【親子で読んでみた】「どうしていすがなかったか、わかる?」差別や排外主義について考える絵本『きみのいすは なかった』【書評】
PR 公開日:2026/9/24

みなさんは、自分の子どもと差別や排外主義について話したことはありますか? 「大切なことだと思うけど、そういえばこれまで話す機会がなかった……」。そんなあなたにぜひお薦めしたい絵本が『きみのいすはなかった』(ダニエル・ギル:文、スーザン・ギャル:絵、かわの たろう:訳/岩崎書店)です。
「だめ、いすがないから」著者の実体験を基にした物語
本作は1956年のアメリカ・ニューヨークで著者が実際に体験した実話をもとにした物語。ある日、著者であるダニエル・ギルと親友・アーチーは友達・スティーブの誕生日会へと向かいます。よそゆきの服を着て、両手にプレゼントを抱え友人の家があるおおきなマンションへ向かうふたり。

スティーブの家に到着してチャイムを鳴らすと、出てきたスティーブの母はふたりをじっと見つめます。そしてダニエルへは入室を許可したものの、アーチーには「だめ、いすがないから」と門前払いするのです。

教師になった著者はこの出来事を「人生を変えた出来事」とし、教え子に伝え続けたとのこと。本書も、先生となったギルの教室に生徒たちが入ってきて、誰も座っていない椅子を見つけるところから始まります。
「どうして椅子がなかったか、わかる?」小学生の息子と読んでみた

本作の対象年齢は小学校中学年からとのことなので、我が家の小4長男に渡してみました。「ギルって優しいよねぇ」と言いながら本を返してくれた長男に「どうしていすがなかったかわかる?」と聞いたら「なんでだろう?」と首をかしげました。これは親として、この本に描かれているメッセージをしっかりと伝えなくては……と思ったのですが、1956年のアメリカはどんな状況だったのか? そもそも差別は人種差別だけではないし、何からどう伝えたらいいのか……? 言語化しようとすると、自分もしっかり理解できていない点が多いことに気づきました。
そこで本書の最後「読者のみなさんへ」にあった「わたしが彼らくらいの歳のころに誕生日会で経験したことが、一生をかけて人種差別とたたかったキング牧師の言葉をふかく知るためのヒントになるかもしれない、と感じたのです」という言葉から、ふたりでキング牧師について調べてみることに。するとキング牧師の演説に“奴隷解放宣言”という言葉があったので、今度はそれについて調べてみることに……。一緒に調べていくにつれて、なんとなく子どもにも人種による差別の歴史が伝わった様子。
そこから差別は人種だけでなく、性差別などいろいろな問題があること、今も差別を受けている人はいること……など私が思っていることをつらつらと話してみたりもしました。すべてが伝わったとは思いませんが、「人間みんな平等なのにね」とつぶやく長男を見て、今の話をどこかで思い出してくれたらいいな、と感じました。
同じく「読者のみなさんへ」のページには、私も初めて聞いた“アライシップ”という言葉が。「社会から無視されたり、差別されたり、抑圧されたりしてきた人たちの立場を、当事者ではない人々が理解し、支援しようとすること」を指す言葉とのことで、まさにこの本こそがアライシップの手助けとなると感じました。
子どもだけでなく、大人にも気づかされることが多くある本書。ぜひ親子で感想を話し合ってみてください。
文=原智香
