海外発! 未体験のディープな官能世界に誘われる危険なシリーズがついに解禁!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

出版不況と言われる中で、活況なのがBL(ボーイズラブ)の世界。各社から次々新しいシリーズが登場する中、この度、男女の海外ロマンス小説で知られるハーレクインからも新たなシリーズが刊行されることになった。その名も「ハーレクイン・ラブシック」シリーズ。海外の危険なゲイロマンスを届ける新機軸の小説シリーズとなるという。

ところで、海外にBLなんてあるのか、という方もいるだろう。実は日本の腐女子文化の影響か、BL人気は海外でもじわじわ高まっているというのだ。たとえば、世界で最も見られているというBBCのドラマ『SHERLOCK シャーロック』には、イケメン俳優演じるホームズとワトソンのBL展開を期待するファンが大量発生し、制作サイドを困惑させたというエピソードが話題になったり、フランスやアメリカでは日本のBLコミックが売られていたりというから(ちなみにボーイズラブというのは和製英語なので、YAOIとして認知されているとのこと)、いまや腐女子感覚はワールドワイドといえそう。

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だとすれば、今回、海外発のBL作品が上陸するのも当然の流れだし、思い切ってその魅惑の世界に惑うのも悪くない。「ハーレクイン・ラブシック」シリーズ第一作『ルームメイト』は、アメリカのキャンパスの学生寮が舞台というイメージしやすい設定で、いつのまにか未体験の官能世界に誘われる危険な一冊だ。

哲学を専攻する生真面目で人見知りのアダムと、スポーツ万能で超リア充なジョシュ。お互い違う世界に住むタイプと、ルームメイトになってもほとんど口を聞いたことがなかった2人だが、ある日、アダムがジョシュのパソコンに保存されていた大量の秘密の画像を見てしまったことで関係が変化していく。そこに写っていたのは首輪をはめられ、恍惚の表情を浮かべる美しい男たちの姿…画像に引き込まれ、たまらず自慰をはじめたアダムをジョシュが偶然目撃し、「こういう画像に興味があるなら試してみないか」ともちかけるのだ。

自分はゲイであることを自覚していながら性的には未体験だったアダムが、緊張しながらもジョシュの誘いに応じることで、2人は禁断の世界にのめり込んで行く。はやる気持ちを抑え、講義やバイトから戻ってきては、2人だけの空間で貪るように相手を求め合うアダムとジョシュ。やがて、2人の間には、性的な好奇心を超えた強い心の結びつきが生まれていく。

甘美な誘惑に心惑わされる受けのアダムと、相手を思い遣るやさしさのカケラをみせながらもハードな命令をくだす攻めのジョシュ。BLのお約束を踏襲した上でくりひろげられるBDSM(ボンデージSM)の過激なプレイも醍醐味だが、強まる激しさに反比例するように、次第に芽生える恋愛感情をもてあますナイーヴな姿がいじらしい。また「ゲイとしていきる」という社会(たとえばキャンパスの仲間や家族など)に対してのカミングアウトもテーマになるところも、国内作品とは一味違う面白さといえるかも。

ちなみに、「ハーレクイン・ラブシック」シリーズでは、読者にあたかも日本のBL小説を嗜むように自然に読書を楽しんでほしいと考え、その橋渡し役として人気BL作家の協力をあおぎ、<BL超訳>を実現。そのため前述の『ルームメイト』も、原作者のラナ・マクレガーは「原案」として、著者は人気作家の雪代鞠絵がクレジットされている。今後も、秋月こお・鹿住槇・鳩村衣杏・英田サキといった日本を代表する実力派BL作家陣と葛西リカコ、相葉キョウコ、高橋ぼすこ、麻生ミツ晃、笠井あゆみ等の美麗イラストレータが続々登場予定というから楽しみだ。

なお、この「ハーレクイン・ラブシック」では、こうした海外作品に加え、日本に眠る秘蔵のBL小説の発掘も目指すという。今回、『ルームメイト』と同時刊行されるのは、1994年に出版されて以来、永く絶版になっていた山藍紫姫子の最大の問題作にして最高傑作である『蘭陵王』(座裏屋蘭丸/絵)だ。今後も同シリーズでは古今東西から選りすぐりの名著を届けるとのことで、これからのホットな展開から目が離せなくなりそうだ。

文=荒井理恵

『ルームメイト』(雪代鞠絵:著、中村明日美子:イラスト、ラナ・マクレガー:原著, 早川麻百合:訳/ ハーレクイン)