞の集まりがあり、それは不安や恐怖を感じた時に、体中に指令を出す「緊急ボタン」のような役割を担っている。扁桃体が緊急事態と判断すると、神経伝達物質が放出され、私たちの体は心拍と血圧が上昇し、免疫系が抑制され、扁桃体に非常事態宣言がフィードバックされる。このサイクルが繰り返されると、有害なホルモンがどんどん生成され、不安が頭の中をぐるぐる回るようになり、ストレスから逃れられなくなってしまう。瞑想・マインドフルネスはこの扁桃体の支配から抜け出すためのもの。瞑想・マインドフルネスを実践すると、不安・恐怖の連鎖を抑制する脳の背外側前頭前皮質を鍛えることができ、自分を正しくコントロールできるようになるのだそうだ。

〈著者プロフィール〉
ルビー・ワックス/1953年アメリカ生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で心理学と演劇を学び、中退し渡英。ロイヤルシェイクスピア劇団で舞台女優として活躍したのち、テレビやラジオで多彩な才能を発揮する。うつ病を経験したことをきっかけに、オックスフォード大学でマインドフルネス認知療法を学び、修士号を取得した。現在は、エンターテイナーとしての活動に加えて、メンタルヘルスに関する執筆・講演活動、企業向けのリーダーシップおよびマネジメント・ワークショップなどを精力的に行なっている。サリー大学メンタルヘルス・ナーシングコースの客員教授。

※以降すべてプロフィールは公式より引用

●集中力・創造力アップだけではない! 瞑想・マインドフルネスの効果・メリット

『1分間瞑想法』(吉田昌生/フォレスト出版)
『1分間瞑想法』(吉田昌生/フォレスト出版)

 瞑想やマインドフルネスには日々の生活で疲弊した私たちの心身をリフレッシュするたくさんの効果がある。たとえば、ヨガ・瞑想講師の吉田昌生氏による『1分間瞑想法』(フォレスト出版)では、以下のような効果が紹介されている。

・イライラ、ムカムカといった感情をコントロールできる
・ストレスや疲れが軽減される
・メンタルが強くなる
・思考が整理され、頭が冴える
・集中力が高まる
・考えるスピードやアイデアの質が高まる
・自律神経が整い、睡眠の質があがる

『脳を鍛える茂木式マインドフルネス』(茂木健一郎/世界文化社)
『脳を鍛える茂木式マインドフルネス』(茂木健一郎/世界文化社)

 さらに、脳科学者の茂木健一郎氏は『脳を鍛える茂木式マインドフルネス』(世界文化社)の中で、本格的な瞑想によって、失われた海馬が回復し、遺伝子さえ変わったという報告を紹介している。瞑想やマインドフルネスを実践すれば、脳と心は、何歳からでも成長できるのだ。

〈著者プロフィール〉
吉田昌生(よしだ・まさお)/ヨガ・瞑想講師。YOGA BEING 真鶴代表。日本ヨーガ瞑想協会 綿本ヨーガスタジオ講師。20代前半で精神的な不調和を経験したのをきっかけに、理想的な心と身体のあり方を瞑想、ヨガ、心理学などを通して研究する。インドをはじめ35カ国以上を巡り、様々な文化に触れながら各地の瞑想やヨガを実践する。現在、神奈川、東京を中心に、ワークショップやセミナー、瞑想・ヨガクラスを指導。ヴィンヤサヨガ、ラージャヨガ、ハタヨガ、陰ヨガなど、アクティブなタイプのYOGAから静かな動きの少ないYOGAまで、すべての姿勢、動作、呼吸を瞑想として捉えた「マインドフルネス」をベースにしたヨガクラスを指導している。

著書に『1日10分で自分を浄化する方法 マインドフルネス瞑想入門』『外資系エリートが実践する100%集中できてストレスをためない脳の鍛え方』(ともにWAVE出版)などがある。

●悪い生活習慣を改善!タバコ・浪費・スマホなど依存症をやめられる効果も?

