短期記憶をするのに最も効率的な時間帯は16~20時! 時間をずらすだけで成果が明確に変わるワケ

暮らし

公開日:2016/9/26

『「時間の使い方」を科学する』(一川 誠/PHP研究所)

 何かと忙しい日常。ビジネスマンだけでなく主婦や学生ももう少し時間を有効に使いたいと考えたことがあるのではないだろうか? そこで、限られた時間を充実した時間に変える方法がわかる『「時間の使い方」を科学する』(一川 誠/PHP研究所)という本を取り上げる。

感じられる時間の不思議

 「時間」は誰にでも平等に流れるもので、1日は24時間と決まっている。そう普通なら思うところだ。しかし、この本では物理的な時間よりも「感じられる時間」に注目している。感じられる時間は、実際に経過する時間の長さの影響も受けるが、時間内に体験できる出来事の数や、時間経過に向けられる注意、過ごす環境や過ごすときの感情など、あらゆるものの影響を受けて延びたり縮んだりする。例えば、楽しい時間はあっという間に過ぎるのに、嫌なことをやらされているときはなかなか時間が過ぎないといった具合だ。

 この感じられる時間の長さに影響を与えるものには、もう1つ「身体の代謝」がある。代謝がいいときほど時間が長く感じられるというのだ。つまり体内時計が影響するサーカディアンリズムを理解すれば、どの時間に何をすると効率がいいのかがよくわかる。

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作業内容によって適した時間帯が違う

 人の体温は1日の間に一定のリズムで上がったり下がったりする。体温の変化と言ってもごくわずかな変化なのだが、この微妙な差が集中力に影響を及ぼすのだ。注意力を要する短期記憶や計算は、体温が高い16~20時頃の時間帯に行うのがよく、論理的判断を要する作業は10~14時に行うのがよいという。受験勉強などを行う人が多い早朝や深夜は、実は集中力の必要な作業には向いていない時間帯だったのだ。

時間の使い方は心に左右される

 やらなければならないことはわかっているのに、なかなか仕事に取り掛かれないという人も少なくないだろう。締め切りが近づかなければやる気が起こらないというのもその1つだ。人間の脳はラクな方にラクな方に流されやすい作りになっている。そのため、誰でも嫌なことからは逃げたい。そう思っているつもりはなくても、無意識にやりたくないものはやらずに済ませたいという行動に出てしまう。

 例えば、普段めったにやらない掃除や、住所録の整理などを、時間がないときに限ってやりたくなってしまい、やるべきことをやらずに没頭してしまうなんてことはないだろうか? 追い込まれれば追い込まれるほど、なぜかその掃除が楽しくなってやめられなくなる。これは一種の逃避行動で、自我防衛機制にもつながる。もし失敗したとしても、十分な時間がなかったから失敗したのだという言い訳を自分で用意しようと余分なことをやってしまうのだ。

過去の失敗を活用するための物理的な工夫

 時間の使い方を失敗した経験のある人は多いはずだ。だから、過去の失敗を活かすことで時間をうまく使えるようになる。しかし、失敗したことは正しい形で記憶に残りにくいため、どのように失敗したかをメモなどにきちんと残していつでもわかるようにしておく必要がある。予定を立てても予定通り進まなかったときは、どういうやり方をして失敗し、どのように対処したのかなどをしっかり書き出しておけば、失敗した理由がはっきりわかり、次の成功に活かすことができる。

感じられる時間をコントロールする

 人の脳は楽しい方に流されやすく、時間の使い方も心理的な影響を受けやすい。そして、「感じられる時間」が作業効率を左右する。つまり、この感じられる時間を調整することができれば、上手に時間を使うことができ、充実した時間を過ごすことにもつながるということだ。感じられる時間は体内時計のサーカディアンリズムの影響を受けるのだから、睡眠をきちんととることや、代謝の時間をコントロールすることが作業効率を高めることになる。時間がないときほど、仮眠を取ったり、適度な休憩をとったりすることが大事だ。

 この本には、充実した時間の作り方や、作業効率をアップさせる時間管理の方法、予定通り物事が進まなかったときの対処法なども詳しく書かれている。なぜ自分はいつも残業することになってしまうのだろうか? と気になったら、この本を参考に時間の使い方を見直してみるとよいだろう。

文=大石みずき