KinKi Kidsはなぜ「近畿」で関ジャニ∞は「関西」なのか?

芸能

更新日:2012/10/3

 似たような言葉をみくらべて、これ、どう違うの? と思うことってないだろうか。

 たとえば、「近畿」と「関西」って、どちらも京阪神のあたりをさす言葉として使われてるけど、もしかしてビミョーに場所が違ってたりするのか。で、KinKi Kidsが「近畿」で関ジャニ∞が「関西」なのは、もしかしてメンバーの出身地と関係があるのか、と推測してみたり……。

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 他にも、不思議に感じることはたくさんある。スーパーにいったら「国産牛」というパックと「和牛」というパックがあったけど、その違いはなんなのか。この間の友人の結婚式で前に立ってたおじさんは「神父さん」と言われていたけど、「牧師さん」とはどこが違うのか。さらには、日本のことを「にほん」といったり「にっぽん」と言ったりするけど、どういうときに使い分けるのか、「リンス」と「コンディショナー」と「トリートメント」の違いって……。

 こんな疑問に答えてくれるのが、9月21日に出版された『この言葉の「違い」説明できますか?』(日本こだわり雑学倶楽部/講談社)だ。ふだんは同じような意味に使われながら実は明らかに違う言葉を193項目にわたって紹介し、違いを解説している雑学本だが、その内容は単に言葉の意味だけでなく、成り立ちや時代背景、用法までを突っ込んで比較していて、新しい発見がたくさんある。

 たとえば、冒頭で紹介した「近畿」と「関西」。実は、大阪や神戸では「関西というのは京阪神のことで、それに奈良、滋賀、和歌山を加えたのが近畿」というふうに信じている人が少なくない。奈良や和歌山、滋賀出身者が「関西出身」というと、大阪人や京都人から「お前らは関西ちゃうやろ!」なんてツッコミを受けるし、KinKi Kidsは堂本剛が奈良出身だから「近畿」になり、関ジャニ∞のメンバーは全員、大阪、京都、兵庫(尼崎)の出身だから「関西」を使えたなんていう話もまことしやかに語られている。

 だが、この本によると、それはまったく逆らしい。「近畿」とは王や皇帝の居住区周辺を「畿内」と呼んだ古代中国の行政制度に由来し、いっぽう「関西」は、江戸時代、関東の人間が「関所の西の国」と呼び始めたもので、もともとは西日本全体を指していた。つまり、近畿よりも関西の方が範囲が広く、近畿のほうが都に近いというのだ。

 とすると、ジャニーさんはもしかしたら「近畿」の本来的な意味を分かったうえで、平城京のあった奈良出身の剛のユニットをKinKi Kidsと名付けたのだろうか。さすがジャニーさん! と思わずリスペクトしたくなるような解説だが、この本には他にも、「なるほど!」と思わず膝を打ってしまうような言葉の違いが多数掲載されている。

 やはり前半で紹介した「和牛」と「国産牛」の違いは、在来種を先祖に持つものが「和牛」で、原産国がどこであっても日本で育った牛が「国産牛」。「神父」と「牧師」は前者がカトリックで、後者がプロテスタントというキリスト教の宗派の違い……。

 しかも、本書は、こうした雑学を楽しみながら「日本語の繊細さ」も学ぶことができる。

 『美しい日本語と正しい敬語が身につく本』(日経おとなのOFF/日経BP社)、『日本人のための日本語文法入門』(原沢伊都夫/講談社)、『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(出口宗和/二見書房)など日本語に関する本がブームになり、言葉遣いのマナー本も軒並み売れている昨今。でも、言葉の外形だけではなく、言葉の中に込められた意味、ひとつひとつの「違い」を知れば、日本語の使い手としてもうひとつ上のレベルに行くことができるはずだ。さあ、本書を開いて、今日からあなたも本物の「違いがわかる男(もちろんレディも)」になろう。