電車ごっこが止まらない2歳児に読ませたら…? 鉄道BIG4・南田裕介がおくる“遊べる絵本”『しょうがっこうへ しゅっぱつしんこう!』【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/4/13

しょうがっこうへしゅっぱつしんこう!
しょうがっこうへしゅっぱつしんこう!(林彩子:作、西片拓史:絵/Gakken)

 小さな男の子は、道に「一直線のもの」を見つけると、途端に電車ごっこを始めてしまう。色の違う敷石、点字ブロック、側溝のフタ……。街中の線上に並ぶもののすべてが“線路”に見えてしまう生きもののようだ。

 わが家の2歳半の息子もまさにそのひとり。外を歩けば「ガタンゴトン」と独り言を言いながら、ひたすら直線を進み続ける。そんな彼が釘付けになったのが、鉄道好きにはおなじみの「鉄道BIG4」のひとり、南田裕介さんが企画・原案を手がけた絵本『しょうがっこうへ しゅっぱつしんこう!』だ(林彩子:作、西片拓史:絵/Gakken)。

足元の一直線は、子どもにとっての「線路」

しょうがっこうへしゅっぱつしんこう!

 本作の主人公は、小学生のゆうくん。朝、家を出た瞬間から、自分を運転士に見立て、通学路を走り出す。横断歩道ではぴたりと止まり、立ち止まる場所は駅になる。いつもの道、いつもの風景が、電車ごっこによって一気に物語の舞台へと変わっていく。この設定自体が、子どもの日常と想像力をそのまま切り取ったようなリアリティを持っている絵本だ。

2歳児が「しゅっぱつしんこう!」 読み聞かせで見せた驚きの没入感

 実際に2歳半の息子に読み聞かせてみた。対象年齢の目安は3歳以上の絵本だが、タイトルを読んで表紙を見せた瞬間に、「しゅっぱつしんこう!」と声を上げて乗ってきた。興味のない本だとその時点で反応しないことも多いので、この本はお気に召したようだった。

しょうがっこうへしゅっぱつしんこう!

 物語の中で大きなハスキー犬が出てくる場面では、「オオカミ!」と叫びながら、見つからないように静かに歩く真似をして笑う。ガタンゴトンとリズムを刻みながら体を動かし、絵本と遊びが一体化するような瞬間もあった。また、最後の方で本物の電車が登場する場面では、「でんしゃ!」と興奮気味に声を上げ、ページを指差して何度も確認していた。

 さらに面白かったのは、主人公の名前を子どもの名前に置き換えたり、後ろに並んで乗ってくれる友達を実際の友達の名前にしたりすると、没入感が高まったこと。

 この絵本は、単に“読む本”ではなく、“一緒に遊ぶ装置”として機能するタイプの絵本なのだ。

構成もイラストも。この絵本の“完成度が高い”理由

 ここまで息子が夢中になったのは、単にテーマが興味に合っているからではなく、絵本作品としての完成度が高いからだろう。

 この絵本の物語は、ただの電車ごっこで終わらない。途中で友達が乗ってきたり、犬が現れたり、信号で止まったりといった要素が加わることで、物語にリズムと展開が生まれている。通学路という限られた舞台の中で、ここまで変化を持たせているのは見事だ。

しょうがっこうへしゅっぱつしんこう!

 イラストも大きな魅力のひとつ。西片拓史さんによる絵は、明るくやさしく、どこか懐かしさを感じさせるタッチ。田んぼもある田舎町ののどかな風景が丁寧に表現されており、読んでいる大人側にも安心感がある雰囲気だ。

なにかになりたい、すべての子どもたちへ

 子どもにとって通学路や散歩道は、ただの移動ではなく、想像力が走り出す舞台だ。その感覚を自然にすくい上げているからこそ、子どもはこの本に夢中になるのだろう。

 電車が好きな子どもにはもちろん相性がいいが、それ以上に、「なにかを見立てて遊ぶのが好きな子」に強く刺さる一冊だと感じた。

 線の上を歩き続ける、なにかになりきる、親や友達を巻き込む――そんな遊びを日常的にしている子どもにとっては、この本は単なる読み物ではなく、“自分の遊びがそのまま描かれている世界”として楽しめるはずだ。

文=古澤誠一郎

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