「忌み地」にまつわる実話怪談集。龍脈によって栄えた一族を滅ぼそうとする大規模な呪術とは。某有名設計士も登場…!?『土地と風水の怖い話』【書評】
PR 公開日:2026/5/1

『土地と風水の怖い話』(籠三蔵/竹書房)は、著者自身の体験談や、体験者に取材した話を集めた実話怪談集だ。特に「忌み地」と呼ばれる負の因縁を持つ土地や、ある特定の場所、風水(家相/かそう)に関わる怪談・異談を集めているところに、本作の大きな特徴がある。
どの話も5~10頁ほどの短い体験談が収録されているので、電車に乗っているちょっとした時間でも読みやすいのが嬉しい。中には同じ体験者の話や、何話かにわたって綴られる短編連作のようなエピソードもあり、非常に満足度の高い一冊だった。もちろん心霊的なぞわっ……とする話もあるのだが、不動明王や狼信仰といった神仏に関わる不思議な話、現役刑務官や建築事務所の設計士など、オカルトとは一見関係のない職業ならではのリアルな怪談(異談)が収められているのも、本作の魅力である。
個人的に夢中で読ませてもらったのは、数話にわたり展開された「龍脈怪道」シリーズ。まず何より、登場人物の性格が濃すぎる。加えて、土地に関する規模の大きな話に「これ本当に実話???」と、(いい意味で)信じられないような体験談だった。
このお話は、著者の知人である田中さんが経験した話である。
田中さんは工務店に勤務する一般男性なのだが、家系的な体質で豊富な心霊体験を持つ。その体験談を某有名ホラーコミック誌に連載中の漫画原作として提供しているほどで、その彼が、オンラインゲームで知り合った男性・矢作(やはぎ)さんから相談された話だ。
矢作さんは東北の某県に住む30代の男性で由緒正しい旧家の出身。彼の一族が居を構えているのは、風水的に気の流れが良く家運が上昇するという「龍脈」が通る土地。そのおかげで一族は代々栄えてきたのだと言い伝えられている。しかし(詳細は長くなってしまうので省くが)、当主問題や土地相続・事業頓挫の因縁からか、矢作さんの叔父がプロの呪術師と組み、地元の忌み地と龍脈上にある邸宅の立地を利用した大規模な風水的呪術を用いて、一族を没落させようと画策しているというのだ。
田中さんへの相談は、その呪術師の正体を暴いてほしいというものだった。これだけでも充分「映画になりそう」な話なのだが、ここからがスゴイ。
相談を受けた田中さんは「先生」と呼ばれる人物を紹介する。とある「開かずの間」を備えた建物の案件で田中さんが出会ったこの先生という人は、建築事務所の設計士なのだが、普通の人ではない。知る人ぞ知る「裏の建築技術」の継承者、「風水師」とも言えるし、神道や密教の知識、その術にも精通している上、「障りを視られる」。しかも、成果報酬には高額の値段を取るという、某有名医療マンガの主人公みたいな人物(実際にホラー漫画「ある設計士の忌録」(鯛夢/朝日新聞出版 )にも登場していらっしゃる方)なのだ。
矢作一族を襲う呪術師と、表と裏の顔を持つ「先生」が対峙することになるのだが……。更に面白いのは先生のアシスタントであるAさん。ごく普通の設計士なのに、実はとてつもない力を持っており……。詳細はぜひ、本作をご覧になってほしい。
その他にも、妖怪が視えるというOLの透さんの体験談も個人的にとても好みだった。「桜守」は不思議な美しい話だったし、「日本観光」のリサイクルショップで異国の神像に話し掛けられる話は、ちょっとした訓戒もあり、大変興味深かった。
「印鑑」という話も好きだ。怖さもありつつ、オチの幽霊の行動には少し心が温かくなるのを感じた。
それにしても、“忌み地”と呼ばれる場所が原因で起こる怪談・異談が、これだけ全国各地にあるという事実には驚きを隠せない。忌み地というものは私たちが思っている以上に、身近な存在なのかもしれない。読後そんな風に思ったら、なんだか背筋が寒くなったように感じた。
文=雨野裾