『あなたの脳は変えられる「やめられない!」の神経ループから抜け出す方法』(ジャドソン・ブルワー:著、久賀谷 亮:監訳・解説、岩坂 彰:訳/ダイヤモンド社)
『あなたの脳は変えられる「やめられない!」の神経ループから抜け出す方法』(ジャドソン・ブルワー:著、久賀谷 亮:監訳・解説、岩坂 彰:訳/ダイヤモンド社)

 瞑想・マインドフルネスには食欲や物欲などの欲求をコントロールする効果もある。だから、ダイエット効果はもちろんのこと、タバコ・浪費・スマホなどの依存症や悪癖からの脱却、生活習慣の改善も期待できるらしい。『あなたの脳は変えられる「やめられない!」の神経ループから抜け出す方法』(ジャドソン・ブルワー:著、久賀谷 亮:監訳・解説、岩坂 彰:訳/ダイヤモンド社)では、精神科医でマサチューセッツ大学医学部准教授でもあるジャドソン・ブルワー氏がその効果に触れている。たとえば、一般的な認知行動療法による禁煙法に比べ、著者が提案するマインドフルネスを使った禁煙法は、多くの被験者に有効だった。五感を使って「タバコを吸っている自分」を観察させると、「臭いは腐ったチーズのようで、化学薬品のようにまずかった」ことに気づき、「吸わないでいるときの自分」を観察させると、「本当は吸わないでもいられる自分」に気づく。これらの「気づき」の連鎖が、被験者たちを無理なく自然にタバコからの離脱へと導いたのだ。私たちの生活には、やめたくてもやめられないたくさんの習慣があるもの。長年連れ添った悪癖とのお別れにマインドフルネスを利用してみてみるのも手かもしれない。

〈著者プロフィール〉
ジャドソン・ブルワー(Judson Brewer, M.D. / Ph.D.)/マサチューセッツ大学医学部准教授。同大マインドフルネス・センター研究責任者。瞑想が脳に及ぼす影響を研究する「マインドフルネスの脳科学」の世界的な第一人者。とくにマインドフルネス瞑想に基づいた依存治療や自己管理の領域でのエキスパート。自身も20年以上の瞑想経験を持つ。

●特に現代女性におすすめ

『幸せになりたい女性のためのマインドフルネス 自分らしく輝く8週間のプログラム』(ヴィディヤマラ・バーチ、クレア・アーヴィン:著、佐渡充洋:監訳、浦谷計子:訳/創元社)
『幸せになりたい女性のためのマインドフルネス 自分らしく輝く8週間のプログラム』(ヴィディヤマラ・バーチ、クレア・アーヴィン:著、佐渡充洋:監訳、浦谷計子:訳/創元社)

 また、『幸せになりたい女性のためのマインドフルネス 自分らしく輝く8週間のプログラム』(ヴィディヤマラ・バーチ、クレア・アーヴィン:著、佐渡充洋:監訳、浦谷計子:訳/創元社)では、瞑想・マインドフルネスを、特に現代女性が実践すべきものとして紹介している。本書によれば、女性はホルモン変動や社会的な立場の不安定さ、日常生活における人間関係の多様性から、うつ病、不安障害、心理的苦痛、性的暴力やDV、薬物障害などのリスクが男性よりも高い。これらの問題を回避するには他者や過酷な経験に振り回されないだけの自主性(=自分軸)を育てることが有効だという。その自主性を育む方法として効果があるのがマインドフルネス。マインドフルネスは自己肯定感を高め、自らの自信を高める効果も期待できるのだ。

〈著者プロフィール〉
ヴィディヤマラ・バーチ(Vidyamala Burch)/ニュージーランド生まれ。10代で脊髄を損傷。療養中に瞑想と出会い、心身の苦痛の緩和にマインドフルネスが効果的であることを直感する。イギリスに移住後、痛みや病気を抱える人びと向けにマインドフルネス教育を開始。2004年に設立したBreathworksは現在25か国で活動を展開するまでに成長している。主な著書にMindfulness for Health(共著、邦訳『からだの痛みを和らげるマインドフルネス』創元社)、Living Well with Pain and Illness がある。

●瞑想・マインドフルネスにおすすめの時間・タイミングは?(朝・昼・夜・寝る前)

 では、瞑想・マインドフルネスはどのような時間・タイミングに行うのがおすすめなのか。瞑想の仕方といえば、元々、仏教の修行のひとつだったことを思うと、長時間座りながら行うイメージ。「いつどういうタイミングで生活に取り入れたらいいのか」と不安に思う人も多いかもしれない。だが、実は、瞑想・マインドフルネスは何も特別なものではない。日々の生活の中には、瞑想やマインドフルネスを実践できる瞬間がたくさん潜んでいるのだ。

