集中するだけでは仕事ははかどらない! 脳を超高速で働かせる極意とは?

ビジネス

公開日:2016/10/31

『仕事がはかどる!超高速脳のつくり方』(梶本修身/宝島社)

 効率よく仕事をするためには、できるだけ集中することが大事だと思っている人が多い。しかし、実際のところ、仕事がはかどるかどうかは集中力に比例していない。それどころか、むしろ集中することがはかどらない原因になっていることさえあると、疲労研究のエキスパート・梶本修身氏は言っている。そこで、彼が効率的な脳の使い方について書いた本『仕事がはかどる!超高速脳のつくり方』(梶本修身/宝島社)を紹介する。

「はかどった」と感じるためにはスピードと正確さの両方が必要

 仕事がはかどるというとどういうイメージだろうか? 溜まっていた仕事がどんどん片付いて目の前からなくなっていくことを思い浮かべるのが一般的かもしれない。だから、スピード感は要求されるだろう。しかし、いくら目の前の仕事が一旦片付いても、中身が間違いだらけではやり直しが必須。それでは、はかどったとは言えない。つまり、ほんとに仕事がはかどったと言うためにはスピードと正確さの両方が要求される。そういった点を重視すると、集中して仕事をこなすことが必ずしもはかどる仕事の仕方とは言い切れない理由が見えてくる。集中してコツコツ1つずつ積み上げていくと時間がかかりすぎてしまうし、集中力は長くはもたないからだ。

はかどる脳はトップダウン処理がうまいく

 本著の中には、仕事を人探しにたとえて、はかどるとはどういうことかを説明している部分がある。広い体育館に集まった生徒の中から幼なじみのAくんを探すというくだりだ。1つは、前からまたは後ろから順番に1人ずつ顔を確認していくという方法、もう1つはAくんの性格から判断して、この辺にいるだろうとあたりを付けて探していく方法だ。集中して仕事をするときの処理の仕方は前者で、確実性が見込めるが時間がかかりすぎてしまうのが欠点。一方、Aくんの性格を分析してあたりを付けるという方法は一見効率がいいが、予測が外れるといつまで経ってもAくんを見つけることができないという問題点がある。そこで、効率よく探すためには、両方の探し方を適度に融合させるとよいというのだ。

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 脳の使い方にはコツコツ積み上げていくボトムアップ処理と、ワーキングメモリに引き出した情報を使いながら処理を行うトップダウン処理の2種類がある。仕事がはかどる脳を持っている人は、適度に集中しながら意識を分散させられるため、トップダウン型の処理がうまい。

情報を有効利用するために必要な記憶のタグ付け

 仕事に使える情報は、量が多いに越したことはないが、蓄積した量が多いだけでは効率よく使えない。いくら量があっても、山積みになった書類の中から必要なものを探そうとすると時間がかかってしまうのと同じだ。だから、脳の中に情報を蓄積するときも、後で取り出しやすいように記憶しておく必要がある。つまり、記憶にタグを付けて整理しておくことが重要なのだ。例えば、友だちを50人挙げようとすると、中学時代の友人、高校時代の友人などと分類しながら覚えていることがよくわかる。仕事がはかどっている人は、記憶にいくつかのタグを付けて、必要に応じて引き出せるようにしている。

脳は疲れさせなければ効率よく働く

 脳は働き者だが疲労に弱い。だから、疲れさせないように働かせることが大事だ。超高速脳のカギを握っているのは自律神経だと梶本氏はいう。自律神経はストレスによって乱れ、疲れを感じると脳も身体も動きが鈍る。脳を無理やり集中させることは脳にストレスを与えて疲れさせているのと同じため、集中しすぎるとかえって効率が落ちるというのだ。脳の疲労を防ぐためには、光や水など自然界のゆらぎを取り入れ、良質な睡眠を取ることが有効だ。脳がきちんと働ける環境を整えることが超高速脳を作り上げるためには欠かせない。

 超高速脳とは、最小限の努力で最大の結果を引き出せる脳。その脳が無理なく働ける環境を作り上げているのは、普段の睡眠などの生活習慣だった。「バリバリ働く」は「はかどる仕事」につながっていない可能性がある。つい自分に拍車をかけてしまう人は、この本を参考に、睡眠や休息、栄養の摂り方などを見直してみてはどうだろうか。

文=大石みずき