映画『国宝』から、日本初の女性総理・高市首相の誕生まで――林真理子が2025年を斬る人気エッセイ最新巻【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/3/11

マリコは国宝を観た!!
マリコは国宝を観た!!(林真理子/文藝春秋)

 大阪万博の開催に日本初の女性首相誕生、ドジャースの大谷翔平選手らの活躍など、政治の動きやスポーツ、芸能ニュースに、いろいろあった2025年。そんな去る1年を作家・林真理子さんとともに振り返る、心躍る時間が今年もやってきた。そう、『週刊文春』の人気エッセイをまとめた書籍の第37弾『マリコは国宝を観た!!』(林真理子/文藝春秋)が刊行されるのだ。

 林さんの『週刊文春』の連載エッセイは、1983年にスタート。2020年には「同一雑誌におけるエッセイの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定された長寿連載だ。作家として、論客として、そして教育者として、昭和から令和まで、第一線を走り続けてきた著者。その日常や、社会の思いを知ることができる貴重な場所だ。

『マリコは国宝を観た!!』には、2025年に書かれたエッセイが収録されている。母校である日本大学の理事長を務める著者は、毎日、本部に出勤し、各学部のオープンキャンパスや全国の付属校のイベントにも飛び回っている。休日には分単位のスケジュールで人に会い、観劇にいそしむなど、相変わらず忙しい毎日を送っている。そんな著者のエッセイの話題は、「小さな災害」と呼ぶ自らのトイレ問題や手土産のセレクトといった日常の悩みから、SNSに影響される人の品位、この世を去った人との思い出までさまざまだ。初の女性首相誕生や、メディアを騒がせた芸能人のニュースなど、いろいろな議論が起きた話題についても林さんは語る。多くの修羅場を乗り越えつつ、さまざまな人の人生に触れてきた林さんならではの核心を突く言葉があったり、ピュアな応援もあったりして、楽しく読める。

 そして著者は、忙しい合間を縫って大阪万博にも参加。メジャーリーグ開幕シリーズで、大谷翔平の第1号ホームランと佐々木朗希の初ピッチングも目撃している。そして、世界陸上が行われた国立競技場で、男子棒高跳びの世界記録が刻まれたあの歴史的瞬間にも居合わせたというから驚きだ。2025年、皆の心が躍ったあの瞬間を、会場の熱気や著者自身の感動が伝わる文章とともに振り返ることができて、胸が熱くなる。

 しかし、本書でもっとも注目すべきテーマは、書名にもなっている映画『国宝』の話題だろう。長年、歌舞伎を観続けてきた上に、吉田修一氏の原作小説を中央公論文芸賞に強く推したという、『国宝』に縁を持つ著者は、同作の素晴らしさやヒットの理由を、鋭い視点で語っている。その話題は、映画をきっかけに広がった歌舞伎ブームや、著者が『国宝』への思いを胸に全力で挑んだ、10月のハロウィンイベントにもつながっていく。林さん自身の挑戦の行く末も、しっかり見届けてほしい。

 また、巻末には、18年ぶりに「該当者なし」となった2025年上期の直木賞について、選考委員である林さんと作家・浅田次郎さんが語る対談が収録されている。手書き派のふたりが感じるパソコン時代に入ってからの小説の変化や、ふたりの直木賞受賞時の思いについても語っていて、本好きの読者にはたまらない内容。文学の行く末も、林さんの2026年の活動も楽しみだ。

文=川辺美希

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