 たとえば、瞑想やマインドフルネスを朝行えば、1日を気持ちよくスタートさせることができるし、昼に行えば、脳に休息を与えられる。夜に行ってほっと一息つくのもいいし、寝る前、寝ながら行っても、リラックス効果は抜群だ。このように、瞑想・マインドフルネスは、時間・タイミングを問わずに効果がある。大切なのは、それを習慣づけること。以降では、朝、昼、夜、寝る前など、さまざまな時間・タイミングで実践できる瞑想・マインドフルネスのやり方を紹介するので、自分の生活スタイルにあったものを見つけてみてほしい。

●瞑想・マインドフルネスのやり方①――たった1分でOK「1分間瞑想法」

『1分間瞑想法』(吉田昌生/フォレスト出版)
『1分間瞑想法』(吉田昌生/フォレスト出版)

 たとえば、『1分間瞑想法』(フォレスト出版)では、ヨガ・瞑想講師の吉田昌生氏がわずか1分間でできる瞑想の仕方を教えてくれる。その基本は以下の通りだ。

■1分間瞑想法の基本

①瞑想で大切なのは姿勢。まずは背筋を伸ばして座ろう。
(胡座でも正座でも椅子に座っていてもOK)
②つづいて呼吸を整えてみよう。息は鼻から吸って鼻から吐くようにしよう。
③呼吸の感覚に意識を向けてみよう。お腹がふくらんだり、縮んだりするのを観察してみよう。

 瞑想・マインドフルネスで活性化されるのは、脳の前頭前皮質。自分や他人の思考や感情に気づき、理解する能力を司る部位だ。だから、瞑想・マインドフルネスを実践すると、自分の感情をコントロールしやすくなるだけでなく、他人の感情に共感する力が高まり、よりよい人間関係を築くことができるようになるという。大切なのは1回ずつの長さではなく、継続すること。わずか1分間でも、息を整え、毎日自分の身体や思考を観察することで、自分の思考・感情に気づきを得ることができる。

●瞑想・マインドフルネスのやり方②――歩きながらできる「歩行瞑想法」

『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』(メンタリストDaiGo/PHP研究所)
『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』(メンタリストDaiGo/PHP研究所)

「じっと座っているのは苦手…」という人は、メンタリスト・DaiGo氏が『自分を操り、不安をなくす 究極のマインドフルネス』(メンタリストDaiGo/PHP研究所)の中で紹介している「歩行瞑想法」に挑戦してみるとよいかもしれない。

 私たちは日々たくさんのことを同時にこなしているが、マルチタスクは、脳のワーキングメモリーに強いダメージを与える。この状態から回復するためには、意図的にひとつの作業に集中する時間を作り出すことが大切。そういう時間を作ることで、漠然とした不安や焦りが解消できるのだという。DaiGo氏は本書でいくつかの方法を紹介しているが、特に、オススメしているのが、歩くことに集中する「歩行瞑想」だ。

■歩行瞑想法

①歩く時に、足の裏の感覚に意識を集中させる。「右足がついた、離れた、左足がついた、離れた」などと意識する。
②足の裏の感覚を意識しながら20分くらい歩いてみる。

 歩行瞑想には何千年もの歴史があり、通常の瞑想と比べても何ら遜色のない効果があることが科学的にも証明されている。また、DaiGo氏は、歩行瞑想を日常に取り入れた結果、もちろんそれ以外の要因もあるだろうが、年収が上がったともいう。歩行瞑想は、集中力や記憶力アップだけでなく、メンタルをコントロールする能力を高める効果など、一石何鳥もの効果があるのだそうだ。

〈著者プロフィール〉
メンタリストDaiGo/慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒。人の心を作ることに興味を持ち、人工知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。イギリス発祥のメンタリズムを日本のメディアに初めて紹介し、日本唯一のメンタリストとしてTV番組に出演。その後、活動をビジネスやアカデミックな方向へ転換、企業のビジネスアドバイザーやプロダクト開発、作家、大学教授として活動。ビジネスや話術から、恋愛や子育てまで幅広いジャンルで人間心理をテーマにした著書が次々にヒット。

●瞑想・マインドフルネスのやり方③――朝、通勤時間を利用「広域周辺注視」

『人生の主導権を取り戻す 最強の「選択」』(オーブリー・マーカス:著、恒川正志:訳/東洋館出版社)
『人生の主導権を取り戻す 最強の「選択」』(オーブリー・マーカス:著、恒川正志:訳/東洋館出版社)

