大河ドラマで話題の北条泰時と時房が名バディに! 初の武家ルール「御成敗式目」の誕生秘話に隠された驚愕の殺人事件【書評】

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PR 公開日:2026/6/22

御成敗式目の殺人
御成敗式目の殺人(羽生飛鳥/中央公論新社)

 昨今、刀剣がブームだ。鋭く光る鋼は確かに美しい。が、これが「人を斬る」道具だと思うと若干ひるむ。かつてはこうした刃を平然と脇に刺した「武士」が往来を闊歩し、人が路上でもバッサバッサと斬られていたなんて別世界。「平和な世でよかった」と心底ホッとする。

御成敗式目の殺人』(羽生飛鳥/中央公論新社)は、そんな殺生が当たり前の武士社会のはじまり・鎌倉時代を舞台にした本格推理小説だ。連作短編5篇からなる本作は、「殺す、盗む、騙す、犯すのが当たり前」という坂東武士たちを、政(まつりごと)を司るのにふさわしい存在にアップデートすべく、初の武家ルールブック「御成敗式目」を作らんとする、まさにその時が舞台。話し合いの中で思い出される過去のさまざまな事件が、そのまま式目作りのヒントになっていくのだ。

 主人公は第3代執権・北条泰時(幼名・金剛)と叔父の北条時房。泰時は鎌倉幕府を開いた源頼朝の正室・政子の弟である北条義時(NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の主役。小栗旬が演じた)の息子にあたる人物で、時房は政子・義時の弟で初代の連署(執権の補佐役)を務めた人物だ。「素朴な坂東武者の気風を色濃く残しながら、目には知恵の光が宿る」という泰時と、その泰時が尊敬する時房は、これまでに数々の難事件を解決してきたバディ的な二人でもある。

 たとえば第一話は、幼い泰時(当時は金剛。9歳)が時房(当時は時連。17歳)と共に、北条家からの頼朝への祝いの品の観音菩薩像を寺に引き取りに行ったときの話。あろうことかその像を凶器にした殺人事件が起こり、別当(寺院の最高責任者である僧)が大切にしていた仏舎利(お釈迦様の遺骨)が盗まれるという事件が起きたのだ。二人は持ち前の観察力と機転、知力で見事に事件を解決したが、その時に目撃した寺の僧たちの荒んだ姿は40年の時を経ても印象深く、それが式目の第二条「加修造寺塔勤行仏事等事(寺や塔の修理をして、僧侶の勤めに励むこと)」につながっていく。物語では同じように第二十条、第二十八条…と二人が仲良く語る思い出話がヒントとなって、次々に式目が作られていくことになる。ただし、平和に過去の事件を教訓にできたのは途中まで。実は回想中のふとした違和感から、泰時の胸中には時房に対する疑念が生じて二人は衝突してしまい――。

 著者の羽生飛鳥さんはデビュー作『蝶として死す 平家物語推理抄』(東京創元社)以来、多くの歴史ものミステリーを手掛けてきた注目の作家だ。生き生きと細かな心理描写は歴史上の人物も親しみやすい存在にしてくれ、まるで自分も鎌倉武士になったかのような気分に。ラストには斜め上のどんでん返しも起き、ミステリーの醍醐味もたっぷりの本作。歴史×本格ミステリーの味わい、ちょっとクセになりそうだ。

文=荒井理恵

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