ネットで人気!精神科病院の内側を描いたマンガが意外に和める

マンガ

公開日:2015/8/20

 近年日本ではうつ病、統合失調症、認知症等の精神疾患の患者数が増加しており、2011年には4大疾患(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)の患者よりも多いというデータも出ている。そんな心を病んでしまった人々が集まり生活を送る場所「精神病棟」。この言葉に興味を惹かれる方も多いのではないだろうか。

 つい先日『こころを病んで精神科病院に入院していました。』(安藤 たかゆき/KADOKAWA)というコミックエッセイが発売された。
 統合失調症と診断され精神科病院に入院した著者自身の実体験が元となっており、気になりつつも普段なかなか見る事が出来ない精神病棟の内側が描かれている。

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 元々この作品はイラスト投稿サイトのニコニコ静画で『精神病院』というタイトルで公開され反響を呼び、書籍化にあたり完全リメイクされ、ショッキングであった描写もソフトに描き直されている。その中でも印象に残るエピソードを少しだけ紹介しよう。


入院が決まり、なぜかテンションがあがる著者

 著者は元々言葉をうまく発する事ができない吃音症であった。そのせいで小学生時代からいじめを受ける事があり、自分自身に劣等感を抱く様になっていった。

 そんな彼が中学2年の時に出会ったのが、太宰治の『人間失格』。この作品に強烈に影響を受けた著者は、自ら傷を受けにいっては詩を書くというかなり”イタイ”文学少年になっていった。その後大学へ進学するが、自傷行為はエスカレート。ついには病院に搬送、精神科に入院することとなる。


迷惑だけど憎めない病室の仲間たち

 著者が入院生活を送ることとなった大部屋。そこには病名は違えど同じく精神病を患う個性的な仲間がいた。その中でも特に著者と行動を共にしていたのが、一見目つきが鋭く厳しそうだが、実は面倒見の良い笹木さん(うつ病)と、いつもにこやかな表情で自らをスパイだと語る武島さん(統合失調症)だ。

 身近にいると少し困りそうだがなかなか憎めないキャラクター達で、彼らは著者が入院生活を送る上で精神的支えになっていた様に見受けられる。そんな中、著者は笹木さんとお風呂の温度という些細な事で衝突してしまう。




 まだまだこの作品では入院生活で起こった事件を紹介してくれるのだが、精神病というシリアスなテーマながら全体の雰囲気はいたって穏やか。ミステリアスな世界をストレス少なく覗いてみるにはもってこいではないだろうか。

 ちなみに冒頭にも紹介した、この作品の元となっている『精神病院』。コミックエッセイとはかなりギャップのある描写で、同じである著者の入院生活の印象が全く違うように感じられる。そちらも合わせて読んでみる事をオススメする。

【ニコニコ静画】精神病院&こころを病んで精神科病院に入院していました。

こころを病んで精神科病院に入院していました。

こころを病んで精神科病院に入院していました。

安藤 たかゆき/KADOKAWA

吃音、幻聴、リストカット—こころを病んで病院に搬送された私は統合失調症と診断されました。最初の晩は少し泣いたけど、こころを病んだ優しい人たちが集まるここでの暮らしはとても穏やかで—。