サンリオピューロランド出禁解除の『ぐでたま』 、デザイナーは新人だった! 大ヒットの理由

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

キャラクターはすべからく明るく元気で愛想よくあるべし、だなんて誰が決めた? カメラ目線でひたむきに頑張る必要、あるの? 何年かに一度、そんな類の気の抜けたキャラクターが世の中の話題をかっさらっているように思う。サンエックスから出ている「リラックマ」や「こげぱん」が代表的だ。そして昨年あたりからこの手のキャラクター枠で一躍人気を得ているのが、「ぐでたま」。『ぐでたまんが』(Amy/主婦と生活社)、『ぐでたまのまいにち。』(サンリオ/KADOKAWA 角川書店)など、キャラクターグッズのみならず、書籍も続々と新刊が出ている。

  • 『ぐでたまんが』
  • 『ぐでたまのまいにち。』

しかしこのぐでたま、なんとサンリオのキャラクターである。サンリオといえば、ハローキティにマイメロディといった清く正しい王道キャラクター街道を邁進していたはず。実際、サンリオとしてもこの系統のキャラクターを売り出すのは初の試みなのだという。一体、サンリオはどうしてしまったのか。ぐでたまの担当デザイナーであるサンリオのAmy(エイミー)さんに話を聞いてきた。なんと2012年入社の若手、ぐでたまを作った当時はまだ新人だったという。

サンリオなのに愛想がなくて「怒られるかな」と不安だった

Amy「一年半くらい前に、食べ物をモチーフにしたキャラクターを作って人気投票をする『食べキャラ総選挙~食うか食われるか真剣勝負~』という企画を開催したのですが、これにノミネートされた20のキャラクターのうちの一つがぐでたまだったんです。この企画のために、私を含めた弊社のデザイナーが100以上のキャラクターを作り、社内審査を経て20のキャラクターが総選挙に進出。一般投票と商品購入実績で順位を決めるんですが、でぐでたまは2位をいただくことができました。ちなみに1位はKIRIMIちゃん.。1位が約3万8千票、2位が約3万票、3位が約1万票だったので、僅差ではありました」

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――今までのサンリオさんのキャラクターのイメージからすると、ぐでたまがそもそも社内審査に通過したことがまず驚きです……(笑)

Amy「そうですよね、私もそう思います(笑)。何案か色々な方向性のキャラクターを作ったうちの1つだったんですけど、これが総選挙進出のキャラクターに採用されてしまって、こんなんでいいのかな……怒られないかな、ってむしろ不安でした(笑)。総選挙の対象キャラクターが20もいる中で、一人だけこっち向いてないし、サンリオなのに愛想がなくて……」

――生み出すとき、“サンリオっぽくなさ”は意識されていたのですか?

Amy「それは特に意識していなくて。でも、この『食べキャラ総選挙』は、もともとサンリオで、今までと違うターゲットに向けたキャラクターを人気投票をしてメジャーデビューさせよう、というコンセプトがあったんです。今思えば、今までにないターゲット層=今までのサンリオっぽくない、ってことですよね。いまだに“あ、これサンリオなんだ”と驚かれる方もいらっしゃるくらいです」

卵かけご飯を見つめていたら、ぐでたまを思いついた

――どのようなきっかけでぐでたまを思いついたのでしょうか?

Amy「家で卵かけご飯を食べていて、“卵って、やる気ないけどかわいいな”、と思ったのがはじまりです。卵を見ていたら、なんかこいつ全然目を合わせてくれないな、ぐでぐでしてるだけだな、もっと頑張ればいいのに……、卵は栄養もあるし、優秀なのに、もったいない、と。その、せっかく能力があるのに力の抜けた姿が現代人っぽくて今の社会と重なるな、とも思いました」

――ああ見えて意外と社会を背負ってるんですね……!

Amy「これも後になってから思ったんですけど、キャラクターってその時代を反映するものなんじゃないかな、と。やる気がなくて短い言葉で毒を吐く、という点が、Twitterなんかと親和性が高かったんだと思うんです」

――なるほど。社会だけでなく時代も背負ってるんですね……!

Amy「時代で言えば、一般投票だったからこそ出せた、というのもあるはず。“新しいキャラクターをデビューさせますよ!”と言って社内で選んでいたら、ぐでたまは選ばれてなかったんじゃないかな……」

――今だからこそ出せたんですね。ぐでたまの誕生で何かAmyさん自身の身の回りに変化はありましたか?

Amy「1年前にはこんなに大ヒットするとは思っていなかったので…、おっかなびっくりです。でも、もしかしたら一発屋かもしれないので、今できる限りのことを頑張れれば…。でも海外進出も妄想はよくしてます。世界にはまだ愛想のないキャラクターは出てきていないので。あ、あと、卵を食べる量が増えました(笑)。お店で卵料理を頼んだときは、食べる前にしばらく観察したりつっついてみたりしています」

しっかりした考えがありながらも、どこかほんわかして、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐAmyさん。今からすでに一発屋について心配するなど、いい具合に“ぐでたま感”たっぷりなのだった。

取材・文=朝井麻由美
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