愛した不倫相手が、時効間近の殺人事件の容疑者だったら……深田恭子主演映画が話題に――東野圭吾が描く不倫小説『夜明けの街で』

文芸・カルチャー

2017/11/12

『夜明けの街で』(東野圭吾/KADOKAWA)

 毎日のように報じられる芸能人たちの不倫報道を見聞きするにつれて多くの人が感じていることは、「不倫する奴なんてなんて馬鹿なのだろう」ということだろう。妻帯者にとってそれは、最初はつまらない日常からの逃避に過ぎず、男としての自信を取り戻すための軽い遊びだったに違いない。向かう先は、地獄。しかし、その甘美な世界へと引きずりこまれ、不倫へとひた走る人間は後を絶たない。

 そんな不倫に走る男の気持ちを切々と描き出した東野圭吾の小説がある。『夜明けの街で』(KADOKAWA)は、ふとしたことから同僚の女性と不倫関係になってしまった男の物語。不倫を扱った小説は数あれど、不倫男の気持ちの変化をこんなにもリアルに描き出した小説はなかなかない。しかし、ミステリー界の巨匠・東野圭吾の作品なのだから、もちろん、それだけではない。その不倫相手というのが、訳ありの女。こともあろうか、時効間近の殺人事件の容疑者なのだ。

 舞台は横浜。建設会社に勤める渡部は、愛する妻と一人娘を家族に持ち、平凡ながら幸せな生活を送ってきたはずだった。だが、彼は、派遣社員として入社してきた仲西秋葉との不倫関係に陥ってしまう。どんどん秋葉に惹かれ、秋葉との再婚を考え始める渡部。しかし、彼女には複雑な過去があった。15年前、父親の愛人が殺される事件が起き、秋葉はその容疑者とされているのだ。時効まであとわずか。警察や被害者家族は秋葉の周りをかぎまわっているが…。彼女は本当に殺人を犯したのか。もし、犯人であったとしても、渡部は秋葉を愛し続けることなどできるのか。

時効成立後に、真実を白状することは十分に考えられます。そうなった時、民事訴訟を起こされたら、とんでもないことになりますよ。あなただって、無事では済まない。わかりますか

 本当の愛とは何なのだろう。不倫とは。家族とは。真実が明らかになった時、渡部はどうするのか。

いいことを教えてやる。赤い糸なんてのは、二人で紡いでいくものなんだ。別れずにどちらかの死を看取った場合のみ、それは完成する。赤い糸で結ばれてたってことになる

 この物語は、サザンオールスターズの楽曲『LOVE AFFAIR~秘密のデート~』に感化されて書かれた作品だという。サザンファンならば、物語に出てくる横浜の景色や時折引用されるその歌詞にますますイメージが膨らむ。

 不倫は、甘い地獄。男という生き物のおろかさと、女という生き物の恐ろしさが詰まったこの物語は、驚きのラストまで目が離せない。不倫が何かと話題になる世の中だからこそ、手をとりたい一冊。

文=アサトーミナミ