『魔美華ちゃんが来る!』キャラクター名の由来は藤子・F・不二雄先生の『エスパー魔美』が関係している?【高橋葉介 インタビュー】
公開日:2026/9/9
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年9月号からの転載です。

『怪と幽』で連載された高橋葉介さんの『魔美華ちゃんが来る!』が、このたび単行本化された。そこで今回の「お化け友の会通信 from 怪と幽」は高橋さんに、悪いお化けを退治するスーパー幼稚園児が主人公の本作についてはもちろん、ご本人の子供時代のことなどについても色々とお話を聞いた。
『魔美華ちゃんが来る!』は、幼稚園児の魔美華ちゃんが周囲の人々を脅かす化け物を払うオカルトコメディ。魔美華ちゃんは『怪と幽』での前作『魔実子さんが許さない』の最終話に主要キャラの間に生まれた子供として登場していたキャラクターだった。
「『魔実子さんが許さない』が終わって、次をどうしようかと考えていた時に、これは続きそうだなと思ったので、魔美華ちゃんで描くことにしたんです。でも『魔実子さん~』を描いている時は全くそんなことは考えていませんでした。何しろ『怪と幽』は次の号まで4カ月空くため、いつも“その間に考えればいいや”と、後先考えずに描いているので(笑)」
偶然仕込まれた奇跡の伏線から生まれた本作。そのタイトルは、ある名作たちが由来している。
「主人公が〝魔美〟華だから、藤子・F・不二雄先生の『エスパー魔美』と、同じ〝魔〟がつく藤子不二雄Ⓐ先生の『魔太郎がくる!!』を足したら面白いかなと思って『魔美華ちゃんが来る!』にしました。内容は全然関係ないんですけどね(笑)。それで魔美華ちゃんの弟も、F先生とA先生の合作である『オバケのQ太郎』から〈球太郎〉にしてたりします」
前作の魔実子さんはミステリアスな大人の女性だった。一転して幼稚園児を主役に選んだわけは?
「ちょっと明るいものにしたいと思ったからです。しかし子供が主人公の話といっても、以前描いた『学校怪談』のような中高生だと、今の自分が描くと違和感があるだろうなと思いました。小学生でも、今の授業の形態とか全然わからないですし。でも幼稚園児まで下げればなんとかなるかなと」
そうして抜擢された幼稚園児の魔美華ちゃんは、不思議な力があるだけでなく、大人顔負けのしっかり者。危険な化け物を祓うだけでなく、お父さんにつきそうな悪い虫を引き離したりもする。
「『クレヨンしんちゃん』みたいな、大人の思考をする子供キャラクターですね。そんなキャラなら、幼稚園児を描いても違和感を持たれないだろうと思ったんです。だからこの世界では一番しっかりしているのは子供です。逆に大人はふらふらしてますが」
クセのある大人たちも魅力的だが、高橋さんが語るようにサブキャラも活躍するのは主に子供たちだ。すみれちゃんはお絵描きとお化けが大好きな女の子。登場回以降、魔美華ちゃんの友達として、時には助け、時には騒動を起こす。
「最初はその時だけのキャラクターのつもりだったんですが、魔美華ちゃんに仲良しキャラがいたほうがいいなと思って、そのまま主要キャラになりました」
描いた絵を実体化させたり絵の中に人を入れたりできるなど、彼女も魔美華ちゃんに劣らない不思議な力の持ち主だ。

「子供の世界ではそういうことができるのが当たり前な感じで描くのが面白いなと思ったので、この作品の子供たちはわりと普通に不思議な力を使います」
魔美華ちゃんの弟・球太郎くんは、そんな子供たちの中でもとりわけ強い力を持つ。最初はまだお母さんのおなかの中にいるのだが、その時点から美少年の姿で現れて魔美華ちゃんを助けている。
「赤塚不二夫先生の『天才バカボン』に、バカボンの弟のハジメちゃんがなかなか生まれずにずっと引っ張るエピソードがあるんですが、そんなふうにしたいと思っておなかの中にいるころから登場させました。結局、思っていたより早めに生まれちゃいましたが」

