もう嘘には振り回されたくない! “プチ悪人”のすすめ

人間関係

公開日:2015/10/27

 「嘘つきは泥棒の始まり」。幼い頃からこの言葉を聞かされてきた人は少なくないだろう。そのため多くの人は、嘘をつくことを可能な限り避けようとする。もちろん、一言で“嘘”と言っても悪い嘘だけではない。誰かを傷つけないための優しい嘘もあるだろうし、サービス精神が旺盛であるが故に話を大げさにしてしまった結果の嘘もあるだろう。しかし、誰かを傷つけたりおとしめたりしたわけではなくても、多くの人は嘘をつくことに何らかの罪悪感を抱くのではないだろうか?

 にもかかわらず、大小様々な嘘が日々横行しているのも事実。最近の有名な出来事で言えば、STAP細胞事件では、日本だけではなく世界が騙された。ゴーストライター騒動では、長年にわたり多くの人を騙し続け、感動までも与えていた。

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 そこで、そんな嘘に騙されないために“プチ悪人”になることを推奨しているのが『自分のついた嘘を真実だと思い込む人』(片田珠美/朝日新聞出版)。著者によると、まるで息を吐くように嘘をつく人が存在し、そのような人は真実と嘘の境目が曖昧になった結果、自分の嘘を真実だと思い込んでしまい、罪悪感もなく堂々と振る舞って周囲を信用させてしまうとのことだ。そして、そんな嘘を見抜き、踊らされないようにするために推奨されるのが“プチ悪人”。著者の言葉を借りれば、「だまし討ちみたいなことはできないなどときれい事を並べずに、敵矢を誘い出すことを究極の目的とした質問をする」人だ。

プチ悪人になるには?

 本書では、“何となく妙な感じ”がした時には、まず以下を実践することが勧められている。
1、まず疑う
2、質問する
3、(嘘だと思われる情報を)あなたが知っていることはしばらく黙っておく
4、以前話したことを繰り返すように頼んでみる
5、嘘をついているときと通常の言動を比較する

 こう見ると、何ら特別なことではないように思える。しかし、実際の場面を想像してみるとどうだろうか。まず、“何となく妙な感じ”。これは、嘘が発覚した場合に、後になって「そういえばあの時…」と苦々しく思い出すような点だろう。だが大抵の場合、その時にはさほど気にかけていないので、小さな違和感を見逃さない観察眼を鍛えることが必要になる。そして仮に妙な感じに気づいた場合でも、相手を信じたいという心理が働けば、いきなり相手を疑うことはないだろう。特に、あなたが疑わしいと思った相手を他の人たちが支持しているような状況では、怖気づいても無理はない。ちなみに、著者はそのような支持者を“イネイブラー”と呼び、この存在があるからこそ、嘘をつき続けることが可能になると指摘している。

 つまりプチ悪人になるための第一歩は、イネイブラーにならないこと。これを前提として、自分が嘘に気づいていないかのように質問をしたり、相手を冷静に観察したりすることが大切なのだ。そうは言っても、やり過ぎると人間関係に支障をきたしかねないので、注意は必要。嘘だと気づいても、笑って済ませることができるようなものなら、そのまま嘘をつかせてあげてもいいだろう。

 しかし、その嘘によって自分や周囲が迷惑を被る可能性がある場合には、本書にあるテクニックを試してみるのもおすすめだ。嘘をつく人の心理構造からボロを出させるための質問法、反撃に遭った際のかわし方まで、例を挙げて具体的に説明されているので、嘘に悩まされたことのある人は参考にしてみてもいいかもしれない。

文=松澤友子