ラノベはシリーズ累計3300万部超! TVアニメ第2期も待ち遠しい! 『薬屋のひとりごと』その世界と魅力を解説

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/5/7

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年6月号からの転載になります。

『薬屋のひとりごと』1巻書影 ヒーロー文庫
『薬屋のひとりごと』(1~15巻)
日向夏:著 しのとうこ:イラスト
イマジカインフォス:発行 主婦の友社:発売 ヒーロー文庫 638~792円(税込)

花街で薬師として暮らす猫猫は、ある日人さらいに捕まり、後宮へと売られてしまう。
下女となってしまったものの、彼女の好奇心は収まることがない。
持ち前の知識を駆使し、耳にした事件を解決へ導いていくが……?

 薬師の少女が、宮中を舞台にさまざまな難事件を解決していくライトノベル『薬屋のひとりごと』。シリーズ累計3300万部超を誇る本作のその魅力を紐解いていこう。

文=太田祥暉

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好奇心旺盛な薬師と宦官二人を翻弄する宮中の謎

 ある日人さらいに遭って後宮に売り飛ばされた少女・猫猫は、皇子の衰弱死事件の謎を解いてしまったことから美形の宦官・壬氏に目を付けられてしまう。そこからというもの、猫猫は宮中で起こるさまざまな事件の解決に手を貸すこととなり──。

 2011年に「小説家になろう」上で連載が開始され、読者からの熱い支持を受けたのち、12年に書籍化。14年からはヒーロー文庫で刊行が続いている『薬屋のひとりごと』は、猫猫と壬氏という二人の人物を中心に宮中のさまざまな謎が解き明かされるファンタジーミステリーである。テレビアニメやコミカライズでも人気を集める本作の肝となるのは、ライトノベルらしい軽快な会話劇と魅力的なキャラクターたち。そこに猫猫の圧倒的な薬学知識がブレンドされ、唯一無二の世界観が醸し出されている。

 毒を自分の身体で試すほど好奇心旺盛な猫猫と、絶世の美青年だが興味のある相手へ好意を伝える手段に乏しい壬氏。そんな二人が宮中を揺るがす大事件に巻き込まれる中で、壬氏の正体が明らかになっていく。大きなうねりが襲い掛かる中、果たして二人の関係性はどのように変化していくのか? 後宮の世界観+謎を解く爽快感+二人の関係性と、さまざまな魅力にぜひ注目してほしい。

注目ポイント

1,薬学知識を元にした謎解きエンタテインメント

 架空の世界が舞台といえども、作中で登場する「毒」や「薬」は我々が日常で見聞きしたことのあるものとなっている。例えばフグの毒であったり、媚薬効果のあるお菓子であったり……。普段普通に使っているものであっても、赤子に与えたら毒になることもある。ましてや情報インフラの乏しい宮中であるのだから、無知のまま毒を使っていることも。猫猫が持ち前の知識によって謎を解き明かしていく様子には、読者の知的好奇心も満たされること請け合いだ。

2.各妃や羅漢などの魅力的なキャラクターたち

 最も皇帝の寵愛を受けていると言われる上級妃・四夫人は、麗しい玉葉妃や、御子を亡くした梨花妃、幼くて可愛らしい里樹妃、変わり者と評される楼蘭妃とタイプがそれぞれ異なっている。また、壬氏に無理難題を吹っかけてくる軍師の羅漢をはじめ、宮中の男たちも曲者揃い。一癖も二癖もあるキャラクターたちと、猫猫や壬氏は渡り合っていく。位が異なりつつも、事件の解決をはじめ目的が同じ人物たちが織りなす会話の数々に、目を奪われること間違いない!

3.美しくも愛憎うずまく後宮の世界観

 国の中枢に近いために社会情勢に左右されながらも、閉鎖的空間である後宮。その内部で翻弄されていく人々の感情の機微も本作の魅力の一つ。後宮は皇帝と妃が子を為すための場所であるから、男子は禁制。基本的には、女子と宦官しか入ることが許されない。一見華々しくも感じられるが、そこにも色恋沙汰は点在。さらには他の人を出し抜いて、のし上がっていくためにさまざまな策を巡らせる人々も登場する。一人あっけらかんとしている猫猫を通して、後宮で暮らす人々の営みからも目が離せない。

キャラクター紹介

猫猫

猫猫
 薬と毒の知識に長けた少女。元々は花街で薬師をしていたが、後宮に売り飛ばされて下女となる。好奇心と正義感が強く、事件の噂を耳にしては興味を抱いてしまう性格の持ち主。

壬氏

壬氏
 後宮で強い権力を持つ、麗しい美貌の宦官。とある事件が起きた際に猫猫の実力に気付いたことをきっかけに、彼女を気にかけるようになっていく。少し粘着質で、目的のためには手段を選ばない。

テレビアニメ第2期放送決定!

 2023年10月~24年3月にかけてテレビアニメ第1期が日本テレビ系にて放送。アニメ『魔法使いの嫁』で知られる長沼範裕監督による丁寧な演出は、もともとのファンだけなく、幅広い層からも人気を博した。なお、25年には第2期の放送が決定。続報に期待したい。

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