 瞑想・マインドフルネスは、朝の通勤時間を利用して行うことも可能だ。アメリカで急成長中、年商70億突破(※)のオニットのCEO、オーブリー・マーカス氏は著書『人生の主導権を取り戻す 最強の「選択」』(オーブリー・マーカス:著、恒川正志:訳/東洋館出版社)の中で、通勤時間というフラストレーションのたまる時間を、マインドフルネス実践のタイミングとして活用する方法を教えてくれる。特に彼は通勤時間を活用して「広域周辺注視」というマインドフルネスを実践しているそうだ。
(※)公式サイト表記

■広域周辺注視

①顔の筋肉に力が入らないように、できるだけ大きく目を開き、視野の中心に焦点を合わせず、ぼかした状態にする。
②頭の中だけで、視野の周辺で起きているすべてのことに意識を向ける。特定のものに焦点を合わせないまま、すべてに意識を向け、お腹でゆっくりと呼吸する。

 オーブリー・マーカス氏によれば、1万7000件を超える診療記録を対象とした研究で、マインドフルネスを実践した人は実践していない人と比べて病院でなんらかの手当てを受ける割合が43%も少なかったという。そんなマインドフルネスを朝の通勤時間という仕事前のタイミングに行うことは、仕事の効率を間違いなくアップさせるに違いないだろう。

〈著者プロフィール〉
オーブリー・マーカス(Aubrey Marcus)/型破りなフィットネスにとり憑かれ、実験による検証を繰り返すヒューマン・オプティマイザー。人間の能力を最大に高めることを使命とした、アメリカで急成長中の企業、Onnit(オニット)のCEOを務める。個人的に追求しているミッションは、「日常的に、身体、心、器官から全体として最大の効果を引き出すにはどうすればよいか」という問いに集約される。その問いに答えることで、トップのパフォーマー、多数の顧客、膨大な数のファンをOnnitに引き寄せている。テキサス州オースティン在住。

●瞑想・マインドフルネスのやり方④――夜、思考を整理「モンキーマインド解消法」

『世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる』(久賀谷亮/ダイヤモンド社)
『世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる』(久賀谷亮/ダイヤモンド社)

 夜寝ようとしても、頭の中をぐるぐるといろんな思考が彷徨って落ち着かない…。そんな人は、『世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる』(ダイヤモンド社)で、夜の思考のループから抜け出す方法を学んでみるとよいだろう。

 本書によれば、脳の消費エネルギーの60~80%は、意識的な活動をしていないアイドリング状態でも動き続ける脳回路(=デフォルト・モード・ネットワーク〈DMN〉)の働きが占めている。つまり、ぼーっとしていても、DMNが過剰に働く限り、脳はどんどん疲れていく一方。瞑想・マインドフルネスはそんな疲れた脳に休息を与えるための方法なのだ。特に頭の中にさまざまな雑念が渦巻いている「モンキーマインド」の状態では脳のエネルギーが膨大に浪費され、どんどん疲労が蓄積し、脳を休ませるはずの睡眠の質にも影響してしまう。そんな時は、まず雑念そのものに対する認知を変えてしまおう。大切なのは「考え」に対して傍観者であり続けること。人間はあたかも「考え」を自分自身のように思いがちだが、本来自分というものは容れ物にすぎないのだ。

■モンキーマインド解消法――思考を捨てる

①自分というプラットホームに、騒がしいサルたち(=考え)を乗せた電車が次々と入ってくるのをイメージしてみよう。その電車はしばらく停まるがそのうち去っていく。どんな雑多な種類の電車が入ってこようとプラットホームは変わらないというイメージを獲得する。
②「仕事がうまくいかず焦っている」などというように、自分の悩みをひとつの文章にしてみる。この考えがあまりにも何度も浮かんでくるのであれば、「もう十分!」と思考を頭の外に送り出す。電車が去っていくのをイメージする。

 繰り返しやってくる思考を言語化してみると、思考のループに陥りづらくなる。脳の整理は睡眠の質にも影響を及ぼすから、ぜひ夜、寝る前というタイミングに、寝ながら試してみてほしい。

●瞑想・マインドフルネスのやり方⑤――夜、寝る前に一息「3分間の呼吸エクササイズ」

『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』(上原裕美子:訳/双葉社)
『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』(上原裕美子:訳/双葉社)

 また、ルビー・ワックス氏も著書『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』(上原裕美子:訳/双葉社)の中で、夜、寝る前のマインドフルネスについて触れている。本書では、朝昼夜、それぞれの時間ごとのマインドフルネスの方法を紹介しているが、特に、夜、寝る前には「3分間の呼吸エクササイズ」を行うとよいのだそうだ。

