鉛筆の断面が六角形なのはナゼ? モノのカタチに秘められた意外な工夫とは

社会

公開日:2015/6/26

 かつてSF作家のアイザック・アシモフは、「人間は無用な知識が増えることで快感を覚えることができる唯一の動物である」と述べたという。確かに無駄な知識ほど、人を楽しませるものはない。そんな知識は多く知っているほど、得する機会も多いはず。どうせだったら、まとめて多くのウンチクを知りたいものだ。

 知的生活追跡班著『色鉛筆は丸いのに鉛筆はなぜ六角形?』(青春出版社)では、意外と知らない「モノの形」の秘密を解き明かしている。板チョコの溝は何のためにある?三角定規の中央の穴は必要か?…自分の身近にあるモノには、驚かされる知恵が込められている。今回はその中から特に「なるほど…」と思わされたものをいくつかご紹介したい。

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板チョコの溝は割りやすくするためではない?

 食べ物にはいろんなカタチのものがあるが、それらにはすべて理由がある。たとえば、市販の板チョコの溝。これは割りやすくするためにつけられたものではなく、製造過程でチョコレートを短時間で固めるためにあるものだ。表面をでこぼこさせると表面積が大きくなり、チョコレートは短時間で固まる。型から取り出しやすいというメリットもあり、結果的に、食べやすい大きさに折ることができる。ワッフルにも蜂の巣上の模様があるが、これも、表面積を大きくすることで、内部まで熱が伝わりやすく、美味しくするためのもの。「カタチ」を工夫することによって、食べ物をより美味しく仕上げることができ、さらに可愛らしく彩ることができるのだ。

色鉛筆は丸いのに鉛筆はなぜ六角形?

 文房具のカタチにも食べ物同様に工夫がある。たとえば、表題にもなっている通り、鉛筆の断面は六角形である一方で、色鉛筆の断面は丸くなっているが、それにももちろん理由がある。もともと鉛筆の断面は色鉛筆と同様に丸かったが、転がりにくく、持ちやすくするために六角形が採用されたのだ。元々、筆記具は、親指・人指し指・中指の3本で持つために、断面が3の倍数だと持ちやすい。断面が三角形の鉛筆も一時発売されたが、どういうわけかあまり人気が出ず、六角形のものが一般化するようになったという。一方で、色鉛筆の芯は、一般の鉛筆にくらべて柔らかくて太いという性質がある。そのために、軸を六角形にすると、軸の木の薄い部分に力がかかり、芯が折れやすくなるし、軸を太くすると、持ちにくくなる。その点、断面を丸くすれば、軸の厚さは一定なので折れにくくなるために、丸い断面の色鉛筆が一般的となっているようだ。

 他にも文房具には、いろいろな知恵が込められている。クリアファイルの下にある三角の切れ込みは、クリアファイルを開いたときに、開く力をここで受け止め、一定以上開きにくくするためのもの。この切れ込みがなかったころのクリアファイルは下の圧着部分に直接力がかかってよくはがれてしまったというのだから、三角部分の役割の重要性が分かる。

 三角定規の中央に空いた穴は三角定規を手で押さえやすくするための工夫。中央部分に穴があれば紙と定規を同時に押さえることができて、ずれにくく、三角定規をつかみやすくなる。カタチに込められたささいな工夫が文房具を使い勝手の良いものとしていたのだ。

 カタチあるものには、その背後に工夫が秘められている。そんな秘密を豆知識として知れば、モノへの愛着も何だか増してきそうな気がしてこないだろうか。

文=アサトーミナミ