『有川浩の高知案内』有川浩サイン会&カツオ人間握手会 レポート

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

  今春実写映画化された『県庁おもてなし課』、SF青春小説の傑作『空の中』など、故郷・高知を舞台にした小説を書き継いできた、有川浩さん。高知県観光特使という肩書きも持つ彼女が、初のガイドブック『有川浩の高知案内』を先月刊行した。

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 自身が「ツアーコンダクター」となり、高知県を1泊2日で旅するプランを2本プロデュース。有川さんが故郷を愛し、面白がる道中を記録したルポルタージュと、もりだくさんの写真で構成された一冊だ。
 通常の旅行本には載らないような見所スポットや、とっておきのご飯屋さん、ご当地ソウルフードの紹介など、使える情報満載。「雨の日プラン」も付いているので、天気を気にすることなく今すぐ旅立てる、実用性の高い仕上がりだ。

 7月9日、三省堂書店有楽町店にて、高知をますます盛り上げよう!と、本書の出版を記念した有川浩サイン会&カツオ人間握手会が開催された。
 カツオ人間とは、高知県で生まれ、高知県地産外商公社の“特命課長”という肩書も持つキャラクター。銀座にある高知県のアンテナショップ「まるごと高知」のPRも務めている。そして、「浩ちゃんの友達」(本人談)。『有川浩の高知案内』にも、その人となりを紹介するページが、有川さんの大PUSHコメントとともに掲載されている。
 4月に発売された『カツオ人間写真集』では仲良しツーショットも披露していた二人。書店でその光景が生再現されることとなった。

 休憩を挟んだ全3部構成で、整理券を手に入れた約100人の読者ひとりひとりに有川さんがサインをおこなった。サインをもらった読者は続いてカツオ人間と握手。「おさわりも自由ですよ!」と促す、有川さんの茶目っ気に笑いが起こる。
 サプライズだったのは、この日のために作家自ら高知県庁に問い合わせ、新たに取り寄せた「高知県観光特使 有川 浩」の名刺。『県庁おもてなし課』に登場した、“あの”名刺だ。「本物だ!」と、感動の叫びが連発していた。

有川浩の高知案内』への感想も、読者から口々に述べられた。
 生の声を、一部ご紹介。
「高知って遠いし、広いなってイメージがあって、行くのはハードルが高いなと躊躇していたんです。でも、この本を読んで、1泊2日でも楽しめるんだって驚きました」
「高知にいる友達に、“居酒屋あおきって知ってる? お茶屋餅と焼きナスアイスは食べた?”って電話しました。“なんでそんなに詳しいの!?”と驚かれました(笑)」
「新婚旅行で、高知に行ってきました! 『県庁おもてなし課』を読んだことがきっかけです。この本を読んで、またすぐ行きたくなりました」
「来月、2泊3日で高知を旅行する予定だったんですが、この本を読んだら行きたい所がいっぱい増えてしまって。3泊4日に変更しちゃいました」
「よさこいの時期に、高知市内を観光したことはあるんです。今度は東側か西側か、この本に出てきたルートを回ってみたいと思いました」

 読者の熱い思いを受け止め、「これからも応援しています!」という言葉には、「ありがとうございます。読者さんがいるおかげで、私は書かせてもらっています」と礼を尽くす有川さん。プレゼントには、読者それぞれの故郷(千葉、茨城、埼玉……)のご当地名物を持ってくる人が多かった。自分の故郷の良さを伝えたい、そう思わせる魅力が、有川浩という作家にはあるのだろう。サイン会終了後、今日の喜びを語った言葉が印象的だった。
「私にとっては、読者のみなさんが観光特使です。みなさんのおかげで知った名物や、その土地ならではの面白さがたくさんあるんです」
 読者と会話したことで改めて、この一冊の意義に、手応えを感じたようだ。


(取材・文=吉田大助 写真=首藤幹夫)

■『有川浩の高知案内』 有川 浩/案内 ダ・ヴィンチ編集部/編
メディアファクトリー 1115円(税込)