■3分間の呼吸エクササイズ

①意識のフォーカスを大きく広げる。1分間、いいことも、悪いことも、みっともないことも、頭の中に浮かんでいることをそのまま受け止めて、それに思考を加えないままただ流していく。
②次に意識を呼吸に集中する。カメラをズームインするように、鼻、喉、胸、お腹を通る呼吸の流れを意識する。息を吸うと肺が広がり、吐くと縮まるのを1分間感じる。
③再び、最後の1分間で、意識のフォーカスを大きく広げる。呼吸が身体全体を満たしていくのを感じる。頭の先から、胴体を通って、足の先まで。吸って、吐いて、息の出入りを意識する。

 マインドフルネスには自律神経を整える働きがある。呼吸を整えることで、体の緊張状態がほぐれていき、人をリラックスさせる副交感神経が優位になっていく。夜寝る前に行えば、睡眠の質を改善する効果が期待できるに違いない。

●瞑想・マインドフルネスのやり方⑥――嗅ぐことで心をほぐす「香りマインドフルネス」

『プロカウンセラーが教える香りで気分を切り替える技術 香りマインドフルネス』(松尾祥子:著、東原和成:監修/翔泳社)
『プロカウンセラーが教える香りで気分を切り替える技術 香りマインドフルネス』(松尾祥子:著、東原和成:監修/翔泳社)

 さらに、家での休息法として、「香り」を瞑想・マインドフルネスに活用することもできる。香りを活かして心を整え、仕事や人間関係の問題に対処していこうと提唱しているのが『プロカウンセラーが教える香りで気分を切り替える技術 香りマインドフルネス』(松尾祥子:著、東原和成:監修/翔泳社)だ。

 私たちの脳にある大脳辺縁系は、気分や情動、記憶を司るが、嗅覚は、視覚や聴覚とは違い、ここにダイレクトに働きかける。嗅覚は意識に上らないまま大脳辺縁系に働きかけ、感情(情動)を引き起こし、人の行動に変化をもたらすのだ。たとえば、アメリカで行われた実験では、甘い匂いがするクッキーショップの近くで、人は親切な行動をとる傾向があった。このように「気分・認知・行動」は相互作用しているからこそ、香りで「気分」を変えられたら、感じ方・捉え方という「認知」が変わり、自然に「行動」も変わってくる。

「匂いを嗅ぐ」というと、自分の外部に意識を向けてくんくんと嗅ぐのが一般的だろう。だが、「香りマインドフルネス」では自分の内側に意識を向けて、匂いを嗅ぐ。その際、重要なのが呼吸と意識の使い方。取り組む時はまず、「香り腹式呼吸」を導入として行う。

香り腹式呼吸

 この時、香りがお腹に入ることをイメージしよう。そして、腹部へ意識が向くようになってきたら、基本の呼吸法にチャレンジしてみよう。

香り腹式呼吸

 意識を自分の内側に集中させることに慣れて、よい香りで気分の変化や身体の変化が容易に得られるようになってきたら、単にいい気分になるのではなく、自分がいま必要としている気分を感じられるような香りを探し、取り入れていくようにしよう。

香り腹式呼吸

 マインドフルネスは、第3世代の行動療法としても応用されており、精神的な不調の改善や自己成長など幅広い効果が期待できる。自分の内側に目を向けるため、注意機能が向上し、周囲に対して繊細な心配りをする能力も上がって、組織全体のパフォーマンスを上げることもできるといわれている。こうした効果は「香りマインドフルネス瞑想」でも同様。普段からアロマなどの「香り」に癒しを感じている人は、「香りマインドフルネス瞑想」を生活に取り入れてみるとよいだろう。

〈著者プロフィール〉
松尾祥子/カウンセラー、公認心理師、臨床心理士、アロマセラピスト。2008年CSPP/カリフォルニア臨床心理大学院臨床心理学修士修了。SAFARI代表。公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマセラピスト・アロマセラピーインストラクター、一般社団法人日本心理臨床学会、一般社団法人日本臨床心理士会、一般社団法人日本公認心理師協会、日本コミュニティ心理学会、日本ソマティック心理学協会会員。日本催眠学会評議員

