大滝詠一が「死後公開」を希望したロングインタビューが書籍に! 取材原稿に大幅な修正を入れがちだった生前の大滝さん。今作では大滝さん「らしさ」がそのまま残っている!?【萩原健太インタビュー】
公開日:2026/3/28
●常に俯瞰して自分を見ている人だった
――すごく細かいところまで覚えていらっしゃる一方で、あまり感情面はお話しにならない印象も受けました。
萩原:基本的に大滝さんはあんまりそういうのは語らないようにしていた印象があります。感情をむき出しにしないわけじゃないですけど、常に俯瞰して自分を見ているようなところがあって、それは子どもの頃から変わっていない。
――確かに「ただ横にいただけ」とか、俯瞰的でちょっと自虐的な言い方もされますよね。
萩原:変な形で弱みは見せたくないと思っていたのはあるでしょうし、すごく負けず嫌いなんですよ。「いや、俺はいいよ」って言ったりするのも、負けず嫌いだからそういう表現になるのかもしれません。ただ基本的に毒舌なんで、テープを止めてるときにはかなりのことも言ってましたけどね。
――いろいろな方との出会いも時代を追体験するようで面白かったです。とはいえ、やはりすごいのはお母さま。大滝さんへの投資が半端ないです。
萩原:ちょっと世話になりすぎですよね(笑)。大滝さんのファーストアルバムに「びんぼう」って曲があるんですけど、お母さまが初めて東京で大滝さんのライブを見たときに歌ってたのがたまたまその曲だったらしくて。「私はあなたに貧乏をさせた覚えはない」ってお母さまがおっしゃったらしくて、すごくいい話だなと。
――幼少期から日本の伝統的な演芸や芸能に親しんだ上にアメリカのポップスから大きな影響を受けていく大滝さん。戦後という時代の特性かもしれませんが、そんな「感性の厚み」にも強さがあると感じました。
萩原:前のものを全部なくして次のものに入っていくのを「廃仏毀釈」ってご自身で言ってましたけど、実は全部つながっていたのが後から分かるというのがポイントだと思います。みんなそうじゃないですか、実は。かつて体験したものを否定して次のものに入ったようでいながら、全てを自分の中に引きずりながら暮らしているっていうね。その中でどういうものを作り上げていくのかっていうことに対して、大滝さんはすごく自覚的な方だったと思います。

●大滝さんに呼ばれたら全力で行く!
――大滝さんといい関係を続けていく上で何か気をつけていたことはありましたか?
萩原:たとえば夜中の1時ぐらいに電話がかかってきたら朝までを覚悟するとか、何か連絡があったらそこに全てを割くっていう感じですかね。今なら「パワハラ」とか言われそうですけど、そういうのでもなかったんですよね。こちら側がリスペクトから自然に「そこの場にいさせてもらいたい」って思うというか。だから声をかけていただいたときは、もう本当に全力でそこに行くっていう。
――本当に大滝さんって魅力的な方だったんですね。
萩原:毎回面白い話を聞かせていただけるし、いろんな発見をさせてもらいますからね。ただ、こういうふうに言うとまた一種の神格化になっちゃうんで、やっぱり「なんであんなしょうもない人が」っていう感触は大事にしたい。この本でそういう大滝さんを知ってもらってから、あらためて大滝さんの音に接してもらえると、素敵な音の背景に「このイカれた感じはなんだ?」がいっぱい転がっているのを楽しめるんじゃないかと思います。
――最後に、この本を大滝さんが読まれたら何ておっしゃいますかね?
萩原:どうですかね…。いつもインタビューをまとめるたびに確認でお送りするとメールで感想を送ってくれて、「よくまとめたね」とかほめてくださったりもしてたんですが…。実は大滝さんは原稿にすごく手をいれちゃうんですよ。「そんなこと言ってなかったじゃないですか」みたいなこともどんどん増やすし、口調も直すし、(笑)もやけに出てくるんです。だから今回初めて僕がまとめた大滝さんのインタビューにそういう「大滝さんの直し」が入ってない。僕の中には大滝さんの直しで失われてしまった大滝さん「らしさ」みたいなものへの想いがいっぱいあったので、今回初めてそれを全編に表現できました。大瀧さんがこれを読んだら「ちょっと待て!」って言うかもしれませんけど(笑)。ただ、いろんなところに出ていないことを書いたつもりなので、そこはお役に立てたんじゃないかなと思います。

取材・文=荒井理恵、撮影=川口宗道