球太郎くんが誕生する日、生まれてしまうとそれまでの記憶を忘れてしまう彼と魔美華ちゃんが語りあうエピソードは、本作屈指の印象的な回だ。
そんな子供たちが主役の本作にちなみ、せっかくなので高橋さんの子供時代のことを訊ねてみた。
「幼稚園のころは、人間は死んだらどうなるのかとか、宇宙の果てはどうなっているのかとか大人に聞いてまわるような鬱陶しい子供でしたね。それらが疑問だったというより怖かったんでしょうね。でも何より怖かったのは、迷子になることでした。お化けも確かに怖いんですけど、具体的に身の危険を感じるのはやはり親から離れることで、帰る道がわからなくなったり、ここがどこなのかわからなくなるのが一番怖かったような気がします」
逆に、子供のころに好きだったものは何だったのだろう。
「当たり前すぎて面白くないけど、マンガが好きでした。幼稚園に入る前にマンガで字を覚えたくらいですから。特に横山光輝先生の『鉄人28号』が好きでした。でも単行本は高くて滅多に買ってもらえないので、基本的にお金持ちの子が持っているのを読ませてもらってましたね。まれに親の機嫌がいい時に買ってもらうと、ボロボロになるまで読んでました。絵を描きはじめたのもそのころです。幼稚園でやっぱりずっと鉄人ばかり描いていました。おかげで今でも見ないで描けますよ(笑)」
作中にすみれちゃんが床に伏せるようにして絵を描き続けている場面があるが、そんな感じだったのだろうか。
「まさにそうですね。机でなんか描かないです。すみれちゃんが絵の中に入り込む描写も、小さいころはこんな感じで描いてたなと思いながら描きました」

そんな高橋さんの子供時代の面影もうかがえる『魔美華ちゃんが来る!』だが、単行本の続きを描かれる予定はあるのだろうか。
「続けたいですね。ただ、すぐに続きを描くかは考え中です。続けるなら魔美華ちゃんにはなるべく幼稚園児のままでいてほしいですね。女の子のキャラは油断するとどんどん成長していってしまうので。ともかく今は『魔美華ちゃんが来る!』を読んでもらって、魔美華ちゃんと、その周辺の人々をよろしくご愛顧ください」
最後に近況をうかがった。旧知の間柄で『怪と幽』連載仲間でもある諸星大二郎さんとは今でも「月に一度くらい会っています」とのこと。
「それで、この前お会いした時にお宝をいただきました」
そう言って見せてくださったのは、諸星さん直筆の色紙。そこには『西遊妖猿伝』の通臂公、『暗黒神話』の竹内など諸星作品の老人キャラとともに「古希祝い」の文字が。高橋さんは今年の3月に70歳を迎えられていた(ちなみに高橋さんは7月生まれの諸星さんにお誕生日祝いの色紙をお返ししたらしい)。さらに来年にはデビュー50周年を迎える。半世紀もの間、怪奇で奇妙な世界を描き読者を魅了し続ける高橋葉介さんの最新単行本『魔美華ちゃんが来る!』のスーパー園児たちには、そんな高橋さんの創作の活力の秘密が隠されているのかもしれない。
取材・文:藪魚大一 写真:首藤幹夫


『魔美華ちゃんが来る!』
(高橋葉介/KADOKAWA) 1760円(税込)
幽霊、妖怪、化け物――普通の人には視えない存在が視える幼稚園児の魔美華ちゃんは大切な人を守るため、その不思議な力で“良くないモノ”を祓う! スーパー園児と、ちょっとヘンな友達、そしてクセのある大人たちが織り成す、怪奇キッズコメディ!!
次号予告

『怪と幽 vol.023』 8月31日発売予定
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