決して泣いてはいけない遊園地! 亡き人との再会を描く『天空遊園地まほろば』第2作がもたらす、悲しみを希望に変える時間【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/8/5

天空遊園地まほろば 時を結ぶ花々
天空遊園地まほろば 時を結ぶ花々(浜口倫太郎/ポプラ社)

天空遊園地まほろば 時を結ぶ花々』(浜口倫太郎/ポプラ社)は、もう二度と会えない大切な人と一時だけ会うことができる、不思議な遊園地を舞台とした連作短編集だ。本作は『天空遊園地まほろば』(同)の続編ではあるが、物語の主人公は章ごとに変わっていくため、本作から読んでも問題なく物語を楽しむことができる。

 山の上にひっそりと佇む予約制の遊園地、まほろば。再会したい大切な人がいる人にのみ、招待が届く。来場者に課せられるのは、死者と再会している間、決して泣いてはいけないというルールだ。もしも涙をこぼしてしまったら、その人との思い出が消えてしまう。その覚悟と共に、特別な時間が始まる……。

過去の悲しみを乗り越えた先に未来はある

 物語に登場する人々には、それぞれ過去に失った相手に対する心残りがある。妻、親友、恩師、そして文通相手。そういった相手は、主人公に大切な気付きや無償の優しさを与えてくれたことが共通している。

 そんな大切な人との思い出を振り返りながら、登場人物たちは現在の自分自身が抱える問題や悩みと向き合い、解決のヒントを得ていく。その過程では、自分が思い違いをしてしまっていたことや、相手から受け取りきれていなかったメッセージが浮かび上がってくる。限られた時間の中で再会するからこそ、もうこの世にいないとわかっている相手だからこそ、伝えられることもあるのだろう。本作を読んでいると、日頃から感謝や素直な気持ちを言葉にすることの大切さを改めて痛感する。

 大切な人を失うことは、大きな喪失感を生み出す。悲しい過去は変わらないが、自分自身の心のあり様が変われば、未来は変わっていく。そんな希望を伝えてくれるのが、本作の魅力である。

今は亡き人の意志や想いを継いでいくこと

 前作同様、ノスタルジックな遊園地という舞台から、思い出に彩られた時間を紡いでいく展開に惹き込まれる。

 今作の中で特に印象に残ったエピソードは、最後に収録されている「ペンフレンドのフラワーガーデン」だ。フランス人のソフィーは、日本人の桜と互いの語学のために文通していたが、彼女からの返事が突然途絶えてしまう。それから月日が流れ、ようやく日本を訪れることができたソフィーは、彼女の死を知り、「天空遊園地まほろば」で彼女と会うことを希望する。そんなソフィーを待ち受けていた桜は、意外な姿で……。

 この物語は、本作の副題である「時を結ぶ花々」にもつながっている。フランスと日本、かけ離れた地で友情を築いた二人の絆は、大切に育てられた花に象徴される。伏線が回収されたとき、驚きと共に深い感動が胸に広がった。「天空遊園地まほろば」は多彩なエピソードを味わえるシリーズ作品だが、その中でも特にシリーズ全体に通じる魅力や醍醐味を凝縮した物語だと感じた。

 大切な人を亡くした経験を持つ人、あるいは過去に後悔を抱えている人には、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。そして本作から先に読んでみて、世界観や設定、描かれるドラマに心動かされるものがあったならば、ぜひ前作『天空遊園地まほろば』も手にとっていただきたい。

文=宿木雪樹

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