●瞑想・マインドフルネスにおすすめの528Hzの音楽

『もやもやがスーッと消える 528Hz CDブック』(ACOON HIBINO:著、和合治久:監修/トランスワールドジャパン)
『もやもやがスーッと消える 528Hz CDブック』(ACOON HIBINO:著、和合治久:監修/トランスワールドジャパン)

 また、音楽を聴くことでも、瞑想・マインドフルネスの効果を得ることができる。瞑想・マインドフルネスは、さまざまな音楽で実践することができるが、特におすすめなのは、『もやもやが消え、集中力が増し、ぐっすり眠れる! 疲れた心を癒して、不調を改善する、528Hzの音を使ったCDブック』(ACOON HIBINO:著、和合治久:監修/トランスワールドジャパン)だ。本書の監修者であり、人の免疫力を上げる音楽療法の専門家である、埼玉医科大学短期大学の名誉教授・和合治久氏によれば、528Hzという周波数の音楽には人の心身を癒す効果があるという。周波数とは1秒の間で空気を振動させる回数のこと。通常の音楽では、国際基準として使われている「A(ラ)=440Hz」に基づいた調律がほとんどで、528Hzの音が含まれた曲は稀だそうだ。そこで、このCDブックでは、作曲家・ACOON HIBINO氏が制作した528Hzの周波数による音楽を収録。もやもやしがちな寝る前や、仕事の集中力が切れたタイミングで、528Hzの音楽を聴けば、その効果を強く実感できる。音楽を聴くだけという手軽なやり方で瞑想・マインドフルネスの効果を実感できるから、試してみるといいかもしれない。

●瞑想・マインドフルネスにおすすめのアプリ

 また、手軽にアプリで瞑想の仕方を学び、体験してみるというのも手だ。だが、世の中に溢れるアプリの多さに、「どれを使ったらいいのか」と迷う人も多いのではないだろうか。

 そんな人は、『瞑想のすすめ 心を空っぽにすれば、人生はうまくいく』(SBクリエイティブ)などの著書で知られる、相川圭子氏おすすめのアプリを使ってみるとよいかもしれない。相川氏は、インドではその名を知らない人はいないという史上初の女性ヒマラヤ大聖者、瞑想・ヨガの世界的指導者。2018年5月8日にTBS系列のトークバラエティ「マツコの知らない世界」に出演した際、相川氏は、おすすめの瞑想アプリとして「寝たまんまヨガ®~簡単瞑想~」を紹介している。

「寝たまんまヨガ®~簡単瞑想~」は、累計200万ダウンロードを記録した「最後まで聴けない」と話題の寝落ちアプリ。有名ヨガスタジオ「スタジオ・ヨギー」を運営しているヨギーが企画・制作したもので、その使い方は、夜、寝ながら聴くだけというからなんとも手軽だ。1時間の「寝たまんまヨガ(ヨガニドラー)」は、なんと4時間の睡眠に相当する休息効果があるのだという。簡単にヨガ&瞑想を実践できるから、このアプリを試してみるのもよさそうだ。

●うまくできない場合は? 瞑想・マインドフルネスのコツ

『1分間瞑想法』(フォレスト出版)
『1分間瞑想法』(フォレスト出版)

 ここまで、あらゆるタイミングで実践できる瞑想・マインドフルネスのやり方、音楽、アプリをご紹介してきた。すぐにでも試すことができるものばかりだから、まずはお好きな方法からぜひとも挑戦してみてほしい。だが、いざ実践してみると、「どうしても集中できない」「雑念が湧いてしまう」という人も多いことだろう。そんな人は、ヨガ・瞑想講師の吉田昌生氏著『1分間瞑想法』(フォレスト出版)の記載が大きなヒントになりそうだ。

 本書によれば、瞑想・マインドフルネスでは、無理に「無」になろうとしなくていいという。大切なのは、「気づく」こと。雑念が湧いても、それに気づいて、再び集中すればいいのだ。感覚に集中すること、集中が途切れたことに気づくこと。誰しも、この2つの間を行ったり来たりすることになる。いわば、瞑想・マインドフルネスは「脳の筋トレ」。注意がそれたら戻すということを繰り返すことによって脳が鍛えられていくのだ。

 瞑想・マインドフルネスには本当にたくさんの方法がある。自分にとって実践しやすいものを習慣づけることができれば、集中力や創造力アップのほか、さまざまな効果が期待できるに違いない。行うタイミングもやり方も自分次第。あなたも、この記事を参考に、瞑想・マインドフルネスを上手に生活に取り入れて、自分自身を見つめ直してみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

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