この本がなければアインシュタインの大発見はなかった? 世界を変えた書物をひもとく

文芸・カルチャー

公開日:2018/9/9

「もしコペルニクスが、地動説を説かなければ」
「もしニュートンが、万有引力を発見しなければ」
「もしダーウィンが、生物の進化を体系化しなければ」

 歴史の議論に「if(もし)」を挟むことはタブーだと言われますが、もし彼らの発見がなければ、私たちを取り巻く現代世界は明らかに違うものになっていたでしょう。これらの発見は、どれも世界に対する認識を一変させた偉大な叡智です。そして、彼らのこの大きな発見や功績を広く世に伝えてきたのが「本」「書物」です。

 コペルニクスの著した『天球の回転について』(1543年)、ニュートンの『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』(1687年)、ダーウィンの『種の起源』(1859年)などをはじめとする歴史的に貴重な書物の初版本が一同に揃う展覧会が、東京・上野の森美術館で開催されています(会期は9月24日まで)。

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▲会場風景

 この展覧会で展示される稀覯本は、いずれも金沢工業大学ライブラリーセンターの「工学の曙文庫」所蔵のコレクション。世界の科学者たちの重要な発見、発明を発表した初版本を中心とした約2000点にわたる膨大な所蔵品から、本展では選りすぐりの130点が2フロアにわたって展示されています。

 会場入ってすぐに私たちを出迎えるのは「知の壁」というコーナー名がつけられた圧倒的な書棚のトンネル。挿絵やイラストが美しい建築関連の書籍を中心に陳列されています。記されたテーマやトピックの重要性もさることながら、活字や紙の素材感などどれもオブジェとしての魅力に溢れています。

▲ニコラス・コペルニクス(1473~1543年)『天球の回転について』(1543年初版)

▲ブレーズ・パスカル(1623~1662年)『液体の平衡及び空気の質量の測定についての論述』(1663年初版)

▲ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(1845~1923年)『新種の幅射線について』(1895~1896年初版)

 それぞれの稀覯本は、鏡面をうまく利用した展示の工夫で、中面だけでなく表紙や装丁もともに眺めることができます。

▲「Check20」というラベルが付いた展示は、著名な科学者による重要な書物。時代を大きく変えた歴史的書物のエッセンスを要領よく知ることができる

 また、貴重な古書と並んで本展の見どころとなっているのは、「歴史的に重要な書物」が後世にどういう影響を与えたのかが視覚的にわかりやすくデザインされたインスタレーション。たとえば、古代ギリシャのアリストテレス以降の科学史的に重要な書物を示した系統図では、長い歴史で数々の科学的発見を経て展開されてきた人類の知識が、アインシュタインの『一般相対性理論の基礎』(1916年初版)という近現代で最も大きな発見へと結びつくまでを、ざっと一望することができます。「あの発見があったからこそ、この発見が成立したのか!」と気づく“知のつながり”を発見することは、非常に刺激的な体験となることでしょう。

 本展では、稀覯書を見るだけではなく、精巧なレプリカに実際に触れることができるコーナーや、書物の歴史を立体化したモニュメントを写真撮影できるコーナーもあり、稀覯本を“体感”するための工夫が凝らされています。

 現代の私たちが恩恵を享受している教養、知識、テクノロジーの“源泉”となった数々の大発見を記した「原著」を目の当たりにすることは、好奇心を刺激する絶好の機会となるはずです。「本棚を見ればその人の人となりがわかる」とよく言います。科学的発見・発明を集積した知識の森で、あなたが感じとるものは一体何でしょうか?

【展覧会概要】
主催:K.I.T.金沢工業大学、上野の森美術館
会期:2018年9月8日(土)~9月24日(月・祝)会期中無休
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)入場無料
公式ホームページ:http://www.kanazawa-it.ac.jp/shomotu/index.html